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高橋課長の憂鬱  作者: 月立淳水
はじまりからおわりまで
5/20

●サンゴ

「褒められた」


「あれで?」


「そう、『わしの求めとったのはこの方向じゃ!』ってな感じで」


「ええー」


 最高に気持ち悪い海の生き物たちを社長の下に送り届けた直後の、高橋課長と佐藤主任の会話だ。


「だけど最低限つがいにしろ、らしい。お前もう一回ウツボな」


「無理っすよ、結局あのあと専用水槽発注までして持ち帰って」


「だったら最後まで面倒見てやれよ。あれ、あいつオスかな、メスかな」


「いやですよ、あんなのの性別鑑定なんて」


「あー宇宙の彼方で一人ぼっちーかわいそうー……花婿か花嫁か見つけてやれ、な」


「ってことはまだ行くんすね、地球」


「まあな、それに、もっと変なものわんさか仕入れろと。食えそうにない魚も含め、だと」


「食えない魚集めてどうするんすかね。水族館でも作るんすかね」


「水族館か、なるほど、ありえる」


 果たして、あの惑星オウミで水族館なんぞを一つ二つオープンして、社の利益にいかほどの足しになるだろうか、と思わないでもないわけだが。


「ともかく、次はあれで行こう、サンゴ」


「サンゴ? あの、海の中の木みたいな」


「あれもよく見るとキモいぞ」


「キモいのはもう勘弁ですう」


***


「サンゴって……シュコー……あんまりないもんだな」


「シュコー……あの図鑑、間違ってるんじゃないすかね」


「いろいろな姿形があると……シュコー……それだけしか書いてなかったからな」


 二人は水中会話用のマイクを介してしゃべりながら、足元を見まわす。

 図鑑に載っていた、あの真っ赤は小枝のようなものは、どうしても見つからない。


「ちょっと僕も見てみますよ……シュコー」


 佐藤主任は、自分の情報端末を開き、図鑑を呼び出す。

 確かに、真っ赤な小枝だ。

 ほかにもいろいろな形があるらしい。


 たとえば、テーブルのような形。

 その名もテーブルサンゴだ。

 海の底に上面が平らなテーブルを広げたような形のようだ。


 そう、ちょうど高橋課長が腰かけているような。


「……課長、その座ってるやつ……」


「ああ、腰かけるのにちょうどいいから……シュコー……うわ、キモ」


 高橋課長は座っていたそれが平べったいテーブルなのではなく、何か小さなぶつぶつがいっぱい寄り集まっているものだと気づき、あわてて立ち上がる。


「それサンゴっす……シュコー」


「これが? 本当に? ……そう言われれば、シュコー……そうかもしれんな」


 高橋課長も図鑑を再度開き、その隅っこの小さな写真を確認する。

 確かに、こんな形だ。


「サンゴと言っても全部違う種なんだなあ。とりあえずこいつは押さえて、……シュコー……ほか、ちゃんとしたサンゴっぽい奴も探すぞ」


「えー、それでいいじゃないっすかー……シュコー……キモさも抜群だし」


「じゃあ、一種ごとに査定ポイント一点な」


「ま、ま、ま、マジっすシュコゴブファッ」


 あわてて酸素マスクを口から吐き出す佐藤主任。


「あー、残念、危機管理にリスクありってことでマイナス十点スタートな、はい、十種見つけてプラマイゼロをめざせ!」


「ガボフォッ、ゲフォッ、ごほっ、シュコーッ、シュコーッ、シュコー……ひどいっす……」


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