表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

オルゴール親父の馬鹿野郎!!

 小林奏介(そうすけ)が八才の頃。それは突然起きた。

『ミュージシャンになる!』

 父・弦蔵(げんぞう)はそうメモに書き残し、蒸発した。

 それまでの父は、奏介にアコギを片手に歌を聴かせてくれた。粗削りだが心を掻き立てる。そんな父の歌が好きだった。

 それがまさかの裏切り。

 母は働き女手一つで家計を支えるも、奏介が十五才の時に身体を壊し入院した。

 奏介は家族を捨てた身勝手な父を深く恨んだ。


 ――それから奏介はなんとか高校に進学した。

「奏ちゃんお疲れ、今日も客が沸いてたわね! これは世界狙えるわよ!」

 軽音部の二年生の先輩、後藤遥の熱心なスカウトにより、奏介は入部を決意した。そして遥がボーカルを務めるバンドのギタリストとして、放課後はライブハウスの舞台に立つようになった。

「そんな(こころざし)はないっすよ。もっぱら趣味なんで」

 部活の事は母には秘密にしていた。『息子まで父のように育ってしまったら』と、不安にさせかねないからだ。そのせいか奏介はどこか、音楽に熱くなれないでいた。


 ライブ後、奏介は遥を含む先輩達と、贔屓にしている古道具屋にやってきた。家計に極力負担をかけないために、通う習慣ができた。ギターや必要な機材も中古で揃えたくらいだ。

「奏ちゃんこれ見て! かわいくない?」

 遥が手にしたのは、スパンコールと合皮で装飾された箱だった。

「ああこれ、底にゼンマイがある。オルゴールっすね」

「そうなんだ。ちょっと鳴らしてみよっと」

 遥は店員の許可も取らず、カリカリとゼンマイを回し、オルゴールは動き出した。

「……っ!」

「奏ちゃん、どうしたの?」

 奏介は肩をビクッと揺らした。

 信じられなかった。オルゴールが奏でるそのメロディーは、幼い頃から幾度となく聴いた、父のオリジナルの曲だったのだ。

 遥の手からオルゴールをぶんどり、様々な角度からみると、……アルファベットの「G.K」と書かれていた。

「まさか、|弦蔵の『G』と|小林の『K』か?」

 そのオルゴールに父が関わっている可能性があると感じた奏介は、オルゴールを買い取り、出どころを探るために奔走する。

「親父にあったら、思いっ切りぶん殴ってやるんだ!!」

 父に会いたい気持ちは、憎しみゆえか? それとも――。

 家族の繋がりとオルゴールの音色が交差する、壮大なミステリー。


2025年初の更新です

第6回なろうラジオ大賞、応援ありがとうございました

3月に行われるであろう結果発表をゆっくり待つとします

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ