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第1話 ムーチー

 彼、ムーチーの日課は毎日、日が昇る前に起き上がり顔を洗う。

 冒険者ではないので一人で村の外に出ることは許可されていないため、村の柵の内側を10周走るのだ。

 (柵の内側は1周約1㎞だ)


 「はぁ、はぁ......ノルマ完了。」


 と、呟いた......。しかし両足は生まれたての小鹿の様にプルプル震わせているため、その場で膝に手をついたまま肩で息をして動けないでいる。


 「よっ!」

 元気の良い声と共に、小さな手がムーチーの腰を叩いた。


 「うわっ!?」

 ムーチーの疲れた足では叩かれた衝撃には耐えることが出来ず、顔から地面に突っ伏したのだ。


 「また()りずに走ってるの?はぁ……”エアー”」


 その声の主はため息をついた後、風魔法でムーチーを持ち上げるげてゆっくりと座らせた。

 そして、ムーチーは顔を見た後にそっぽを向いて「クスクスッ」。

 と笑いを堪えきれていなかった。


 「もっけ、ありがとう。そして...おはよだね?」


 ムーチーはお礼を言い、こっちを向いたもっけに対して満面の笑顔で挨拶をした。

 そう、先程転けた時に付いた土も、傷もそのままに……。出来たかすり傷先程転けた


 「彼女として……、当然のことだ。」

 もっけは言葉では強がっているが、顔は真っ赤になっている。きっと恥ずかしいのだろう。

「相変わらず、可愛いな……」

 ムーチーは無意識に呟いてしまった。

 「”ウォーター”!」

 もっけは更に顔が真っ赤になり、照れ隠しでムーチーの顔へ盛大に水をかけた。

 「先に家、行くから。」


 転けた時に出来た顔の傷が傷に水が染みた。

 「これ...さすがに酷くね? いや、水も滴る良い男の完成だ!」

 ぼそぼそっと呟きながらも、もっけを追いかけるため家に向かった。

 もちろん走った後なので、フラフラの足のままで……。


◆◇◆◇◆◇


 家に着くともっけがせっせと朝ご飯を机に準備していた。

 「ムー、遅いよ。ご飯できてるからママさん起こしてきて!」


 いつも通りの光景にムーチーは頷いた。

 『もっけ、さっきのことは無かったことにするつもりだな?』

 奥の部屋へ歩きながら聞いたが返事がなかったので横目に反応を伺った。

 するとやはり恥ずかしかったのか耳まで真っ赤になっていた。

 ムーチーは『相変わらず可愛いやつ。』と思わいながらにやけてしまった。

 

 《コンッ、コンッ》、「入るよー!」

 ノックをした奥の部屋へ入っていった。

 《ガチャッ》、扉を開けて奥のベッドを見ると……。

 「あれ?マーどこだ?マーシャルー?」


 《ゴソッ、ゴソッ》

 

 「…………」

 ベッドの奥で物音がした? ムーチーは渋々ベッドに上り、奥を覗き込んでため息を付いた。

「はぁ、なんでだよ。いつもより寝相悪すぎだろ」

 部屋に入った瞬間から予感はしていたが、ベッドの奥に転げ落ちていた。

 更には呼びかけたのに起きず。地べたに大の字でうつ伏せと、あられもない格好で寝続けている。


「おきろよっ!《ぱちっ》」

 足を引っ叩いた。叩いた右足には真っ赤なもみじ(手型)できてきた。が、音沙汰が無い。

『いつもだけど痛くないのか?そしてなぜ起きない。』

 「もっけのご飯、冷めても知らないよ?」


 「……。なに~。もう少し寝かせて~。」

 更にしばらく間が空いてから、ようやく返事が返ってきた。

「別にいいけどっ、もっけがご飯できたってさ。」


 ムーチーの言葉の後には返事は無かった。また寝ねたのだと諦め、扉を閉めて椅子に座る。

 すると……《バタバタッ》、と大きな音がした。そして勢いよく扉が開き、「もっけ~~!!おはよ~~~。」


 ムーチーの母親、マーシャルが爆発した寝ぐせのまま部屋から勢いよく飛び出して来た。

「ママさん……。おはようございます。今日も元気だね!」

 ともっけに飛びついた! マーシャルの勢いに吹き飛ばされても耐えるため、もっけはとっさに「”身体強化”」とガードをした。

 『うわぁ、今日もえげつない飛びつき。』

 「マーシャル!ご飯食べるよ。」


 マーシャルはムーチーの方を向き、笑顔になって頷いた。

「今日ももっけの美味しいご飯だ!いただきますっ!」

 マーシャルが椅子に座ったのを確認してもっけは2人の向かいに座り、一緒にご飯を食べ出した。


「ん〜っ〜!今日も美味しい、最高っ!!」

 マーシャルはいつも美味しそうに食べる。もっけはその笑顔を見てご飯を食べるのが好きだ。

 そう、この3人で食べる朝ごはんが。


 永遠に続くと思っていたのだ……。

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