第三十四話 同種
「どういうこった……こいつはよ」
柴崎が唖然とした顔で、うめくように呟いた。
その横で千弦が、その怜悧な目をスーッと細めつつ、自嘲気味に呟いた。
「参ったな、これは」
千弦の諦めが入り混じった声音に逆らうように、柴崎が吠えた。
「いや、まだだ!まだ終わっちゃいねえぜ、若頭!」
柴崎はそう言うなり、踵を返して駆けだした。
俺は片眉を跳ね上げ、柴崎の背中を見た。
なんだあいつ、威勢のいいことを言っておきながら逃げるつもりか。
走る途中で柴崎が振り返って叫ぶ。
「おい!てめえらも来い!」
柴崎の怒声に従い、ヤクザたちも慌てて踵を返して柴崎を追いかける。
その先にあったのは――彼らが乗ってきた三台の車だった。
やっぱり逃げる気か。俺がそう思った途端、柴崎が黒塗りのフルサイズバンにたどり着いた。
だが柴崎は運転席のドアを通りすぎ、バックドアにたどり着くなり勢いよく上に向かって開けた。
柴崎は、何やらガチャガチャと大きな音を立てながら、車のハッチバックから何かを取り出そうとしているようだ。
ヤクザたちも柴崎に追いつき、もう一台のフルサイズバンのバックドアを開け、やはり中から何かを取り出し始めた。
なるほどね。そういうことか。
俺がおおよその察しをつけたところで、柴崎がバンの後ろから悠然と姿を現した。
その手には、かなり物騒な代物が握られていた。
自動小銃ってところか。
他のヤクザたちも、それぞれ自動小銃を抱えて出てくる。
こいつはさすがに厄介だな。
と、突然背後から声がした。
「あれはなんだ?」
俺はびっくりして飛び上がりかけたが何とか耐えると、その声の主に向かって怒りを込めて言った。
「おいソルス、いきなり耳元で話しかけんじゃねえよ。びっくりするだろうが」
だがソルスは俺の抗議など意に介さず、さらに興味津々に問いかけてくる。
「それよりもあれはなんだ。さっきの拳銃とやらは中々に見ものだったが、察するにあれはそれ以上のものか?」
こいつ、俺の話を聞いちゃいねえ。
俺は大きく息を吸い込むことで沸き上がる怒りを必死で抑え込み、答えた。
「自動小銃だ。お前の想像通り、あれは拳銃の上位クラスだ。それも相当にな」
「ほうほう、それはまた楽しみだな」
「それはいいが、来栖はどうした」
「俺が身軽になるために、気絶させて小屋の中に放り込んでおいた」
この野郎、勝手な真似を。
だがまあいいか。自動小銃はさすがに厄介だ。なら一人より、二人の方がいい。
「おい、あれはさっきの拳銃のように単発じゃない。連続で撃ってくる。それも滅茶苦茶連射が出来る」
ソルスが爛々と目を輝かせた。
「それは凄いな」
「しかも一発一発が、銃より速い」
「連続で撃てる上に、速いのか。興味深いにもほどがある」
「言っている場合か。お前、避けられる自信はあるか?」
「どれくらい速いのだ?」
俺は以前に見た映画を思い出しながら答えた。
「たぶんだが、倍くらいだ」
ソルスの目が、さらに爛々と輝いた。
「となるとSクラスの攻撃魔法並みってことか」
「たぶんな」
「それが滅茶苦茶連続で放たれるのか。それは痺れるな」
こいつも俺と同種だ。この手の刺激が好きなんだ。ギリギリの命のやり取り。そんなものが大好物だという、実にどうしょうもない生き物なんだ。




