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「女性だけの町」の外側から  作者: ウィザード・T
第三回 外の世界での「女性だけの町」の教育
19/96

かつての時代

こちらも第三章です。

「女性だけの町」が既に定着してから、かなりの時が経つ。

 その時に赤ん坊だった存在は、現在社会の中核となっているぐらいには市民権を得ていた。


 そして彼ら彼女らの捉え方は、極めてさまざまである。


 自分たちの主義主張、と言うか不平不満にとって邪魔くさい存在であると見る人間は確かに存在している。

 だがそのような存在が極めて少数、いわゆるノイジーマイノリティである事は幾多の統計的調査から見ても明らかだった。




Q1 女性だけの町の存在を評価しますか(以下男性/女性%)

極めて高く評価している 16.7/8.8

どちらかと言えば評価している 17.3/29.1

どちらとも思わない 47.7/48.0

どちらかと言えば評価してしない 7.3/2.0

全く評価していない 2.7/1.1

無回答 8.3/11.0




 これは昨年の○○新聞のアンケートである。調査人数は一万人とも言われており信頼度はそれ相応にあるはずのデータだ。こんなアンケートに答えないだのただ適当な事を言っているだけだのと言う批判は甘んじて受け入れるが、それでも女性だけの町に大半の女性たちは一定以上の評価を与えている。




Q7 女性だけの町の難点はどこだと思いますか


女性ばかりで視野が狭くなる 11.4/6.1

男性だけの町も作るべき 2.0/1.7

文化的に不寛容そう 60.3/58.9

テロ事件が起きたのが怖い 1.6/8.0

外の世界に対する影響力が強すぎる 3.4/12.0

外の世界に対する影響力が弱すぎる 1.3/2.7

特に難点はない 9.4/1.0

その他 0.6/0.6

無回答 10.0/9.2




 そしてこれもまたしかりであり、男女とも「文化的不寛容」が圧倒的トップであり影響力の低さを挙げた回答者はごくわずかであった。

 だが同時に影響力が強すぎると見た女性はそれなりの数がおり、彼女たちの中でとりわけ活動的だった存在がかつて第一次大戦を起こし、その後JF党を結成したのかもしれない。


 少なくとも私の知る限り、女性だけの町は極めて自律的であり発信力は弱い。それこそ完全なる自給自足が出来ればそうしているであろうと思わせる程度に、独立した存在として活動している。

 現状の最大の問題はクローンでもどうにもならない食肉を生産するための「オス」の動物をどうするかと言う話だが、これも解決できればますます自己完結の度合いは増す。発電所の燃料を含むインフラ用の資材がうんたらかんたらとか言う話は当然あるが、それでも現状その方向で困窮していると言う話はない。



 




 —————「女性だけの町」は、「ディストピア」である。



 だが、現在進行形でそう言われているのも事実だった。


「あの町だと本もまともに読めないしゲームだって骨董品みたいな奴しかないし、それからスポーツだってまともにできないんでしょ?何が楽しいの?」


 紛れもない事実だ。女性だけの町において書籍はかなり制限されており、いわゆるテレビゲームも存在しない。ゲームセンターにあるそれも古臭いデザインのぬいぐるみと得点が表示されないエアーホッケーなど牧歌的と言うより原始的だった。

 さらに言えばテレビ番組もドドラちゃんと言う女性だけの町が出来た時からデザインがちっともリファインされていないキャラクターが活躍する子供向け番組を含め、第三次大戦の時の人間模様を描いたドラマの再放送の再放送のそのまた再放送が流れていたり、簡素なセットで予算をかけていないとすぐわかるようなクイズ番組とか言う名の教養系番組があったりでしかない。新作ドラマもない訳ではないが、オリジナルの脚本などほとんどない何十年前かの焼き直しか、それとも童話とかのアレンジだったりする。

 実際そんな環境で役者が育つ訳もなく、女性だけの町で看板俳優だった女性は外の町に出て全く通用せずエッセイストとして飯を食っている。

 

 なるほど、確かに、退屈極まりないだろう。


 だがどんな町でも住めば都であると同時に住めばディストピアであり、どこが個々人にとっての楽園であるか否かは全く違って来る。そんなぱっと見退屈なだけの世界でも、楽しんでいる人間はきちんといる。

 

 しかし我々その他大勢の俗人からしてみれば、実に面白くないのかもしれない。

 誰もが労働こそ正義であり家族こそ人生のいきがいであると言える訳もないのが人間であり、少なからぬ存在がドロップアウトしてしまっているはずだった。




 だがそんな人間が「第三次大戦」ですらテロリストに味方しなかったと言うのは紛れもない事実であり、信じがたいほどの民度だった。

 

 もっとも、それに対しても茶々を入れるような人間もいる。




 同じ「脱落者」だから、見捨てられないのだと。

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