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「女性だけの町」の外側から  作者: ウィザード・T
第一回  露出時代
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「倫理退行」

 女性が自らの手により作り上げた、「女性だけの町」。


 そのために、一体いくらの資金と人材が投入されたのか。その額については今更どうこう言う事もない。


 男性性を持った生物から己が身を守るための他の電化製品などを邪魔しないための電磁バリアシステム、女性しか生まれない人間の受精卵の作成と冷凍保存システム。

 そして何より、女性の手だけで作られたインフラストラクチャー。それらを維持するために働く、女性だけの町にやってきたり生まれたりした女性の運命。


 それらを他の事に使っていたらどうなっていたか、もっと世界は平和になっただろうし技術も発展していたとかそんな文句を言い出すのはごく自然だろう。私だって、頭に浮かんだ文章をそのまま出力できるプログラムが欲しいぐらいだ。

 まあ、そんな物があった所で推敲も何もない底辺のそれでしかない文章が垂れ流されるだけだから要らないが。




 だがとにかくいずれにせよ、「女性だけの町」が完成してから定着するまでに十二分な時は経った。

 もはやその存在や実現の可能性を疑うような人間など、この世界にはいない。

 

 だが、その反動は確実に存在する。それもまた事実だった。


 女性だけの町以前の論争、女性だけの町そのものの建設、女性だけの町内部での政治闘争から発展したテロ事件。

 その三つを、女性だけの町では第一次~第三次大戦としている。


 だがどうしても、メディアでは第一次と第三次ばかりが取り上げられる傾向にあるし私だってそうして来た。

 第二次大戦がどうして取り上げられなかったかと言うと、単純な成功譚になりやすいのだ。それこそ荒涼とした大地に農作物を植え発電所や住宅街など一から建物を作り漁場を開拓して行く—————と言えば実際感動的だがそれ以上にありふれた開拓物語であり、女性だと言う補正を取っ払うとただそれだけになってしまう。


 女性らしい事があるとすれば、二つの話しかない。




 一つは、ある意味女性だけの町を作り上げさせた「邪な男たち」だ。

 当然ながら女性は男性より非力であり、しかも町の建築予定と称して様々な金や物資が集まる。何より、女は山ほどいる。

 それこそ、物欲と性欲に駆られたような連中が何度もやって来ては、女性たちの尊厳を犯そうとした。

 無論そのために電磁バリアが作られ、警察組織も整備された。だがどうしても入城門などから入り込む男は減らず、外の世界は女性だけの町に対し本来ならば過剰防衛であるはずの男性性を持った生物の立ち入り禁止と、その際に電磁バリアを用いて殺害する事を許可した。無論その目的を逸脱しての殺害となれば執行者及び責任者は重罪となるが、現状その範囲を逸脱した話はない。と言うか、「第二次大戦」中に女性だけの町に侵入を謀った男性が出たのは最初の半年、及び外の世界との協定を結んでからのさらに一か月だけであり、犠牲者も二名しかいない。

 無二念打払令とか言われる事もあるが実際には薪水給与令であり、間違って入ってしまった男性については周辺の家屋に住む女性が連絡してどこかへやる事が決まっている。そもそも女性だけの町の周辺をうろつく男はいわゆるホームレスぐらいであり、女性だけの町の周辺数百メートルぐらいまでも実質その領土となっているとも言われている。


 いずれにしても、少しでも邪な思いを抱いて女性だけの町に近づいた存在が次々と黒焦げにされると言う事件が起きて以来、その手の男は近づかなくなった。




 で、第二の問題は、女性同士の性である。


 女性だけの町を求めた女性には、男性の過剰で醜悪な性欲を嫌っていた人間が多かった。それ故に性の問題のない女性同士での安らぎを求め、自らの手で楽園を作ろうとしたと言うわけだ。

 ゆえに性はタブー視される傾向があったが、それでも問題は消えなかった。


 むしろ、顕在化した。

 


 女性が女性を襲う、と言う事件が起きたのは一件や二件ではない。



 それこそ激しい工事の後で疲弊した女性同士、男性的なそれを排除したために娯楽も少ない中お互いの了解を得た上で同性愛に走ったカップルも少なくなく、町が出来上がってほどなく誕生した「婦婦」になったそれも多かった一方で、いわゆるレイプも多かった。加害者は逮捕され被害者は女性不信と言うか人間不信に陥って町を出たり自殺したりしてしまい、ある年などは建築現場などでの事故死者よりもレイプによる被害者の方が多かったと言う本末転倒な事態まで起きたと言う。


 そこで警察は特別警察を設置、性欲を解消するための専門家を育て上げ、さらにいわゆる生理の際にも解消する役目を与えた。その結果性犯罪は大きく減少し、彼女たちこそ第二次大戦の勝因となったと言う意見も多い。

 だがこれもまた、繫華街と言うか開拓者の集う存在にはそれなりにありがちな事例であり、これまた女性だけの町でなくともと言う過去の歴史の焼き直しだった。







 問題は、女性だけの町と言う人類の通過して来なかったフロンティアが出来上がった結果、外の世界がどうなったかと言う事である。


 そう、フロンティアが開拓される一方で、メトロポリスは荒れていたのだ。

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