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「女性だけの町」の外側から  作者: ウィザード・T
第七回 それでもボクはやるしかない
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運命を狂わせたもの

「△月4日(金曜日)

 石ころ

 …あのヤブ医者!

 いずこのどこかさん

 懐が広いんじゃなくて、ただただ無神経なだけだったとは…女医と言っても所詮はそういう事なんでしょうね」


 彼女のX内での投稿は、さらに荒れていた。




 目はやけに怪しく輝き頬はこけ白髪も増え、しわは増えていないが年齢からすれば不自然なほど艶っぽくなっている。


 —————ほんの三ヶ月ほどの間に、私の知り合いの彼女はそこまで変容していた。


 直に会った訳ではないが最後に顔を合わせた彼女の旦那さん曰く、半年で彼女は十歳は老けてしまったと言う。確かにそこまで影響があるのならば彼女の言葉も間違いではないのかもしれないが、だとしても彼女の変化は異常であり何か別のきっかけでこうなってしまうかもしれないと思わせるにはあまりにも些細であり、かつ急激なそれだった。

「私も皆さんに付き合って心をほぐした方がいいと言ったんですが、それでも常にキョロキョロとして落ち着かなくて、私がプレゼントした一泊二日の旅行の間に十回も彼女の母、ああ息子を預けていた人間に電話をかけるような状態で……」

 

 それでは全く、休ませ甲斐がない。折りしも土曜日であったせいか呼吸が荒く、いい加減にしなさいと実父母から言われても就寝時間を除いて二時間も我慢できれば上等と言う状態であり、疲れが取れるどころか余計に疲れた顔をして帰って来た時には親からも叱責を受け、親に向かって泣きわめきすがり付いたと言う。それでたっぷりそのアニメについての愚痴をこぼした彼女であったが恐怖心が消える事はなく二週間もするとバイト先で吐いてしまい、夫婦と言うか母親を続けることはもはや不可能になってしまったと言う。


「それを近所の同級生の人たちに話すと皆さん、本当に悲しそうな顔で…いや、何と言うか情けなさそうな顔で…」

「私も一応取材に当たってそれなりの事は言ったつもりだったんですが……」

「谷川さんについては好感を持っていたようですけどね、今度お酒でも飲んで語り合いたいって。本当、もし一日に缶ビール六本を空にするような状態でなければ連絡を取りたかったんですが」

「嘔吐したのって…………」

「いや、酒量が増えたのはその後です。最初は気弱な自分から逃れるためにと言う事でお酒で元気を付けようとしていたのですがすぐに同級生の子からお酒臭いと指摘されてしまい、その子のお母さんからも言われたんです、アルコールに頼らなければアニメも見せられないのかって。

 それでそうですよって言って思いっきりわめいて泣いてしまって、それでもうとても妻には堪えられないと言う事になり…ああ、今でも妻の事は愛していますからまだ籍は抜いておりませんが」



 実はこんな話は、女性だけの町が出来る前から結構存在していた。多くは女性だけの町へと移住した女性の住民たちがその手の現在から見ればおとなしいはずの演出に耐えられずに内外問わずに吠え出したのが第一次大戦の始まりとも言われ、事件後もトーンダウンこそすれど同じ調子で吠える女性たちはそれなりの数がいた。女性だけの町が出来上がり第二次大戦が始まった頃になるとその手の女性は減っていたが、また最近になって増えているらしい。

 なぜあそこまでやるのか、やらなければ死ぬのかと言う意見についてはええそうですけどとか言う開き直った答えが返って来る以上、女性たちと言うか親たちは向き合うしかない。その事を女性だけの町の負の側面であるとも言うが、実際彼女たち現第一の女性だけの町の住民及び現在第二の女性だけの町を求めている存在に対して同様の懸念があった事は既に周知の事実だった。嫌なら見るなとは暴論かもしれないが、その暴論かもしれない論を通してしまった責任は誰にあるのか—————そんな水掛け論に何の意味もないが、彼女もまた女性だけの町がなければ運命を狂わされる事はなかったかもしれないのだ。

 




 なお、Xのアカウント保持者に連絡を取りどうして彼女をフォローしていたかと聞くと、「面白かったんで」とか言う単純明快にしてもっとも残酷かもしれない回答が帰って来た。


「オリジナル通りならあと三年は……」


 で、それに覆いかぶさる無邪気な現実。実際その前のリメイク作も二年続いた以上、まだ半年も経っていないその作品が消えるのはまだまだ後であり、力なき庶民たちはテレビキョクサマ、と言うかゲンサクシャサマに逆らう事は出来ないのだ。実際、その作品が終わったのはそれから四年後、オリジナル版とほぼ同じ期間である。

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