第三十二話 本職
すかさず他のヤクザたちが呼応する。
「おうっ!」
と同時に全員が全速力で距離を縮めて、俺に殺到した。
「いいねえ。嫌いじゃないぜ!」
俺はそう言うなり、低い体勢で迫り来るヤクザたちよりもさらに腰を落とし、すかさず前方に突進した。
あっという間に彼我の距離が零となり、俺の額が正面のヤクザの鼻っ面にめり込んだ。
同時に左右の拳で両隣のヤクザをぶん殴って吹き飛ばす。
一気に三人を片付けた俺は、すぐさま右に旋回。
次から次へと拳を繰り出し、片っ端から殴り倒していく。
その間、わずか五秒。
もはや立っている者はなく、全員が地面に倒れ伏していた。
「ま、こんなもんか」
結局はチンピラたちと、そう大して変わらなかったな。少し拍子抜けだ。
いや、仕方がないか。所詮はこいつらも人間だからな。素手で俺と勝負になるはずがない。
と、少し離れたところから戦況を見守っていた柴崎が、鬼の形相で俺を睨みつけていた。
「くっ!こんの野郎……」
柴崎は相当腹を立てているようで、歯をむき出しにしている。
「若頭、殺さなけりゃいいんですよね?」
柴崎は、横の千弦にそう問いかけた。
千弦は目をスーッと細めたかと思うと、深い溜息を吐いた。
「仕方ねえな」
千弦の答えを聞いた柴崎は、倒れ伏すヤクザたちに向かいさらなる怒声で命じた。
「おいっ!てめえら!いつまで寝てんだあっ!とっとと起きろっ!」
柴崎の怒号に、地面に倒れ伏すヤクザたちが反応した。彼らは苦しそうな表情ではあるものの、徐々に身体を起こし始めた。
ほう、やるじゃん。意識が飛んでいないだけ、チンピラたちよりはだいぶマシだな。伊達に本職じゃないか。
俺がちょっと感心していると、ヤクザたちはふらふらと身体を揺らしながらも、少しずつ立ち上がりだした。
「えらいえらい。よく立ったな」
俺は本心からそう思い、ヤクザたちを褒めてやった。
だがそれが癇に障ったらしい。ヤクザたちの顔つきが変わった。
苦しそうではあるものの、それぞれ怒りの形相でしっかりと立ち上がった。
それを見た柴崎が、さらなる怒号を張り上げる。
「お前ら、構わねえから拳銃を使え!殺さねえ程度に大人しくさせるんだ!わかったな!」
ヤクザたちは一斉に待ってましたとばかりに呼応した。
「おうっ!」
と同時に皆が皆、懐に手を入れた。
そして脇にぶら下げたホルスターから拳銃を抜き取り、俺に向かって一斉に構えた。




