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高橋課長の憂鬱  作者: 月立淳水
はじまりからおわりまで
3/20

●イワシ

 再び、漁船の上の人となった、高橋課長と佐藤主任。

 前と同じく、漁師が網を手繰る。


「……まだ聞いてなかったっすけど、あのアジ、どうなったんすか」


「さあ。磐田専務がどこかに持っていった」


「専務が!? そんな大物が動いてるとなると、やっぱり極秘プロジェクトっすねえ」


「そうだとすると面倒だな」


 高橋課長は、社長にもう一度呼び出されたときのことを思い出す。

 あの時は、思わず、ええー、と声を出しそうになった。


「何かあったんすか」


「ああ、……社長、あのアジ、食ったって。美味かったぞ、とのお褒めの言葉をいただいてきたよ」


「……わけわかんないっすね。食うなら養殖場のアジでも食ってろっての」


「でもまあ、食える魚っていうヒントをもらったわけだし、ともかく次は簡単に獲れそうなイワシにしてみたわけだ」


「さっすが課長」


 おべんちゃらを言うときに無表情になるのは佐藤主任の良い癖のようだ。心にもないお世辞を言われているのだな、と相手に気付かせるという効果があるのだから。


「上がるぞー」


 漁師の言葉とともに、網の中身が船の水槽の中にぶちまけられる。


「生きたままっつったが、まあ無理だろ、でも、陸まで運ぶだけなら手伝ってやっから」


 不吉なことをいう漁師に、高橋課長は肩をすくめた。


***


「……半分、死んでましたね」


「もうちょっと、かな」


「これから星間ジャンプですよ、あとどのくらい死にますかね」


「イワシがこんなに弱いなんて」


 高橋課長は両手で頭を抱える。


「課長、図鑑は」


「読んでない」


「あー、なるほどー」


 言いながら、佐藤主任は座席ベルトを再確認する。


「ジャンプが終わったら、貨物室に行って水槽の中、確認な。明らかに泳いでないやつがいたら全部掬い出せ」


「僕がっすか」


「そう、佐藤が」


「別に出さなくてもいいっすよね」


「お前、混雑したバスで半分死体と同乗したいか?」


「……絶対いやっす」


「だろ。行ってこい」


「課長がやってもいいんじゃないすか」


「俺は別に死体と一緒でも構わん」


「あっ、ずるい。じゃあ僕も」


「ほう」


 高橋課長はそういって情報端末を取り出し、何かを検索する。


「お前が死体大好きなら良い栄転先があるぞ。医療事業部付の葬儀子会社だ」


「ええー、いやっすよ。葬儀屋なんて課長が行けばいいじゃないすか」


「募集が管理職未満なんだよなあ」


「……ずるいっす」


「ってことで、栄転が嫌なら、イワシの死体も片付けてやれ」


「……なんか死体死体言われてたら、もうイワシを食えなくなりそうっす」


 佐藤主任は肩を落としてため息をついた。


「……無重力だから水槽開けたら水漏れ漏れになりますよ」


「そこは工夫で。うまくやれる方法考えたらボーナス査定プラスな」


「マジすか。ちょっと見てきます」


「ジャンプが終わってからって言っただろが。はい、今のでマイナスー」


「ひどいっす」


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