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「女性だけの町」の外側から  作者: ウィザード・T
第五回 同人誌即売会
42/96

口だけ女が嫌われる訳

 女性だけの町を作った彼女たちには、欲望がないのか。

 その答えは間違いなくノーである。


 自分たちにとって安全な町を作りたいと言う欲望は単純ではあるが、ちっとも矮小ではない。

 安全、と言うか安心への欲求は人間に限らず生物の最たるそれでありそれこそそのために人類は発展して来たようなものである。


 女性だけの町もまた、その理由で作られた。自分たちなりの安全と安心を求め、一から金以外の手を借りずに作り上げた。偉業と言うのは簡単だが、そのために第二次大戦と言われるほどの壮絶な歴史が生まれ、犠牲者も出た。しかしその結果、安全と安心を求める猛烈な情熱が成就したのは紛れもない事実であった。


 そう、成功者となったのだ。成就させて()()()()のだ。


 その成功者がもたらしたのが外の世界のこんな変化だとすれば、それがプラスなのかマイナスなのか。


 少なくとも、一部の《()()にとってはマイナスだった。

 



「女性だけの町は姥捨て山ではない」


 このフレーズは既に、女性だけの町が出来る前から市民権を持っていた。

 女性だけの町に賛同するのは外の世界で男と良好な関係を築くどころか女とも仲良くできない、と言うか真っ当な家庭の持ち主にひがんでいるような連中ばかりだと中傷する声は絶えなかった。

 もちろんそんな中傷に負けじと彼女たちは動いていたが、その活動の一環であったはずの「第一次大戦」の敗戦により多くの住民たちは散り散りになった。その中でひときわ志も魂も強い人間たちが築いたのが現在の女性だけの町であり、文字通り中傷を力に変えたのである。


 そしてそこに、邪魔者扱いされて山に捨てられる姥はいなかった。

 姥がいたとしても、目的を果たしていい意味で燃え尽きた美しい存在がいるだけ。私が取材した時にはまだまだその手の女性がかなり多くいたが、皆実に優しく立派な顔をしていた。物事を成し遂げ、ゆっくりと過ごすその姿は実に平和的であり中傷していた連中の考えるような姿はなかった。


「その結果があんな汗臭くて泥臭くて管理教育の極みの様な町ですか」 


 そんな風に言う人間もいる。

 あるいは本来望まれたそれは、女性好みのきらきらしたファッションとおいしいディナーと優雅なセレブリティめいたハイソサエティーな生活なのかもしれない。だがファッションやスイーツはともかく優雅でセレブリティな暮らしができるのは元より特権階級であり、と言うか元から現在の女性だけの町の「特権階級」の存在がいなければ暮らしなど成り立たない。まさかそんな存在を無視して女性だけの町をやろうとしていたのかよと嘲笑を受けた話は百や二百ではないが、現状では今の「女性だけの町」が一番完成されたそれなのだろう。

 と言うか、女性が女性として男性の手を借りずに女性だけで自立するとなった場合、他の手段を私には思いつけない。ただひとつ、クローン技術による女性しか生まれない受精卵とその保存法と言う極めて大きそうなところだけ男性を頼ったと言うのが情けないと言う指摘もあったが、そこについては男たちの評価は低くないためかさほど問題になっていない。







「ふざけんな谷川ネネ!どうして、どうして、どうして…!」


 私の本に対し、こんなこっちがふざけんなと言いたくなるような感想をネットでぶちまけて来たお人もいる。

 全く哀しい事にその人は私の先輩のノンフィクション作家であり私より先に女性だけの町に付いて本を物した人だったが、ネットレビューの評価は正直ひどい。


「★☆☆☆☆ 上から目線にもほどがある

 『「ただ不健全なそれを目に入れたくない。たったそれだけのために、なぜ苦労しなければならないのでしょうね」。そう彼女は言った』

 その頭一文だけで買ったのを後悔し、最後まで読み進めてまた後悔した。

 それこそその発言だけを真に受けて町にも行かずに脳内だけで「女性だけの町」を組み立て、挙句自分の組み立てた「女性だけの町」のそれに沿わない事にずーっと文句を垂れているだけ。しかも「どうしてこうなってしまった」と二十回以上出てきており、それこそこっちがどうしてこうなってしまったと言いたくなる。

 あ、冒頭一文は初版だけのようですがなぜ切ったんでしょうね。どうせあってもなくても同じなのに。」

「★☆☆☆☆ 全然参考にならない

 ただ「話が違うじゃないか」としか書いていない。と言うかあらかじめ自分の頭の中で決め付けて何にも知らずに立ち寄って勝手に裏切られただけ。いくら作家と言っても著者は自分がノンフィクション作家だって事がわかっているのだろうか」

「★★★☆☆ ギャグ漫画

 この一言で十分だと思います。そう考えて読めば行けます。ま、古本屋でどうぞ」


 この三つがトップレビューだった。それこそ雨後の筍のように現れた女性だけの町に関するそれの一つとされてしまったその本を書いた人は、現在はこの本の件で干されてしまったらしい。

 取り分け評価が高いのは一番目のそれであるが、何とも不運な話だ。




 ——————————何せその発言をしたのは、かのJF党の党首だったからだ。

バレンタインチョコいくつもらいました?

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