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「女性だけの町」の外側から  作者: ウィザード・T
第七回 それでもボクはやるしかない
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第二の女性だけの町へと

「まさかそんな事をするなんて」


 そのすっとぼけた物言い、と言うか本人でさえも予想外だったと言わんばかりの口調に彼の母親は腹を立てたが、彼女の本気さにすぐ気づいて口をつぐんだ。


 まさかそのせいで離婚したんですかと言う問いに

「そうです。今でもあんな物が世の中に氾濫していると思うともうどうにもやりきれなくて。

 でも世の中にはああいう、本当にまっすぐに子どもたちの事を考えてくれている人がいるんですね、私は少しだけ希望を持てましたよ」

 と心底からの笑顔をぶつけられた物だから何も返す言葉がなく、ただ次の相手のそれを待つ事しかできなかったと言う。




「水を向けるつもりでぶしつけですが谷川さんの名前も出したんですけど、どうもあなたの事もお気に召さなかったらしく、その……」

「どうだったんです」

「結局はその…女性だけの町を食い物にしているだけだと…」

「アハハハハ……」

 彼女にも随分と嫌われたものだ。実際私など、「女性だけの町」のヒットがなければただの三文ライターとして消えていただけの女だからそれほど間違ってもいないから私としては笑う事しかできなかった。ある意味、女性だけの町のおかげで一番潤ったのは私かもしれない。

 実際問題、女性だけの町に移って以前よりも金銭的に潤ったと言う人間は第二次大戦の従事者と言う事で言えば四分の一以下とも言われており、その内訳も多くが元専業主婦やパートタイマーと言った平たく言えば無収入かそれに近い存在の人間ばかりである。ゼロに近い存在が人並みの給与を得られるとなればそれは上がったと言える話であり、多くが自分たちに取っての楽園を作るためと言う名のためにあらゆる意味で過酷な戦いに身を投じたのである。その結果第二次産業至上主義のような町になってしまったのは、多分誰の責任でもない。


 そして今でも、その「女性だけの町」に適応できない女性は増えている。「女性だけの町」を求めながら「女性だけの町」に適応できない女性たち、そんな存在を受け止めるはずであったかもしれないJF党がテロ組織になってしまった事からしてますます立場を失ってしまった彼女たち。

 そんな彼女たちのために、「第二の女性だけの町」が出来るのは必定の流れであったかもしれない。


「私は、女性だけの町にもう一つあるって知らなかったんです。私ももう年でしたからなかなか新しい事が頭に入って来なくて、それこそちょっと前に実質的に名前が変わって」

「確かに。私なんかは通称として「第二の女性だけの町」と呼んでますけど、元々は過疎にあえいでいた自治体を事実上買い上げたような存在ですから一応住所としてはまだ「女性だけの町」じゃないんですよね」


 第一の女性だけの町の住所は「女性だけの町」であり、そこに東西南北中央区と各地域の番地などが存在する。一応元々は別の自治体の土地ではあったがほとんど手の付けられていない居住放棄地であったために所有者が安く手放し、その上で町を作ったのだ。なおこれにより元の自治体も第一の女性だけの町の玄関的な場所として繁栄していると言う話もあり、まさにwin-winだとも言われている。

 一方で第二の女性だけの町は既存の自治体が女性を誘致してそうなるように任せた事もあり、一つの自治体の中身が入れ替わったに過ぎない。そのおかげで地元住民の反対や転出問題などはあったもののかなり早くできたのも事実であり、正直な話優劣とかはなくただ「やり方が違う」と言うだけの事だ。


「でも第一の女性だけの町に合わないって言うのはどういう女性なんでしょうか」

「もっとも遠慮のない事を言えば、そこをユートピアだと考えている人ですね」

「ユートピアと言いますと」

「そこにさえ着けば何もかも終わり、後は一生楽が出来ると思っているような女性は合わないと言う事です。世間的には第二次産業が強いと言われてますけど、実際第三次産業従事者でも幸せな人は幸せですし第二次産業従事者でも不幸な人は不幸です」

 身も蓋もないが、住めば都である。

 どこであっても自分にとってユートピアであればユートピアであり、住みにくいと思えば住みにくい。あまりにも単純な真理だ。その結果出来上がった環境を、受け入れるか変えて行くしか人類に限らず生物が生きる道はない。

 女性だけの町に来た所で、そこは女性絶対主義の世の中ではなく女性しかいない世の中でしかない。その事がわからなければ、結局幸福になどなれない。

 

 ただ同じ女性だけの町でも、第二の女性だけの町なら—————そういう希望を抱く女性は多いし、実際そっちのが適応できる女性も多い。彼女もまた、そちらで悠々と過ごしているようで何よりであると…でも言うべきか。

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