星降る学園と魔法の継承者①
——プロローグ——
世界のどこかで、不思議な力を持つ子ども達が選ばれる、「エーテル学園」がある。エーテル学園はギリシャにあるとされているが、ノーダム(力のない一般人)はみな口を揃えて「そんなの聞いたこともないし、見たこともない」というのだ。実在するのかもわからないエーテル学園に足を踏み入れることになる、ある日本人の女の子がいた。
星降る学園と魔法の継承者
——第一章——私が魔法使い?
彼女はいつも通り、リビングでテレビを見ながらゴロゴロしていた。彼女の母は、玄関で掃き掃除をしている。何気ない日常を過ごしていたある日、ある男がやってきた。
「神崎咲様のお宅でお間違い無いでしょうか?」
と、背が高く、眼鏡をかけた、まるで執事のような男性だ。彼は低いが聞き取りやすい声で言った。
「なぜこの男は、娘の名前を知っているんだ?」と当然ながら、母は警戒していた。それもそのはず、このご時世、訪問者はみな一度は強盗犯か?はたまた詐欺か?と顔見知りでも無い限り、疑ってしまうのだ。大概この男も、怪しまれていた。お母さんは恐る恐る
「そうですが…どちら様ですか?」
ハッとしたような表情で、彼は言った。
「私としたことが…!大変失礼致しました。私、エーテル学園学長の執事兼学生サポート課課長のアレキアと申します。この度、神崎咲様は、我がエーテル学園の入学を許可されました。」
「え?聞いたことないです。」
更にお母さんの不信感は高まっていた。
「入学許可のお手紙は、これまで何度も送っているはずですよ。」
と、アレキアは言ってきた。今までの話を聞いていた私は、思い出した。
「あー!!!お母さん!その手紙、怪しいからって捨てちゃったやつじゃやない?何度も来るから、警察にも相談したけど、そのような学校はないから調査はできないって断られたんじゃん!」
私が言っていたことを聞いたアレキアは、口がぽかーんとなってしまっていた。独り言で「捨てた…?」などと言っていて、堅そうな見た目をしているので、意外で少し笑ってしまった。
私が少し笑っていると、お母さんが突然
「あー!あれね、あれよ。うーんと…金色の印字があって、高級感のある少し古い色の封筒のことよね?」
やっお母さんは思い出したらしい。アレキアは笑みを浮かべて
「そうです!きっとそれです!破棄していないものはございませんか?」
不安そうに聞いてきた。
「ああ!ありますよ、一枚だけ、あまりにも高級な封筒だったので、取っておいたの」
と言って、そそくさと家の中を探しに行った。アレキアと突然2人きりになってしまった。気を遣ってくれたのか
「魔法に興味はございますか?」
小学生ながら、かの有名な魔法使いの男の子の話や、アニメの魔法を持たないシュークリームが大好きな少年の話を見てきたので、興味があったし、使えたらいいなと思うことは多々あった。そのことを伝えると
「なんと、それはとても良いことでございますね。咲様、あなたには魔法の才がございます。エーテル学園では咲様のような魔法が使える方がたくさんいるのです。このままここにいると、いずれご自分の才に気付かぬうちに呑み込まれてしまうかもしれません。」アレキアは突然恐ろしいことを言い始めた。脅し?それとも本当なのか?とかなり困惑していると、お母さんが戻ってきた。
「これのことかしら?」
とアレキアに封筒を見せる。
「そうです!これです!こちらの封筒を持っていれば、咲様は我エーテル学園に入学できるのです! 出発は明日です。エーテル学園では、九月に始まるのです。」
「え」
思わず声が出てしまった。アレキアという男は、なぜこんなにも私に対して厳しいことを言うのだろう、そう思ってしまった。お母さんの顔を見る。アレキアへの不信感と娘が特別だという優越感が入り混じっていた。