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「女性だけの町」の外側から  作者: ウィザード・T
第六回 「第二の女性だけの町」
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「第二の女性だけの町」

 女性だけの町で「産まれて」、死んだ人間はまだ千人に満たない。

 言うまでもなく女性だけの町で産まれた人間がまだ少ないからだが、それでもいずれは女性だけの町産まれの存在が町の中核になって行くだろうし、町は否応なく変質していくだろう。


 そしてその人類にとって前人未到の地を行く彼女たちの戦いは、現在の所成功であると言える。この世界で最も自立した、自律的な女性たちの活動は男性たちにも檄を飛ばし、お互いを高め合う。人類の進歩が宇宙ではなくアニメだった、しかも正直負の意味でとはと苦笑いする意見も多かったがそれでも結果さえよければと言うのも事実である。

 ただ女性だけの町の中の二大政党の一つ・女性党がいくら町域拡大を訴えた所で、選挙と言う最も大事な意思決定手段において勝てない。当初はまだ不安定な町内情勢を守るために、今は第三次大戦の影響をぬぐうために民権党と言う町内の安定を旨とした保守政党がJF党登場時を除きほとんど第一党として君臨し、町の拡大は後回しにされてしまっている。それほどまでに女性だけの町を作り上げた先人たちの功績は大きく、それと戦わされる後世の存在は大変なのだ。


 そのせいでもないが、女性だけの町が完成してから四半世紀以上経った時でさえも第二号の存在は出て来なかった。

「いや、実は既存自治体の中にも誘致を望むそれは多かったんです。いわゆる過疎地域とか。ですが初代町長以下創始者たちはその中でも空白地とでも言うべき地を購入しそこを全く自分たちのそれによって染め上げて行こうとしたのです」

 元々女性だけの町があった地も過疎地域であったがその中でもひときわ環境の良かった場所数か所を現金購入と言う「女でもできるやり方」で手に入れ、その上でほぼゼロから開発を続け現在では購入時の建物の1%も残っていないほど別物のそれになった(と言うか建物の数自体が購入時の数百倍になっているのだが)。

 そうやって出来上がった町が巨大な電波塔とその電波塔を囲むようにできた四本の電波塔以外さほど一般的なそれと変わらない事はツッコミを受けたが、むしろそれゆえに創始者たちの執念が伝わっているとも言われている。

 自分たちは普通の町で暮らしたいだけ、自分たちを脅かすそれのない町で。




 だが今から数年前、時代は動き出した。

 過疎自治体に続くように、大企業が動き出したのだ。


 その企業は他ならぬ、「第一の女性だけの町」が出来る際に最もたくさんの資材を提供した建築業界の頂点と言うべきそれであり、現在も女性だけの町との取引でかなりの収益を挙げている。


Q:第二の「女性だけの町」は必要だと思いますか

A:(%)すぐに必要なので今からでも場所を選定すべき 12.7

いずれ必要になるので考えてはおくべき 25.7

いつかは必要になるだろうが、かなり後なので今は気にしなくていい 35.2

もう必要はない 13.0

わからない・無回答 13.4


 その頃のアンケートだが、少なくとも7割以上が女性だけの町が一つでは不足すると考えていた事は確かだった。現在女性だけの町の人口はおよそ二十万人だが、あと五万人程度が限界とか言う指摘もありここ数年人口増加が止まっているのが幸運であるとさえ言われている。需要がある以上そろそろ次を考えなければいけないはずだが、その女性だけの町を作るのに一体何年かかるのか。

 第二次大戦はおよそ十五年に及んだとされているが、あの規模の作業を一流の建築会社がやったとしてもそれこそ十年はかかる作業であり十五年で済んだのはある種の奇跡であったとさえ言われている。無論入植者が全力で戦った上に移民たちも必死に働き本来の数倍の動員力を注ぎ込んだからだが、そこまでやっても十五年かかるのだ。今の、およそ半分の人口を住まわせる町を作るのに。


 だがそれはほぼまるっきりの空白地帯に作ったからであり既存の建造物や道路を再利用すればとか言う指摘は女性だけの町が出来る以前から議論されて来たし今でも女性だけの町に多額の納税と引き換えに居住地区を提供する運動もあるが、長らく不調に終わっていた。




 それが数年前、一つの自治体が交渉に成功したのだ。


 人口がかつての半分以下になった、これと言った産業もなくベッドタウンにすらなるか怪しいほどの陸の孤島。


 そこに、「第二の女性だけの町」が作られる事となったのだ。

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