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「女性だけの町」の外側から  作者: ウィザード・T
第二回 神学者たちの怒り
13/96

外に出た女性のお話(過激表現注意)

 —————207・280・137・143



 これは何の数字か。



 最初の数字は女性だけの町を飛び出して外の世界で婚姻した女性の数。


 二番目の数字はその女性が産んだ子どもの数。


 そして三番目と四番目の数字は、その女性たちが産んだ男児及び女児の数だった。



 そう、男女差は絶対数で言えば6人差、%で行けば2%少々。

 ないに等しいと言って差し支えないそれだった。


 一部の人間で噂になっていた話として、女性だけの町の「産婦人科」で生まれた子どもと子づくりしても女性しか生まれないと言うそれがあった。


 曰く、女性絶対主義者が作った人間だから、女性と言う優等種しか産まないと。


 そしてそれを続けて男性を根絶させ、この星そのものを女性だけのそれにすると。 


 あるいは性行為そのものが出来ないようにとかあるいは完全に不妊だとか言う噂まであったが、その全てがデマである事が現在進行形で証明されつつある。


 されつつある、なのは隔世遺伝と言う物があるからだ。半数の男児を含む女性だけの町の二世がその後成長・結婚して子どもを作った場合、全て女性とか言う事になっても驚けないとか言う論は依然としてくすぶっている。



 その件について、女性だけの町は今でも何の回答も出していない。

 いや、おそらく誰も分からないのだろう。


 何せ、人類で初めての存在なのだから。




「今まで多くの生物が生まれては、滅んだり繁栄したりして来た。アンモナイトの滅亡をいまさら惜しむような人間がいたら見たいですけど」

「彼女たちは奇形生物であると」

「残念ながら」

「神父さんの言葉とは思えませんが」

「それはどちらの意味ですか」


 胎児と言うまっとうな形を取らずに生まれた生命に対する批判は、実に宗教家らしいそれである。


 だが、そう取らない人間は少なくない。


 取り分け、女性だけの町に賛同し、作り上げたような人間はだ。




 女性だけの町の人間を殺すのにいくら必要かと言うとブラックジョークがある。


 銃弾とピストルの値段とか、刺し殺すための包丁とか、あるいは首を絞めるためのロープの値段とかいろんな人殺しに使えそうな道具の値段を計算した結果、紙一枚とカラーペンのセットで十分だと言う結論が出たと言う物だ。


 彼女たちからしてみれば性的に清廉潔白である存在は男性であったとしても重要な味方であり、自分たちを支援してくれる存在のはずだった。

 だが世の中聖職者とか言う身分に限って乱れている事は古今東西珍しくなく、免罪符乱発の旧カトリック教会だって仏罰の二文字を振りかざした比叡山延暦寺だって存在している。そしてそれが俗世的な金銭欲とかではなく性的な乱れもある事もまたしかりであり、同性愛が禁忌のはずのカトリックですらその手の行動が為されていたとか言う話は残念ながら珍しくない。もちろんキリストの法に則った婚姻ならば誰も文句は言わないが、それでも彼女たちの中にはそれすらも嫌う存在が多いと勝手に決めつけられていたとか言う意見まである。


 所詮聖職者もオトコに過ぎず、ともすれば女の尊厳をオトコが持ち合わせているそれで奪うようなバケモノに皮をおっかぶせただけの存在ではないかと言う理屈が彼女たちの中では絶対の憲法になっているんだろうとか言う下衆の勘繰りを見聞した事は一度や二度ではない。

 私自身女性だけの町について調べたのは第三次大戦の後からだが、第二次大戦の頃からその手の誹謗中傷と言うか茶々は絶えず、と言うか現在進行形で続いているらしい。全く飽きない物だと思うが、それでも最近になり自然消滅ムードになっているらしい。


 いい加減飽きたのかと思いきや、最近までその手の人間がかなりいたらしいと言うのが真相のようだ。

 

 女性だけの町と言う存在の魔力と言うか魅力が、純潔に駆られた存在を引き付けたと言うのであれば自然な流れかもしれない。だが自分が純潔であろうとするのは自由だが他人にもそれを強制するのは少しばかり筋が違うし、その手の思想の強い人間が土木工事を中心とした第二次産業が支配する男くさい実態に失望したのもあったようだ。あるいは女性だけの町の実態を知らされて思想に傾いたのかもしれないが、いずれにしても女性だけの町と言うのは一部の女性にとって住み良い環境でなかった事だけは間違いなかった。

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