表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「女性だけの町」の外側から  作者: ウィザード・T
第七回 それでもボクはやるしかない
57/96

原作者至上主義

「原作でやってるから何をやってもいいのかね!」

「昔はよかったからってさ……」


 過激化するアニメその他での演出の責任を原作のそれに求める声は、減るどころか増えっぱなしである。

 子どもたちの関心と言うか歓心は増えまくっているが、親たちの不安も増えまくっている…らしい。

 

 テレビ局も出版社も、最近無責任化が進行していると言われている。自分たちの責任ではなく取り上げられるような存在を作った奴に責任があるのだと言わんばかりに抗議を跳ね除け、その挙句に第一次大戦を敗戦に導いた事件の事を引き合いに出す。

 たった一件の事件がもたらした被害総額、と言うかもたらすはずであった被害総額を突き付けられて黙りこくり、手も口も塞がれてしまう。言論弾圧とか言うには子どもたちへの影響力は下がらず、むしろ往時に比べ上がっている。これによりテレビ局は息を吹き返し、インターネットに負けじと再びエンターテインメント界の中心と言うか情報発信元の中心に復帰しようとしていたとか言うデータまである(統計によれば、底であった時代から見て現在の収入は5割増しとなり、ピーク時から見ればまだ小規模とは言え広告費も増大しているらしい)。もちろん悪あがきだの薬物に手を出した延命措置に過ぎないとか言う意見も存在するが、それでも成果が上がっている以上営利企業としては間違ったやり方でもない。

 また出版社でも同じ事が起こり、読者第一で演出は過激化する。もちろんしない作品もあったがそれがいい形に住み分けとなり、雑誌の売り上げも上昇した。


「最近のアニメとかってさ、何て言うかお仕着せ感が凄くない?」

「ああ本当、原作とほとんど変わらないって言うか原作を一言一句違えずになぞってるだけって言うか。これ声と動く映像がなければ意味ないんじゃ」

「かもね……で、その責任にふさわしいギャラの配分が為されてるって言うのは」

「本当だよ。かつて原作者のギャラは数%とか言われてたけど、現在じゃ30%とか言う契約も珍しくないよ。新人だと半分って事すらあるらしくて」


 そして、これらの栄光も責任も、みんな全て原作者に押し付けた。

 もちろんそれらの作品を見出したテレビ局のディレクターや編集者たちもいたが、彼らは栄光を楽しまぬ代わりに矢面にも立たず、原作者を盾にした。栄光も手に入るが批判も受けやすくなった世界で、それらの過激な演出をした人間たちは執拗に叩かれるようになった。だがその過剰なバッシングが何をもたらしたか忘れさせまいと、テレビ局はしょっちゅう第一次大戦を終わらせた事件をやる。そのいたちごっこになっていた。


 さらに言えば、旧作至上主義と言うのもある。

 まあ懐古趣味ではなく原作者が認めたのだからOKだと言う原作者至上主義の言い換えでしかないが、それもまた厄介なお話だった。それこそデザインだけ変えたようなお話が量産されもしたが、それでも下手な番組よりウケてしまったから問題だった。




 ではなぜこうなったか。

 その原因は女性だけの町にあると言う論旨は極めて多いが、個人的には全面的賛同は出来ない。無論、女性だけの町を作った存在がそういう演出に激しく抵抗し拒否反応を示したからと言うのは事実ではあるが、それ以上に問題となったのはその少し前の事件である。

「でもさ、原作に下手に手を加えるとねえ」

「ああ、バランスって難しいよね」

 かつて、人気漫画をドラマ化するに当たって原作をほぼ無断で改変したと言う問題があった。その事に対し作者は異議を申し立てたがテレビ局は耳を貸さず、その結果作者は投身自殺。テレビ局はドラマを引っ込めざるを得なくなり出版社も含め誰も得をしない結果となってしまった。

 それからも問題はややうやむや気味であったが、かの事件の後さらに人が離れてしまったテレビ局があわてて視聴者迎合と言うべき形になったのをきっかけにこの問題も浮かび上がり、それからはもうご承知の通りである。

 オリジナルの脚本を作れよとか言うのはごもっともだが、それをやって当たったためしがどれだけあるかと言う話でもある。原作者に寄りかかれる作品はある意味で気楽であり、ローリターンではあるがローリスクだった。そうして時間を稼いでおいてオリジナルの作品を育てると言う流れはある意味理想であり、テレビ局復活の流れのはずだった。だが残念ながらその上でやったはずの連続ドラマは空振りに終わり、原作者>テレビ局の構図が余計固まったと嘲笑を買う事となってしまった。

 

 だが実際問題、原作者の干渉しないいわゆるアニオリエピソードが好評であったと言う話は少なくなく、またそのオリジナルが原作にも好影響を与えた話は少なくない。誰だって一人でできる事はたかが知れているし、第三者の視点はどうしても必要になって来る。それらの道すらも原作者の了解なしでは動けない現状は、やはりそれほど楽観的な物でもないと言えるだろう。




 そして、その流れで浮かんで来たのがくだんの作品だったのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ