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4.悪寒がするんですけど

ーー支度を終えて客間に入ったわたくしは、なごやかに両親と話をしているセイド様を目にした。

あらぁ……また面倒なことになりましたわねぇ。なに懐柔されちゃってるのかしら、お父様もお母様も!


「失礼いたします、皆様。遅くなって申し訳ありません」


とりあえず、わたくしが入ってきたことにも気付いていないらしい三人に声をかける。

どれだけ盛り上がっているのかしら、皆様……


「あ、あぁミルドレッド! 遅かったではないか!」

「みーちゃん、早くこっちに来てお座りなさいな」


笑顔でこちらを見た二人は、手招きをしている。

というかお母様、年頃の娘にみーちゃん呼びはないわ。猫ではないのよ?!

けれども流石にこの場で怒るわけにもいかないので、わたくしは黙ってお母様とお父様の横にある椅子に座った。


「遅れてすみません、セイド様。はじめまして、わたくしが、ミルドレッド・レラ・ルクディリアですわ」


座る前に挨拶をするのを忘れない。


「こうやって、私的な場所でお会いするのははじめてですね。ミルドレッド嬢。私はセイド・ヨークシャー・アルクインです。夜会のシャンデリアの下で見たあなたも十分美しかったですが、陽光の下で微笑むあなたは別格ですね」


……そう言って完璧な微笑みを浮かべるセイド様に、わたくしは笑みをひきつらせた。

この国には、女性に会えばまずほめるべきという概念がある。

それがお世辞でも、本音でも、まずは男性は女性をほめる。

わたくしだって、容姿を賞賛されたりすることには慣れているーーーーはず、なのだけれど……


……こうもなにか嫌な予感がするのは、はじめてだわぁ。わたくしの五感がなにか告げているわね。


「まぁ、お上手ですコト!」


とりあえず、返事を返したわたくしは、なにか猛烈に逃げたくなった。

おかしいわね……悪寒がするわ。

セイド様は微笑んでいらっしゃるのに。


「いえいえ、本音ですよ。まるで太陽の女神のようです」


あ、耐えられないかもしれませんわぁ。


「ははは、セイド様はいつミルドレッドを見初めたのですかな? そして、今後はどのように?」


黙るわたくしに、たまりかねたお父様が助け船を出してくれた。

若干笑顔がひきつっているわよ、お父様も。

ちなみにお母様は呑気にニコニコ笑っている。お母様、強いわね。色々な意味で。


「つい先日の大舞踏会の夜です。月を見に庭園に出たところ、彼女を見まして。私の花嫁になってもらいたいと思いました。この縁談を受けていただけるならば、数ヵ月……遅くても今年中に式をと予定しています」


そこまで話が進んでいるのーーーー?!

というか、嗜虐趣味の持ち主だと噂のあるわたくしと結婚したいなんて、実は被虐趣味があるのではなくって?!

それに、あの舞踏会の夜はわたくし、鞭片手に迫ってきた勘違い男を、思いきりヒールのある靴で足蹴にしたわよ……。

えぇ、勿論気絶するまでね。

わたくしは悪くなくってよ!! 勘違いする男が悪いのっ


「…………ちょっと、わたくしめまいがしてきましたわ。セイド様には失礼ですけれど、日を改めてお話ししましょう」


……あぁ、どうすればいいのかしら?

縁談を断りたいです、なんて言えないじゃないの!!

とりあえず、失礼だが今日は引いてもらうしかない。

精神にダメージが大きすぎた。


「だ、大丈夫かい。ミルドレッド……」

「みーちゃんたら、突然の縁談に混乱しているみたいですの。セイド様には、悪いのですけれど」


「あぁ、すみません。急でしたからね。そう、焦らずに答えを出していただいて結構です。こちらに前触れもなく訪問した私の非でもありますから」


その言葉にわたくしはほっとする。

家名も財力も権力も相手が上なのだから、引いてもらえない場合は面倒くさいことこの上ない。だから、あっさりと引いてもらえて一先ず安心した。


……というかーーーー


お久しぶりの変な性癖だけはない人だと言うのに、感じたのは悪寒だとか…………とりあえず、ちょっぴり死にたくなる内容ねぇ!容姿は文句なしだというのに!!

早々に作成変更をしなければならないわね。それによってわたくしの人生が変わるのよ。

『嫌われるようにする』も、『堂々と断る』もタイミングを逃してしまったため、次のタイミングを見計らうか、作戦を変えなければならない。


悪寒の正体も突き止めなければならないし……



前途多難ですわっ!!


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