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「女性だけの町」の外側から  作者: ウィザード・T
第五回 同人誌即売会
39/96

コミックマーケット

 コミックマーケット。


 その舞台こそ、女性だけの町の登場により救われた存在であると揶揄の意味でも本気の意味でも言う人間は結構いた。


 私自身出版業界の端くれにいる存在として気にしていない訳でもなかったが、彼女たちがその舞台を徹底的に弾圧しようとしていると言うイメージを持たれていたのは事実だったようだ。

 それこそ一誌一誌検閲のような事をやり、自分たちのオメガネにかなわない作品は出禁、いや焚書坑儒まで企んでいるとさえ言われもしていた。

 

 その基本姿勢は未だに変わっていないと指摘する有識者もいるが、それでも往時と比べれば極めて平和になったと言う声は極めて多い。


 


 そんな私も此度、取材の意を込めて初めて参戦…するには混雑もひどいしお目当てのそれもないので参加者にインタビューをする事とした。

 トムトムと言うペンネームと言うかハンドルネームを持つその女性は、そのコミックマーケットことコミケにも十五年参加している猛者とでも言うべき存在でありその業界ではかなり名の通った存在らしい。ちなみに既婚者で夫は同人活動はしないが創作には寛容で、作品を読んで批評する事もあるらしく実質共同作業のような関係だと言う。


「私が同人活動を始めた頃にはもう女性だけの町が出来てたから現状ほどではないでしけど大したことはなかったそうですが、それこそできる前はいろいろ大変だったらしいですよ」


 同人誌と言う言葉に何を感じるか。


 私はこんな世界の人間のくせに同人活動など全く知らずにいたが、同業者の中にはその手の活動に参加してプロに成り上がった存在もおり決して無視する事は出来ない存在であるのに間違いはない。

 だが悪い言い方をすれば自己満足のためにやっている人間からしてみれば、描く事自体が目的でありその先の事は何もない。

 その上でもしかしたら自分と同じような考えの人間がいたり自分の作品を待ち望んでいたりする人間がいたりするかもしれないと言う期待を込めて、出版社などを通さずあくまでも商品としてではなく自分の期待だけを込めて売り出す。


 それが同人誌と言う物ですかとトムトム氏に取材する前に真っ正直に編集者の人に聞いて、谷川さんって優しい人なんですねと笑われた事もある。



「同人誌で何やってるんです」

「正直、18歳未満お断りの奴ですね」



 確かに、それもまた立派な趣向だった。

 トムトムさんはオリジナルキャラクターでやっているが、中には商業用となっているキャラにその手の事をやらせるものもあるらしい。

 と言うか、その手の作品が相当な数ある。


「まあ私もそれなりに名を売ってはいましたからね、と言うか最初からその方向でやってたんですよ、アニメの中のキャラの、そういう姿を見て…ね?」

 そういう話はちっとも珍しくない。私はともかくアニメの中の登場人物に真っ先に恋をしたとか言う話は小学生時代から男女問わずあったが、なぜか男がその事を言うと避けられがちになり女の特権みたいになっていた節があった。それがなぜなのかはわからないが、トムトムさん曰くそのアニメの中のキャラがある時過去の回想にて草原にて迷ってしまい膀胱の訴えに耐えきれなくなり中身を放ったシーンになぜかときめいてしまった、と言うのだ。

 

「あの時はアニメの中存在も私と同じようにそういう事するんだなって、びっくりしましたよ。でもその時からずーっと、その子の事を考えるようになりましてね。気が付いたらもう…」

「回想シーンだったんでしょう?」

「そうですね。でもその後も回想シーンとか何度か出てきましたけど、もうその時のシーンが忘れれられなくって。普段は正直、かなりインテリタイプだけど勇敢さもあってカッコイイのに、ああギャップ萌えって奴ですかね」

 ギャップ萌えとか言う概念さえも、この時初めて知ったぐらいだ。私などは「真面目な取材をしていそうな顔」とか言うお世辞だかわからない言葉を言われるほどにはギャップがないらしいが、なるほど言われてみれば確かに普段から想像もしえない姿、それも極めて人間的なそれを見せられるのは何とも面白い。


「で、最初はそのキャラから」

「ええ。原作再現レベルならまあ全年齢対象でもいいんでしょうけど、そっちの表現にいろいろ凝り出しちゃいましてね、それこそどうやったらできるのかとか、何なら私自身までその子と一緒に生活させたりして」

「それで……」

「ええ、もっと他に自分が言いたい事が出来る存在はいないのかなってなって、オリキャラを作ったんです。ご承知の通りのをね」

「なるほど、必要は発明の母ですか」

「ええ。なぜか最近は求めてくれる人も多くてですね。ああそれから、係の人とも知り合いになりましてね。また、名物となっているお客さんとも」

「お客様?」

「ええ、スーツ姿で毎回来てくれる人ですよ」

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