告白するつもり
放課後、二人きり、まさしく絶好のチャンス。
神様もわたしを応援してくれてるってことだよね。
まぁ雰囲気はいつものバカっぽい感じだけど、そんなのはコントロール可能!
いざ!
「バカ下!」
しまった!
いつもの雰囲気だったから、ついいつもの調子で呼んじゃったよ!
お、落ち着けわたし!
平常心平常心……。
舞い降りよ普通……。
「あ?なに突然、そんな大声で……」
お前も普通に対応するなよぉ!
あー違う!
平常心平常心へいじょーしん……。
「坂下!」
「おわっ、なんなんだよ……」
「す、すすす……」
「?」
頑張れわたし。
いける。
言え。
言え!
「好き」
「は?」
「……な人がいるんだけどさ……」
……て、わたしのバカー!!
違うだろーがぁー!!
と冷や汗タラタラながらも訂正する勇気は湧いてこない。
でも……。
だってさ………。
しょーがないじゃん。
坂下の気持ちが表情で分かっちゃったんだもん。
*****
突然真剣な顔して何を言うかと思ったら……。
「好きな人がいるんだけど」
ってオイ。
なんだ、その大々的で無駄な宣言は。
相変わらず変わった奴だよなぁ。
「………で?」
「……えっと、だからぁ……」
「だから?」
「だから……、その……」
「その?」
「………察しろよ!」
「逆ギレかよ!」
なんで俺キレられてんの?
そもそも話を振ったのは新田の方じゃんか。
ワケわかんねぇ……。
「相談とか?」
「え?あ、そうそう!相談とかしたいの!」
めちゃくちゃ怪しいんだけど……。
その辺自覚ねぇんだろうなぁ……。
いろいろ表情でダダ漏れ。
*****
こうなってしまっては、もう話を突き通すしかない。
つったって、相談なんて……。
何聞けばいいの!?
「た、例えばさぁ」
「例えば?」
「例えば……。すっごい可愛くて、モロ好みの子が告白してきたとしたらさ、好きな子がいても付き合う?」
そんで何聞いちゃってるのよー!
頭の回転悪いから仕方ないとは思うけど!
もうちょっと他になかったの、わたし!
「……それ聞いて参考になんのかよ」
「……なるんじゃないの」
「投げやりだなオイ……」
こっちだってワケわかんないんだって……。
そもそもね、坂下が察しないから悪いんでしょ?
気付よ少しは!
と、自分でも理不尽だと思う怒りを坂下に向ける。
バカ下で十分だ、やっぱり。
「まぁ、付き合うかも」
「うそっ」
「だってモロ好みだし。早々モロ好みの子に告白なんかされねぇし」
爆弾だ……。
わたしを地中海にまで埋めるほどの爆弾投下だ……。
地中海がどれぐらい深いか知らないけど。
実は結構わたしの恋心って望み薄なの?
「いや、状況にもよるけどな?片想いだったら付き合うけど、両想いってわかってんだったら、当然振るだろ」
「……彼女欲しいだけじゃん」
「ばぁか、全然ちげぇよ。俺って恋愛に関しては根性ねぇし、ガツガツ頑張るのってキライだろ?だから片想い無理なんだわ。でも気持ちって簡単に変わったりしねぇから、モロ好みの子で傷を癒してもらおうって魂胆なわけだ」
「……なんかスゴいっぽいけど、結構サイテーなこと言ってない?」
「サイに手がどうした」
「最ッ低」
坂下のバカさ加減で好きの気持ちを見失いそうだ。
*****
つーかなんだこの相談。
もはや理解不能な質問だろ。
しかもなんか「打ちのめされた!」みたいな顔してるんだけど……。
「……結局お前は何が言いたいの」
「………」
「オイ」
「………」
「おーい」
「………」
はぁ……。
そんな赤だか青だかわからん顔色されてもな……。
「……察しろよ」
新田はまたぽつりと呟いた。
*****
泣きたくなった。
坂下のバカさ加減にはもちろん、告白すらできない自分の勇気のなさが情けない。
坂下の好みのタイプじゃない、たかだか女友達の一人のわたしが。
何ができるって言うんだ、今のこの状況で。
「だったらお前も察しろよな」
「はぇ?」
何をですか?
つか何がですか?
つかなんなんですか?
「俺、今フリーなわけ」
「……知ってるけど」
「かれこれ一年はフリーやってんの」
「……だから知ってる」
「でも一年前まではフリーの時はなかった。相手は変わってたりするけど」
「……だから何」
「でも今はフリー。告白されるけどフリー。罪作りな男だとはわかってるけどフリー」
「自慢とかどうでもいい」
………って終わりかよ!
それだけの情報でわたしに察しろと!?
無茶苦茶だなお前も!
一年前に何かあった、みたいな言い方だけど……。
わからん。
つうか一年前とか昔すぎてわかんないんだけど。
「全然わかんない」
「俺は片想いできない。でもフリー。つまり?」
「……つまり、」
両想いがわかってたってこと?
一年前から?
「………」
「………」
「………」
「………」
「……誰と?」
「たっぷり溜めてその反応か!期待を裏切らないというか、俺の心はズタズタというか……」
いや、だって……。
流れ的にわたしかなって思ったけど……。
全然気付かなかったし……。
「さっき、スゴい変な顔したじゃん……」
「変な顔?」
「わたしが好きって言ったらさ、こう……、ここにシワとか寄せちゃって」
人差し指で眉間を指さす。
「そりゃ変な顔もしたくなるだろ。一年越しで突然だぞ?なんでこのタイミングなんだよ。いろいろ想像してた俺の身にもなってみろ」
つまりわたしが悪いのかよ……。
いいや、違うね!
「今まで気付いてて言わなかったバカ下が悪い」
これが単なる照れ隠しだということも、坂下にはお見通しなんだろう。
お前がわたしに夢中ってこともお見通しだけどねっ!
「……す……」
「ん?」
「す………」
「うんうん」
「すき……」
「お」
「……かもしんない、でもないかもしれなくない」
「ワケわかんねぇ……」
素直に言う勇気は未だ出ないんだけど。
でも伝わってるなら、それもアリ?
この後二人は付き合ったとか付き合わなかったとか……。
てかね。
坂下気付いてたんなら自分から言えよ!ヘタレか!
てお話でした。
ほのぼのくすってしてもらえたら嬉しいです。
感想などなどお待ちしております。
読んでいただき、ありがとうございました。