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1.ミルドレッド・レラ・ルクディリア

多少どころじゃなくマニアックで変態的(?)な内容となっていますので、ご注意下さい!

というか、変態が出てくる率が高いです。

「ミルドレッド・レラ・ルクディリア嬢」


ーーーー美しい三日月のでる、アルフ王国王宮で開かれた大舞踏会の夜。

ダンスホールから抜け出したわたくしは、同じく抜け出したのであろう男に名前を呼び止められた。

わりと綺麗な顔をしたこの男は、たしかどこぞの子爵家の跡継ぎだったはず。


「まぁ、なんですの? わたくし、月を愛でている最中なのだけれど」


舞踏会や夜会から庭園に抜け出すということは、色々な意味を持つ。特に男女でいれば様々な誤解を呼ぶ。

わたくし、そんな面倒くさいことはごめんよ。

ほら、さっさと用件を言ってくれないかしら?それによって対応がかわるのよ。

持っていた扇を口許に当てれば、妙に赤い顔の男はゆっくりと口を開いた。



「ミルドレッド嬢、いや、ミルドレッド様! 俺……わたくしめを罵り鞭打って下さい!!」


そう叫んだ男の手には、いつだしたのか漆黒の鞭が握られていた。



**********

アルフ王国に仕える由緒正しき伯爵家、それがわたくしの生家であるルクディリア伯爵家。

アルフ王国の歴史はルクディリア伯爵家の歴史と呼ばれるほどに古き家柄なのに、爵位が伯爵であるのはひとえにご先祖様が面倒くさいことが嫌いで爵位が上がるのまでもを面倒くさがっただとかイロイロ言われている。

そんなご先祖様がいると言えども、貴族であるルクディリア伯爵家の第二子であり長女に産まれたわたくしには、当然産まれたときから婚約者がいた。



……年上の、かなり変態男が。





「お嬢様、随分お疲れのようですけれど昨晩の舞踏会で、なにかありました?」

「なにかあったわ。またあの噂を勘違いした間抜けな男に鞭片手に迫られたわ……いい迷惑よ」


昨晩を思い出して溜め息をついたわたくしは、現在屋敷の自室でマッサージを侍女のミラに頼んでいた。

ちなみにあのあと、鞭片手に迫ってきた男は地に這いつくばってもらった。

あらいやだ、わたしは悪くないわ。

勘違いしたあげくにか弱い女性に沈められる、あの男がいけないのよ?

まぁ、勘違いした男はあれだけではないけれどね。

元はと言えばーーーー


「あの婚約者がいけないのよ! ド変態が」


わたくしの婚約者というのは、地位も名声も顔も揃った男だった。

けれど、完璧な人間とはいないもので性癖だけはちょっと……アレだった。

極度の…………嗜虐趣味の持ち主ーーつまり、Sの極みであり、女性を痛め付けたい最低な人間だったのだ。

ちなみにわたくしも結婚前なのに被害にあいかけた。



……撃墜したけれどね!



そう、()られる前にやってしまったのよ、わたくしったら、思わず。

だって、わたくしそこまでやわでなくってよ。

お兄様と弟のおかげで一通り護身術は身に付けたし、ドレスで見えないからといって贅肉をつけたりなんてしてないわ。

まぁ、それがあだになったのだけれどね。

ヒールの高い靴で蹴られて、止めとばかりに踏みつけられた婚約者は、なにか別の……今までとは真逆の趣味に目覚めたらしい。

わたくしの悲鳴を聞いて慌ててかけつけた両親や、お兄様と弟が見たものは、わたくしに「もっとヤってくれ!」とすがり付く男の姿だった。

ちなみにそれはわたくしが十七歳の時で、結婚前の対面の時だったかしら。

勿論、お父様が怒り狂って婚約は破談。

けれども目覚めた彼は、わたくしにところ構わずすがる始末。


そうゆう噂というものは、娯楽の少ないシーズン前の社交界にはあっという間に広がるわけで……さらに尾ひれがついた結果ーーーー今度はわたくしが嗜虐趣味の持ち主だと噂が広まってしまった。

それ以来、勘違いした被虐趣味のある酔狂な男に、妙な迫られかたをするのだ。



「お嬢様は気が少しばかりお強いだけで、他はいたって正常ですのにね。ジュール様とアズーリ様が面白半分で、お嬢様に護身術という名の正当防衛を遥かに上回る威力の技を教え込まれるからですわ」

「あら、それでもわたくしは鞭なんて持ったこともなくってよ?」

「問題はそこではありません」


人肌くらいに温められた柑橘系のオイルを塗られながら、わたくしは首をかしげた。

あぁ、ちなみにジュールはわたくしのお兄様でアズーリはわたくしの弟ですわ。

お兄様は騎士団副団長、アズーリは近衛騎士ですの。


「どうでもいいけれど、一番の問題はあの婚約者だとわたくしは思うのよ。だって、縄もって迫られたら蹴ってしまうのも踏みつけてしまうのも道理だと思うの」

「まぁ、それはそうですよね……」

「おかげでまともな縁談なんて来やしないじゃない?」

「……そうですね」

「わたくしも、恋はしたいお年頃なのだけれど」


まったく、あの噂のおかげでまともな縁談が来ない。

まっとうな男には、怖がられる始末だ。

まぁ、見た目からしてふわふわ可愛らしくていじらしい深窓の令嬢とかではなく、気の強そうで意地悪そうな感じだから仕方ない気はする。

自分で言うのもなんだけれど、お父様似の顔は悪くないのだけれどね。

波打つ自慢の金に朱を溶かしたような髪や、つり目ぎみな紫の瞳も、ぽってりとした唇も悪くはないと思う。

体だって、努力の結果出るところは出て締まるところは締まっている。


「それでもアズーリのほうが、美少女なのだけれどね」

「アズーリ様は殿方ですから、ご本人には言わないでやってくださいね?」

「あら、羨ましいくらいではなくて?」

「殿方ですから……それに、お嬢様も文句なしに美しいです! さぁ、終わりましたわ」

「あぁ、ありがとう。ミラ」


最後にドレスを着て、髪を整えてもらう。

そうすれば、完璧なレディー。


だけれど、恋も愛も結婚もたぶんまだ先ね。


そう思いつつ、わたくしはゆっくりと溜め息をついた。

だけれど、わたくしそんな趣味はもっていませんわよッ!!





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