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前世の記憶を持って  作者: 真田
第一章 転生編
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第三話 『やっぱ獣族は猫耳がなくちゃ』

俺はため息を付きたくなった。

赤ん坊なのに。


ようやく去った。

訪問者が。

昨日、俺の誕生日の日にいきなり現れた。


名前はたしか、エリシア・エドワール。

父さんの昔の仲間、とか言っていた。

そうとは思えないほど金持ちそうだったが。

服装がとても豪華だったのだ。


しかし、俺を見た途端、走ってきていきなり持ち上げやがった。

嫌ではなかったがとてもうるさかった。

それに顔をべたべたと触ってきて。

それをして良いのは両親だけだ。


ま、しかし来るなとは言わないがな。

なんせ、プレゼントをたくさんしてくれたんだから。

金持ちはこうでなくっちゃ。


エリシア。

彼女に驚いたのはその財力だけじゃない。

外見だ。


頭に猫耳が付いていたのだ。

獣族だ。

初めて見たから興奮したぜ。

ははっ。


ま、語尾に『にゃ』とかはつけてなかったが。

演技でもいいから付けて欲しいんだが……。

赤ん坊の状態でそんなことを言ったら、即呪われていると思われそうだがな。

ま、前世の記憶を持っている時点で、呪いを持っているようなもんだがな。

その場合、良い呪い、になるが。


初めての訪問者。

言い換えれば、初めての親意外のこの世界の住人だ。


エリシア……さんのおかげで、親の名前もしれた。

二歳で親の名前を知るって、どうなんだろうか。

二歳の時の記憶なんて持ってるわけないからよく分からないが。

ま、精神年齢はそれより充分高い。

だとすると遅いのだろう。


父さんが、ウィリス。

母さんが、ロイーズだ。


苗字は、というと分からない。

ま、家の中で苗字で呼ぶ奴はいないからな。

苗字はそのうち分かるだろう。


しかし、エリシアさんを見て、思ったことがある。

獣族、父さんの仲間。

父さんの外見。


もしかすると、もしかしなくても、父さんは偽人族だ。

なら母さんも。

と思ったが違う。

偽人族は魔法が使えないのだ。

なら答えは一つ、母さんは人族だ。


そうなると、疑問が残る。

人族と偽人族は、仲が悪いと本で言っていたような。

ま、世の中には必ず例外があるしな。

その例外が、たまたま俺の両親なだけだ。


そこでふと視界にそれが入った。

エリシアさんのプレゼントだ。

顔の横に置いて行ったのだが……。

なんだこの石は?


説明くらいせめてして欲しかったな。

急に現れて急に消えやがって。


赤ん坊である自分の手と、同じくらいのサイズの小さい石。

色は、黒と言いたいのだが、怪しく光っているのは何故だろう。

あれか、魔法の力が宿った石か。


俺は、勉強ばかりさせられていたせいで、そういう知識には乏しい。

とにかく、プレゼントなくらいなんだから、良い石なんだろう。

大切にしておこう。


ははっ。

これで目が覚めたら魔法が使えていた。

とかなったら最高だ。

しかし、未だに魔法を使ったところを見ていない。

本当にあるんだよな?

冗談とかだったら泣くぞ。











さてさて、結論から言おう。

魔法はあるぞ。

そしてもう一つ、体の成長が遅い。


エリシアさんの訪問から約二ヶ月が経った。

そこでようやく、ようやく『はいはい』だ。

普通の成長の半分、ってくらいじゃないのか。

十四ヶ月ではいはいだぞ。


しかしそんなことはもうどうでも良い。

魔法がこの世にあるんだから。

結局、エリシアさんの石が何なのか分かんないままだが。


はいはいで、この家を歩き回れるようになって、色々な事を知れた。

この家が小さいこと。

この家族が貧乏なこと。

両親共に、仕事をしてないこと。


……っておい。

やばくないか。

非常にやばくないか。


せめて働けよニート両親。

しかし何故生活出来るんだ?

俺が寝てる時に仕事をしてるとか?


俺はそれを調べることは出来ない。

なんせ睡魔には勝てないからな。

ははっ。


魔法はというと、日常的に母さんが使っていた。

魔法って、万能だな。

見るたびにそう思う。


色々知りたいし、学びたいのだが、本が見当たらなかった。

予想はしていたが、一冊しかないとは。

それも誕生日の時のあれだ。

これだけというのは正直寂しいしきつい。


が、金がないんだ。

我慢しよう。

本ってそんなに高かったか?

いや、考えるな。

そもそも、自分で本を買いに出かけたことがないんだから分からない。


「ゼオ、読んでやろうか?」


唯一の本を眺めてると、決まって父さんがそう言う。

決まって俺は首を振る。

そして決まって父さんは肩を落とす。

そんな様子を母さんは笑って見ている。


父さんの読み聞かせは正直怖い。

言い換えると、本を読むのが上手なのだ。


ベットには未だに石が置いてある。

俺はそれを大事に保管しているのだ。

いつか、それが役に立つと信じて。


俺は綺麗に光る石を見つめながら、眠った。

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