第四話 『イケメンの息子はとても可愛かった』
私は今、とても上機嫌だ。
なんせ、今からかつての仲間に会いに行くんだから。
それもイケメン。
ま、既婚者だけどね。
ウィリスも私も。
そのウィリスに子供が生まれたとかいう知らせが来た。
私はすぐに出発の準備に取り掛かった。
子供は大好きだ。
前もって、とある本を贈っておいたのだけど、しっかりと届いたのか少し心配。
「……ふぅ」
まだ着かない。
あそこは遠い。
ま、あえて遠いところを選んだのだから、仕方の無いことだけど。
馬車の中で、外の景色を眺めることしか暇つぶしは出来ない。
それも、とても綺麗とは言えない景色。
ため息も吐きたくなるわ。
「……」
家の目の前に来たけれど。
迎えがないってどういうことよ。
仕方ないからドアをノックした。
「エリシアか?」
と、彼の声が聞こえた。
私は彼が出てくるのを待つことが出来ず、ドアを開けた。
早く子供が見たい。
何の為にここまで来たと思っているのよ。
「おぉ、エリシア!!」
すると目の前に彼がいた。
ウィリスだ。
「子供は?何処何処?」
「え?おい挨拶くらい……。一応そっちにいるけど……っておい!」
私はすぐにその方向に走った。
挨拶なんてどうでもいい。
するとしたら子供によ。
するとその部屋には、小さな赤ちゃんが寝ていた。
青い髪に赤い瞳。
私はすぐ分かった。
ウィリスの子供。
あのウィリスの目にそっくりだ。
見た途端、体が動いた。
すぐに駆け寄って赤ちゃんを抱いた。
やっぱり。
「可愛い……」
癒される。
思わず声を出してしまうほど可愛かった。
少しショックもあったけれど、この可愛さで吹っ飛んだ。
「ウィリスー?この子って名前はーー?」
「その挨拶をしようと思ったらお前が走って行ったんだろうが」
ウィリスがゆっくりと部屋に入って来た。
状況説明なんてどうでもいい。
私はそんなもの聞き逃している。
「んで、名前は?」
「ゼオだ。良い名だろう?」
親馬鹿め。
「エリシアさん?」
と、そこに美人が入って来た。
ま、まぶしい……。
ロイーズさんだ。
「ロイーズさん、お邪魔してます」
「どうも」
「おい!エリシア!せめて妻にはしっかりと挨拶しろ」
馬鹿夫め。
合わせて親馬鹿夫と呼ぼうかしら。
と、そこでプレゼントの話を思い出した。
玄関に置きっぱなしだったけど、ロイーズさんが持っていた。
白く小さな箱……そこにプレゼントを入れて置いた。
「ロイーズさん、それ」
「あぁ、これ?やっぱりあなたのプレゼント?」
「そうそう、開けてみて!」
私は自然と笑みがこぼれた。
持ってきて正解だったようだし。
ロイーズさんは、やっぱり驚いていた。
プレゼントの中身を見て。
ロイーズさんだけじゃない。
当然ウィリスも。
「どう?驚いた?」
「驚いたって、これ……」
「まぁまぁ」
魔石。
それもとても高価な。
私の誕生日プレゼント。
その魔石について、別の部屋で話をした。
さすがに赤ちゃんの前だとまずい。
抱くのを止めるのは惜しいけど……。
最後に頬を撫でて寝かした。
柔らかかった……じゃなくて。
「ウィリス。あの魔石、なんだと思う?」
「……いや、分からん」
笑みは消した。
これからは真剣な話だ。
「あの子……ゼオ君。もしかしたら、と思ってね。あの魔石を」
「で、結局なんなんだ?」
「……生産型魔石。ようは、魔力を作る魔石よ」
「それって、とても高いんじゃ」
「そうよ」
生産型魔石。
偽人族の為の魔石。
「ゼオ君からは、残念ながら魔力は感じられなかったわ。だから、ね」
あの石を近くに置いとけば、自然と人族とはいかなくても、獣族くらいの魔力を持つことは出来る。
人族のロイーズさんは、分かっていたみたいで、驚いてなかった。
知っててもどうにも出来ない。
だから言わなかった。
良い奥さんね。
「それと……」
まだもう一つ問題はある。
予想はしていたけれど。
「ゼオ君の外見のことなんだけど……」
すると二人の顔が暗くなった。
やっぱり、分かっていたのね。
これもどうにもならない。
「その問題は俺達が解決する。それは心配しなくてもいい」
「でも……」
「大丈夫ですよ、エリシアさん」
ロイーズさんが微笑む。
それで何も言えなくなった。
あの笑顔は反則だ。
二人は、最初から分かっていたんでしょう。
でも、解決策なんてあるのかしら。
あれは相当、魔力の問題よりも大変なこと。
二人だけで……。
やっぱり、協力しましょう。
勿論、二人に内緒で。
そうしましょう、そうしましょう。
財力で可能な限りやりましょう。
かつての仲間の為。
と、言うよりは、あの可愛いゼオ君の為ね。
思い出しただけで和むわ。
私は上機嫌で、次の日、帰ることが出来た。
最後にもう一回ゼオ君に触れることが出来たし。