プロローグ 『異世界転生なんて認めない』
誤字、脱字がありましたらすいません
宜しくお願いします
落ち着こう。
とにかく落ち着こう。俺。
ここはどこだ?
何故ここにいる?
いやその前になんだあの体は?
信じられないものを見てしまった気がする。
鏡の中にいた俺は、赤ん坊だった。
体が痛い。
もうすぐと言われた。医者に。
「あなた医者でしょ!!私の息子を治してよ!」
母親が医者にずっと文句を言っていた。
そりゃそうだろ。金をたくさん払っといて手がつけられない、だ。
だがもういい。
一回諦めると何故か全てを受け止められるようになる。
今思うと随分裕福な生活を送ってきた。
欲しいものは親が買ってくれ、習い事をしたかったら大金を払ってでも優秀な家庭教師を雇ってくれていた。
それで三日坊主だった時はよく親と家庭教師が喧嘩をしていた。
俺は常にそれを見て見ぬ振りをしてきた。
俺は結局全て中途半端だった。
家庭教師がいたから学校にも行かなかった。
だから友達なんて出来たことがない。
その家庭教師だって、俺のことを嫌っていたのはすぐ分かった。
そして俺は気まぐれで教師を変える。
それが一変したのは十五歳の時だった。
頭痛が始まり、吐気に続く。
風邪を引いたような感覚にもなった。
両親はすぐに医者を呼んだ。
そしてすぐに入院が決まった。
病院での生活は辛かった。
友達はいないし、兄弟もいない。
他に誰が見舞いに来るだろうか?家庭教師?俺を嫌っていた?来るはずが無かった。
が、一人だけ来た。
僅か二週間だけ教えてくれた、若い男の先生だ。
十四歳の頃だ。
そう、彼も俺の気まぐれで辞めさせられた先生の内の一人だ。
そんな人が、何故?
俺はそう思った。
「君みたいに気まぐれで辞めさせる生徒はたくさんいるよ。でもね、直接言ったのは君だけだったよ。かえって記憶に残ってたんだよ」
先生は笑っていた。
竹内先生。
下の名前は知らないけど、たしかこれで合っていた。
「飽きた」
確かに俺は本人に向って言った。
そんな生徒にお見舞いなんて。
竹内先生、あんたどうかしてるよ。
だけど俺は心の何処かで喜んでいた。
あぁ。いやだ。
俺自信が嫌だ。
俺はたった二週間教えた人を見舞いに来るような人を、簡単に切ってしまったのか。
俺は、おれは。
「これから頑張れば良いよ」
竹内先生はそう言ってくれた。
そうだ。今からでも間に合うのではないか。
まだ俺は十五だ。
十分間に合う。頑張ろう。
ははっ。
生きることに希望が見えてきた。
さっそく今からやろう。
何を?まず勉強かな?
それから学校に行って、友達を作って……。
「!!」
そこで激痛が起こった。
今までの比じゃない。
あぁ、何でだ。何で今なんだ。
確かにいつ起きてもおかしくないと言っていた。
しかし何で……なんで今なんだ。頑張ろうと思ったのに。
いや、俺が悪かったんだ。もっと早く行動を起こしていれば。
俺は自然と目を閉じる。
このまま死ぬのか?
あぁ。諦めていたのに、何でだ。
死んでも良いと思っていたのに。
嫌だ。
死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない。
嫌だ!
なのに激痛は止まらない。
もう、無理だ。
せめて一回くらい……………………頑張りたかった。
あれ?
何で意識があるんだ?
俺は……どうなったんだ?
目を開ける。
が、よく見えない。
意識がある。生きている。
俺は……助かったのか?
なら手術でもしたんだろう。
成功……俺は自然と笑みが出た気がした。
すると周りが騒がしくなった気がした。
頑張ろう。すぐに頑張ろう。
頑張ることが出来る。
俺は初めて生きてて良かったと思った。
生きてる実感を感じたら、眠くなってきた。
麻酔でも打っていたのかもしれない。
一回……寝よう。
さて、これはどういうことだろうか。
目を覚ますと知らない人が顔を見ていた。
二人の若い男女。しかも日本人ではない。
あれだ。親が外国の医者を連れて来てくれたんだろう。
認めないぞ。俺は。
だってほら、医者らしき人は俺を見て話してるじゃないか。外国語で。
確かに私服でいるのはおかしいが、たぶん、私服がただ好きなだけだ。
髪の毛の色が、明らかにおかしい気がするが、たぶん最近の流行なんだろう。
そうだ。
そう信じよう。
俺がまるで赤ん坊のような扱いをされているのも病人だからだ。
体が上手く動かないのも手術のせいだろう。
あぁ。
だが認めなければならない。
これを見てしまっては。
若い男女がにこにこしながら見せたのは、赤ん坊が映った鏡だった。
俺が右手を動かせば、鏡の中の赤ん坊も右手を動かす。
ははっ。
随分と可愛らしい赤ちゃんがいるじゃないか。
鏡でなく、本物を見てみたいね。
でも分かる。
俺はその赤ん坊を見れない。
なんせ。
俺がその赤ん坊なんだから。
認めたくなかった。
が、認めるとしよう。
俺は、生まれ変わったようだ。
前世の記憶を持って。