ゼロ円建築!?
—————結局、第一の女性だけの町のコピペみたいにするしかないんじゃないのか。
電波塔や産婦人科医のシステムを購入した事もあり、そういう流れで物事は進むはずだった。と言うか、第一の女性だけの町の住民を含む多くの人間がその方向で行く事を勧めていた。
だがそれは、それこそ一からまた建物を作り道路を整備する事をも指していた。無論第一の女性だけの町の住民たちは積極的に協力を申し出るも、「第二の女性だけの町」を目指していた人間たちの反応は悪かった。
曰く、老朽化した建造物や道路を修繕すれば十分使える。わざわざ一から作り直す必要などない、と。
だがこの時、利権問題が関わっていたと言う週刊誌の記事を筆者は目にした事がある。
「草刈り場と化した第二の女性だけの町」
と言う煽情的なタイトルと共に、第一の女性だけの町の中心人物や外の世界の数多の建築会社などが第二の女性だけの町の住民を取り囲んでいる構図が書かれていた。
第一の女性だけの町では職場と言う名の利権を掴み損ねた数多の業者が、ここぞとばかりに第二の女性だけの町に向けて売り込みをかけていた。
「歴史は繰り返すと言う。
かつての「第一次大戦」の敗者が「第二次大戦」を起こし勝利したのが女性だけの町であるが、もしその「第二次大戦」の敗者と言う存在をあえて決めるとすればこの絶好の機会を逃した外の世界のゼネコンであっただろう。
その「第二次大戦」の敗者が、此度その第二次大戦の失地挽回を狙っているとすればこれはある意味で負の連鎖とでも言うべきそれであり、戦争が永遠に終わらない根源と言えるかもしれない。」
随分と御大層な最後のフレーズのせいでやや軽くなってしまったきらいはあるが、実際問題「第二次大戦」においていわゆるゼネコンが見込み外れの結果に終わったのは間違いないだろう。善意であったか利権であったかはともかく、オトコたちは第一の女性だけの町の建築を指をくわえて見ている事しかできなかったし許されなかった。金での取引と言う性別に関係なくできるそれしか行われず、この空前の大取引を逃してしまう格好になった。中にはその建築費用を当て込んで赤字に転落して数百人単位の首切りをせねばならなくなってしまった会社もあり、社長が引責辞任する羽目にもなっていた。もちろんそれは女性だけの町の罪ではなく、経営判断を誤った社長の責任であるのだが。
それだけにこの時、ゼネコンたちはかなり躍起になって売り込みをかけていた。ゼロから建築するのと修繕するのでは手間が違うとは言え、それでも極めて大規模なそれである事に変わりはない。
そしてこの場合言うまでもなく選ぶ側に優先権があり、第二の女性だけの町の住民はかなり条件を吹っ掛けていたとも言う。
曰く、第一の女性だけの町と同じ規模にするために必要な施設を作れ。
予定人口は二十万人であるからその分の建物が必要である、と。
第一の女性だけの町の人口が二十万になったのはいわゆる第二次大戦が終わった十五年後の話(要するに第三次大戦の終結後)であり、第二次大戦終結時の人口は十二万人であった。平たく言えばその分の建築物などもその間に作られたわけであり、言うまでもなくまったく第一の女性だけの町の住民たちによる成果だった(資材や道具その他を外の世界の会社から購入してはいたが)。
実際、この時第二の女性だけの町に入植を希望していた女性の数は二十万どころか十二万すらおらず、およそ八万人であったとも言われている。なおこの後移住者の増加により現在では十八万人になっているが、八万人のために二十万人分の施設を作るのは無駄なハコモノ行政でしかない。元々ピーク時の人口が十五万人程度であった行政区に二十万人が住むなど、土台無理な相談だ。
それでも彼女たちは自分たちの立場の強さを盾に、建築価格をギリギリまで引き下げようとしていた。何ならゼロ円でやるのが正義だとか言う強硬派までいたらしく、上層部でさえも彼女たちをなだめるのに苦労していたとか言う話を聞かされた事もあった。
もちろん落としどころと言うのがあるからゼロ円とか言う無茶苦茶な事にはならなかったが、それでも仕事を得るために飛びついた業者と仕事をくれてやっている女性だけの町の住民候補たちによる駆け引きは難航し、その間にも誰も住まない建築物の崩壊は進んだ。この工事を結果的に請け負った業者ももしあと数か月早ければ費用は少なくて済んだのにとか言うため息を吐いていたらしい。




