第四話 「古傷」 後編
どうもTKNです。 段々と恋愛モノから遠ざかっている。そんな現状。
さて、ここからどうなるものか。
今回も引き続き、心理描写の移動を勉強しつつ作っております。
どうぞ宜しくお願いします。
散らばった破片が、いつの間に片付けられたんだ? あれだけ散らかっていた室内。
それが、結構綺麗になっちまっていた。
流石にカーペットの破れはどうにもならん様だが。
テーブルクロスの破れは替えを持ってきたのか、綺麗なモンだ。
そこに目に入った、拭き掃除を手伝う雀ちゃん。やっぱこういう子なんだよねぇ。
でも、背丈がアレなのか、テーブル一つ拭くのにも苦労している様だ。
手伝いたいが、・・・もう流石に動かない。
例えあのゴージャスなメイドさんの胸が押し付けられても、もう動かん。
部屋の引越しに始まりこの展開だ。これ以上動けたら人じゃねぇ。俺は至って普通の一般人。
更に辺りに視線を移す。凄まじくというか。ほとんどガラス一枚張りなのか。この窓というか壁みたいなガラス。
一枚いくらするんだ?そんなガラスに張り付いて外を見ているボブ。
「oh!ぜっけいネー。フジヤマどこですかー?」
見えネェ!ここ静岡じゃネェから見えないから!!!!
そのうち芸者とかも言い出すなコイツ。
その横で、学校で居眠りするが如く椅子で寝ているカズタ。
おい。寝るなよ。まだ終わってないぞ。つか寝たいのは俺だ!!
はぁ、もうツッコミする声も何か元気無い。
「清水様、どうかなされました?」
うお、でた。金髪ストレートで青い目をしたメイド服の凄まじく似合うメイドさん。
日本人だとこうは着こなせない。いや、むしろ着るなと言いたい。そう思う程に似合っている。
「あ、いや。余りに理解の範疇を超える事が多すぎてこう、ツッコミ疲れたなぁと。」
何いってるんだ俺。 ツッコミ以外に体力使ってないみたいな言い方してどうする。
そんな俺に、清楚という言葉がピタリと当てはまる笑顔と、口に綺麗な白い手を当ててこういってきた。
「本当、色々と大変な一日でしたしね。お疲れ様です。」
うわ!何かもう俺の苦労全部判ってくれてるみたいな。なんだこの。
同じ『判られてる』という意味は同じでも、受ける印象の違い。天野と対極。
何かこう何、抱きしめたい!じゃなくて、抱きしめられたい!という欲が沸いてでてくる。
「それと、清水様。」
お?なんだなんだ。何か俺気に障る事いった? は!もしかして胸凝視してた事バレてた!?
「お嬢様の事、・・・・・・あ、いえ。」
なんだよ、途中でとめるなよ!気になる、気になりすぎる!!!
何だ、まさかやつぱ結局俺を好きとかそういうオチか!?いやだぞ!あんな雀ちゃんと別の意味で凶悪なの。
死んでも嫌だ。どうしようもない。生理的に受け付けない。というか怖いから普通に。
「・・・ただ、お嬢様の前では、これから決して無茶はなさらないで下さい。
清水様が傷つけば、お嬢様もまた、傷ついてしまいますので。」
は? 言ってる意味が理解不能なんスけど。 俺が怪我したら天野も怪我する?
ますます判らん。まぁ、とりあえずメイドさんも凄まじく強かったしな。
なんだあの動き。テーブル投げたのか?いやそれは力があれば誰でも出来る。
そのテーブルに場にいる連中の意識を僅かに集中させてる間に。
砕け散ったテーブルの破片を掴んで、正確に敵の足の腱を切る(複数)なんてどんだけ忍者だよ!
それに執事の爺さんも意味不明な・・・ああ、聞いてみるか。
「なぁ、えっと、アリサさんだったスか?」
「はい。何で御座いましょう?」
うわ~、また美しい笑顔。なにコレ。なにこのすげぇ絵画見た時の様な感動。まぁそれはいい。
それよりも爺さんのあのワケのわからん力?だ。それをアリサさんに聞いた。
「ああ、それは。」
次の口が開くのを今か今かと、待つ俺の後ろから声。
「それは、私自らお話しましょうか。」
おい爺さん!また背後!好きだな。ていうか気配無く歩くなよ。アンタも忍者か!?
「これで、御座いますな。」
おお?何か細い、ん?見え難い。
「清水様、針でございますよ。」
アリサさんの言葉にようやく、その極細の何か、針である事が見てとれた。
いや、でも何で針で。あんな風に。
「ははは。この針には、短時間だけ相手の筋肉を弛緩させる毒が塗りこまれているのですよ。」
ちょっとまて!毒!?そんなもの使っていいのかおい! つかまんまサソリだな爺さんあんた。
てか由来は判ったが、なんで爺さんみたいな暗殺のプロみたいな人が執事なんだ?
「私の様な者が、執事ではおかしいですかな?」
察しやがった!俺の表情見て察しやがった!!
そして、そんな俺とのやり取りをみて、雀ちゃんやボブもきた。
「何してるの~?」
「何かオモシロイあるですかー?」
いや、面白い通り越してアブネェよ。
そんな俺達を横目に爺さんはこう言い出した。
「そうですね。まだお食事が整うまで時間もあるでしょう。
少し、昔話を致しましょうか。」
「oh! センジンサマの言葉は岩よりおもいでス!ためになりました!」
いやボブ。まだ始めてないのに終わらせるな!
「ボブ~、た だと終わってるよ。ためになりま す。だよ。」
そうその通り。
「ははは、中々日本語がお上手な、ブラジルの方ですかな。聞いた限り。中部の訛りの癖が発音にありますね。」
爺さん!なんで発音からそんなとこまで特定出来る!! 何か世界を見て回って知り尽くしてそうな気がしてきたぞ。
「wao!その通りでス!エクセレント!」
「マスターは、世界中、いくつもの戦争を経験しておられますからねぇ」
アリサさん今なんかサラリと凄まじい事いった!戦争経験者!?
戦闘のプロじゃないか。どうりでいや納得。アリサさんの強さも納得。
「うわ~。良く生きていたねお爺さん。」
その通り! 生き抜いてここにいる事自体が凄まじい。そんな言葉に、爺さんは語りだした。
「いや、戦争が終わった時、私は死んでいましたよ。戦う。という事以外に生きる術をもっていませんでしたのでな。」
すげぇ。つまりアレか、戦争でしか生きられない不器用な男だったと。あれ?でもなんで天野の?
「それから、私は暫く行く当ても無く、死んだ様に何もする事も無い日々を送っておりましたな。」
うん、あるある。生き甲斐を失うという事は、死んだも同然だろう。俺も雀ちゃんいなくなったらそうなるきっと。
お?珍しくボブが聞き入っている。ああ、そいやコイツ。兄貴(仮)にみえて、中身は真面目な学生だったな。
雀ちゃんも、座り込んで聞き入っている。俺も余計な事は言わずに聞いておくか。
「然し、ある日。お嬢様をつれた旦那様がスペインに遊びにきておられたのですな。
そう、少し話しを省きますが、まぁ、かいつまむとそこでも、お嬢様は危ない目に合われていたのです。」
「天野さん、本当危ない目にあいやすいんだね。」
思わず言う雀ちゃん。まぁ、あんだけの金持ちっつか権力者の一人娘だ。狙われるっちゃ狙われて当然だろ。
「ええ立場上。本当に危ない目に幾度も合われております。それ故に、相手の心を読む術に長けられました。」
そ れ か!!! それがあるから俺の行動ことごとく読んできやがるのか!!!!
心を読むというよりも、相手の表情とその場の流れから察するってとこだな。
どちらにしても恐ろしいな。死中に活を見出し続けた結果か。
「まぁ・・・その内の多くの中の一度。その一度の時に私は出会いましたな。
既に悪漢に脅えず、相手の腹を探られているお嬢様に。その時は、私はその悪漢に雇われておりましてな。」
おい!元々あんた天野の敵だったのかよ!!一体なにされた。何されたらそんな絶対服従するんだ。
ああ、金か。金なんだな。納得。
「その時にお嬢様の見張りをしていた私の、心を見抜きこう言われました。」
アリサさん除いた全員がごくりと生唾を飲む。
「つまらないでしょう? と」
は?つまらない?何がだ。良くわからん。全員がほぼ同時に首をかしげた。
「私も、一瞬耳を疑いましたな。唐突で。しかし確実に私の本心を見抜かれた様な一言。
そして続いてこう言われました。」
「戦争を失い。戦うという事を奪われた。
その事を私の表情と仕草から察したので御座いましょう。
おじさん。私と一緒ならずっと戦いを忘れないでいられるよ。と、そう、仰られました。
この時、まだ6歳にも満たないお嬢様がです。」
その場アリサさんを除く全員。いやカズタは寝てるが、絶句した。
そんな6歳の子供が歴戦の傭兵の心を見抜いて説得しただと!?ありえねぇ!断じてありえねぇ。
「私は、あれ程の戦慄を、久しく。いや、戦争の最中でも覚えた事があるかどうか。
物心つくか、つかないか。そんな小さな子供が、
荒くれ者達の中で一歩も臆せず。今自分が置かれている立場を認識し、生きる伸びる術を探しておられた。」
そういうと、爺さんは、ふと外に視線を移し再び俺達に視線を戻してこう言った。
「皆さんは今、お嬢様が私を説得なされた。そう思われてますね?」
そりゃ当然。すげぇと思うよ普通にそんな子供が。と、皆同じ考えだろう、俺とほぼ同時に頷いた。
「私は、説得されたのではありません。これからは戦争はそうは起こらない。平和な世の中が来る。
これは避けられない事。然し、戦争、それに極めて近しい場所にて生き抜いてこられたお嬢様。」
あ~・・・うん。確かにそうだ。ある意味戦争だよな。権力者同士の争いなんてものは。
そんな中に、強制的に引きずり込まれるわけだしな。そんな俺の後ろから寝ていた筈のカズタが、
メガネを光らせて興味深そうにこう言って歩いてきた。」
「進化論ですね。生物はその環境で生き抜くに相応しい進化を遂げいく。
それは、ボブ君の様な、肉体的な進化もあれば、天野さんの様な精神的な進化もある。」
その言葉に、俺達はカズタの方を見る。爺さんはその言葉に頷きこう答えた。
「や、これは聡明なご学友で御座いますね。その通りです。
進化論。お嬢様は、生き抜く為に、通常必要では無い精神的な進化を遂げざるを得なかった。
そう言う事で御座います。」
カズタ、お前もお前である意味進化してそうだよな。
爺さんもそうする所、戦争の中で生き抜く為の肉体的な進化ってところなのか。
「少し、話がそれましたが、私はお嬢様に説得されたのでは無く。
そのお嬢様のおられる処。そこは戦場と遜色無い所だと判断したので御座います。
そして、私はその場からお嬢様をお救いさしあげ、現在に至るので御座います。」
成る程成る程。なんかこればっかだが、つまり、天野の世界が爺さんの世界と近かった。そういう事か。
爺さんの世界は既におわっちまったが、天野の世界はまだ硝煙渦巻く世界。
だからこそ爺さんは天野の傍にいる。
説得というか、利害一致という感じなワケだな。そりゃヘタな主従関係より固いワケだ。納得。
「ほぇ。つまり、お爺さんと天野さんは似ている・・・というか世界が似ていたからお爺さんは、
天野さんの傍にいてるんだね。」
お~、雀ちゃん! 飲み込み早い!素晴らしい!
「oh!天野もソルジャーなのですね!」
いやまてボブ!何かおかしくないか! いやまぁあってるかも知れんが、意味合い的には。
「その通りですな。住んでいる世界が極めて近しい。だからこそ、私はお嬢様の傍にお仕えしているので御座います。」
ちなみに、お嬢様には数多くの護衛がおられます。まぁ、私が1から鍛えなおす必要があるものばかりでしたが。
その数、80名にも及びます。
そしてその一人一人、全てお嬢様が危険に合われる度、説得された者。
または私の様に世界が近しく、その世界でしか生きられないと思い傍にいる者を護衛につけていったのです。」
「護衛の数すご・・・。」
「ミラクルガールね!」
「雇われたというよりも、彼女について来た。という感じですね。
俺達にとっては非日常的な彼女の日常。その中で会得した人身掌握・・・いや、帝王学に近いものですね。」
ミラクルどころじゃねぇよ! なんだよそのバルキリー!北欧の女神かよ!!
しかし、異能とかそういったモノじゃなかったんだな。俺はてっきり千里眼でも本当にあるのかと思った。
「左様で御座います。まぁ、その中の一人が私ですな。私と、お嬢様の出会いは、そういう形で。
アリサは少し違いますが。」
「そうですね。マスター。」
そういや、アリサさんは年齢的にも俺らと大してかわらんだろう。
それに傭兵っぽくもないし、どういう繋がりなんだ。
「おや、お食事の準備が出来たみたいで御座いますな。」
お?その言葉に全員が、厨房から出てくる料理を見る。
なんだありゃ。見た事ねぇ。みたことネェの一杯でてきた。
それを見て一番に飛び込んでいったのは、いうまでもない。ボブだ。
「oh!エクセレント!」
お前それしかいわんのか。
雀ちゃんも雀ちゃんで、余程お腹すいてたんだろう。ふらふらとあっちへいってしまった。
いや、まてお前等。爺さんに話聞かせてもらって礼の一つもいわんのか!
まぁ空腹なのはわからんでもないが、ああもう!
「ありゃ、すみませんっス。折角いい話きかせてもらったのに、あいつらあんな。」
「ははは。構いませんよ。清水様も早くいかれるといいでしょう。
ですが一つだけ。お嬢様は先程も申しましたが、他の方から見れば異能・異常に見える部分があります。
然しそれは、生きる為に備わった本能とでも言いましょうか。
それでも、お嬢様はご友人方となんら変わることの無い。か弱い女学生であるという事に変わりありません。
これからも、恐れず良き友人であり続けてやってくださいませ。」
「そっスよね・・・。あ、はい。どうもありがとう御座いましたっス。」
そう言う俺にアリサさんも立て続けていってきた。
「お嬢様は、清水様たちが普通に願えば手に入るモノ。
それが世界で最も得難いモノにもなるので、宜しくお願いしますね。」
「え?あぁ、確かに近寄りがたい雰囲気滲みでてるっスからね。
あ、はい。判りましたっス。」
何かヘンな敬語になった気もするが、まぁいい。
然し、俺等が簡単に手に入るモンが手に入らない。
俺等が簡単に手に入らないモンが手に入る。
世の中上手い事できてるモンなんだな。・・・まぁそれはいい。俺も俺で運ばれてきた料理の方へいくか。
!? うぉぁ。何か小皿にちょこっとずつだが。何か見た目芸術的で綺麗なものが並ぶ並ぶ。
いやまて、こういうのは普通。こう何、食べる順番とか後から後から出てくる筈だろう?
にしては一度に大量に出てくるな。悩む俺と、後ろから声をかけてきた天野。
「貴方達、テーブルマナーなんて知らないでしょう?」
失礼な!いきなりなんて失礼・・・すみません知りませんごめんなさい。
「だから、そういう形式取り払って出して貰っているの。好きに食べていいわよ。」
ほんっとコイツ。相手を理解する力が飛び抜けて高いな。
あの話聞いた後だから、尚更良く判る。
「さ、沢山でてくるから、食べてきなさいな。」
おう、何かもう疲れすぎて腹へってなかったが、アレみたら妙に食欲がわいてきた!
「あ、それと清水一多。」
なんだよ!いけといったのにとめるなよ!!
「私の料理。本当の所どうだったの?」
「んあ?ま・・・。」
どぎゃあ!あぶねぇ怒らすとこだった!
「ま、まぁここのと見比べろと言われたら、やっぱ味は見劣りすると思うぞ。うん。」
平静に冷静にだ。顔を読まれるな。あくまで本当の事の様に言うんだ俺。
「・・・そう。わかったわ。ありがとう。また今度作りにいくわね。」
え。いや。それは。どうかと! ちょっとカンベンして欲しいナー。なんて。
「やっぱり・・・不味いのね。ここの料理人達の反応と、あの時のあいつらの言葉。
あと清水一多。貴方のその顔を見て確信したわ。」
「は?いやまて、普通レベルではうまいぞ!? こんな料理のプロばかりのとこで、
素人のお前の料理が上回ったらそれこそ異常じゃないか。」
何言ってる俺。何で庇ってる? 何してんだよ俺。
「本当に、嘘が下手ね。」
「嘘?じゃあお前が作ったものもってこいよ。全てくってやるよ。他のは一切口にしねぇ。」
「本当?」
ああもう、どうにでもなれ。もう何このお人よし。
「嘘つくかよ。ほれどんとこい!」
「実は作ってあるのよね。」
ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ。覚悟完了する暇無し!
しかし言ったからには食うしかない。
そう覚悟をきめる俺。そして天野は厨房の方へと向かっていった。
はぁ・・・ふと、俺は雀ちゃん達をみる。
うわ~・・・すげぇ旨そうにくってる。なに・・・その小さいけど柔らかそうな肉。
何・・・その、丸い形につくられたマグロをなんか加工したようなの。
旨そう。と言うかそれ通り越してませんか!?ちょっとぐらいコッチにも!ああでも食ったらぎゃぁぁぁ!!!!
はぁ。もうはぁ。ため息しか出ない。
「清水様。」
ん?この透き通る様な声は、アリサさん。何か用かと振りかえったら、すげぇ笑顔のアリサさんが居た。
何この女神。
「ありがとう御座います。でも、ちゃんと最後まで食べて下さいね。後の病院は手配しておきますから。」
うわ。何気に笑顔で酷い事いったよこの人。明らかにしってるな。あの料理。
まぁ、当然か。
「へいへい。死ぬ気で食いきってやりますよ。」
「あのような味付けになったのも、清水様の責任もあるのですから。」
へ?俺の責任?どういうことだ!? あのクソ甘ったるいストマックブレイカーな味付けが俺の責任!?
どういう事だまた何かナゾ増えてしまったよ!!
「では、頑張ってください。」
そういうと、例の見た目もヤバいが、味もそれ以上にデンジャーな物体が運ばれてきた。
持って来た料理人も酷い嫌そうな顔をしている。まぁ当然だが、それを食うの俺だという事を忘れ無いで欲しいな。
さて、どんどんと俺の前に運ばれてくる多種多様な料理兵器。
いや、もう見ただけで気が遠くなる。
しかも、今度は天野が、目の前で座っている。ジッと俺を見ている。
腹の中を探る気か。・・・どうするかこの状況。
一気に食えば、間違いなく不味いと悟られる。されど味わってゆっくり食えば、顔に出る。
どうする。どうしたらいい!!
そんな顔に出さず悩む俺、横からモカブラックの図太い腕が出てきた。
いくつか小皿をとって、いきなり口に運んだ。ボブ貴様! この一触即発の状態にそんな!
俺から視線をボブに移した天野。やばい。バレたら俺まで。
「oh!ちょっと甘くておいしいですネ! おかわりいいですカ?」
ボブ!お前すげぇよ!どんな味覚してんだよ!!しかし助かった!これなら俺も勢いで食ってもバレねぇ!
そう思うや否や、ボブに相槌を打ちつつ、勢い良く食・・・む?
ナイフとフォークを取ろうとした俺の手を見る。そこにはネコ型ロボットの様に、
包帯をぐるっぐる巻きにされた俺の手があった。 掴めない。どうするこれ。
悩む俺、そんな俺に気が付いたのか、雀ちゃんが寄ってきた。
「イッタ。その手じゃ食べれないでしょ? 食べさせてあげるよ。」
え?いや一気に食わないとヤバいんですが! そんな一口一口強制的に味わわされるなんて拷問だよ雀ちゃん!
「ほら口あけて。」
いや。そんなちょっぴりずつ嫌。もっとこう皿ごし着て!
フォークの上にのった、高そうな肉にどうせまた練乳でも乗っかってるんだろう。ホワイトソースもどき。
じわり・・・じわりと俺の口へ、物凄く巨大な隕石の様にスローモーションで迫り来るド迫力。
然し、余り顔に出すとほら!見てるからジッ・・・と見てるから!天野が!!
何か凄い不満そうな表情してる様な気がするがどうでもいい!
それよりもこの料理兵器と、雀ちゃんに食わせてもらうという天国と地獄!!!
喜んでいいのか!悲しんでいいのか!! どっちなんだもう!!
ええい!意を決して俺は食った!・・・ギャー!!!
今回だけ実は旨かった!!なんて展開をちょっとでも期待した。
そんな俺の期待をこの小さく切られたパイルバンカー的なモノが粉々に粉砕した!
甘すぎる!ぎゃー! 肉が柔らかく。ボブで言うところのエクセレントなジューシーさが相まって甘みが倍増する!!
一口食って昇天しそうになるが、平静を根性で装った。
そして次々とコンベアーに乗ってくるが如く運ばれてくるモノを食った。
30分程だろうか、その拷問に耐え抜き、ついに自白しなかった俺は燃え尽きていた。
まぁ、ボブが半分ぐらい食ったので耐えられた。が正しいんだろう。
そんな俺と、食べさせてくれた雀ちゃんを見た天野がこう言う。
「清水一多と静原雀。本当、お似合いのカップルね。」
いや!凄く嬉しい!嬉しいが苦しい!主に胃がこうなんていうの? 万力でぎゅぅーっ!と締め付けられてる感じ。
胃の中にはいった異物を吐き出さんが為にぎゅぅーっと!
「え~。天野さんの方がお似合いの様に思うよアタシ。」
待って!そんな事言わないで!!雀ちゃん! 何かもう付き合うといってくれた人のセリフじゃないよ!!!!
やっぱりあれか!好きとかそういう感情判らない鈍っ子なのか!!!もういや!!!!
「冗談じゃないわ。こんなお馬鹿が一緒にいると、・・・色々大変だし。」
お前もひどいな! ツンデレとかそういう何?あ、あんた何か!的なアレじゃなくて、
そんな本心からモロに出した言葉!
俺もお前みたいな千里眼と一緒にいると俺の精神世界がカタストロフィー起こすわ!
「そうなの・・・?」
「そうよ。私とじゃ到底釣り合わないわ。」
ひでぇ! プライドたけぇ! そこまで言うか!!!
「・・・ちょっと、それ酷くない?」
確かに酷い!酷いよねうん!ってちょっ!!!!!!! 雀ちゃん顔!顔!天野にケンカうる様な顔してるやめて!
「・・・。」
「・・・。」
うわーっ!うわーっ!予期せぬ修羅場!!ちょっと爺さんアリサさんヘルプ!!!
女帝と暴君が険悪ムードだよ!ちょっと助けてマジ助けて!!!!
「・・・帰る。」
アーッ! 雀ちゃん完全に怒ってる怒ってるよ!帰ると言って礼も言わずにヤバいよ!
どうする。どうする俺!つかボブ!カズタ!手伝え!なんとかしろ!俺には無理だこれ!
そんな俺が二人に助けを求める様に視線を飛ばした。・・・! 寝てやがる!カズタまた寝てやがる!
ボブに至ってはまだ食ってやがる。どんな胃袋してんだよ!
ついに、レストラン内から姿が見えなくなった雀ちゃん。
あーっもう!どうするんだ!どうするんだ!どすればいい!俺!!!!
「清水一多、なにしてるの?」
何してるじゃネェよお前!お前も謝れ!お前が悪いぞアレは!
「ほんと、お馬鹿。さっさと追いかけなさいよ。」
は?
「さっさと追いかけなさいと言ってるのよ。日本語判らないの?」
いや判るが、お前。そこまで言うか?
「本当。どこまで馬鹿なの。あの時撃たれて死んだ方がよかったんじゃないの?」
そこまで言うかお前。いい加減俺も我慢できんぞ。
「大体、鈍すぎるにも程があるわ。見ていてイライラする。・・・さっさと消えてくれないかしら?」
・・・てめぇ。
生き方は確かに凄いが、自信過剰過ぎるだろこのクソ女。
こう言い放って俺は、レストランを飛び出した。
「ああ、判ったよ。胸糞わりぃ。俺もテメェの面なんざ見たくもネェよ。」
・・・本当、馬鹿ね。
飛び出した清水一多と、静原雀を見送る様に、レストランの一枚ガラスの窓から、外の夜景を覗き込んでいる。
胸の奥が痛くて苦しい。これで、いくら鈍い二人でも、それなりに進展するだろうし。
これで良い。間違った選択はしてない。そう思っている。
けど・・・。外気を遮断する大きなガラス。それに映る、涙を流す酷い顔の私。そして後ろにアリサの姿。
「お嬢様・・・。」
そっと優しく私の肩を抱いて呟くアリサ。
「お嬢様、どうしてあの様な心にもない事を。いえ、判っていて言ったのですね。
自分のするべき事の為に・・・。」
自分のするべき事、そう。その通り。私は清水一多を幸せにしてあげる事。
それが私が彼の顔につけてしまった、傷への償い。そう信じて疑わないわ。
「でもお嬢様。お嬢様は一つだけ、間違いをしておられますね。」
私が、間違い? そんな、ちゃんと彼が上手く行く様にした筈よ。
予想通りなら、お互いに歩み寄れる筈。
「お嬢様・・・。」
アリサは、軽く首を左右に振る。
「人の幸せは、与えられても、それは幸せではありません。
自分で見つけて、苦労して・・・手に入れて初めて幸せと感じる事が出来るのです。
お嬢様ご自身が誰よりも分っていでではないですか?」
・・・。失念していた。私は、大概のモノは当たり前の様に手に入る。
だからこそ、それは良く知っている。
初めから、手を出すべき事ではなかった。幸せを押し付けてもそれは幸せでは無い。
「ごめんなさい。アリサ。馬鹿なのは・・・私だったようね。」
「お嬢様。謝るのは、私では無いですよ。」
そう、でも後戻り出来ない様な所まで来てしまった。どうすれば。・・・行き場、いえ、
思考の届かない闇。それが怖いのか。私は人目もはばからず、アリサにしがみ付いて泣いていた。
「お嬢様・・・。」
・・・さて、どうしようか。このまま狸寝入りをしておこうか。
俺は、豪華この上無い、テーブルで寝た振りを続けている。
向こうでは、関係無いとばかりに、まだフランス料理をひたすら食べているボブ君。
その反対側では、アリサさんに、泣き崩れている天野さん。
状況を把握するのは簡単だが。 二人、イッタと静原さんをくっつけ様として、
自分の厚意が間違いだったと、気づいたんだろう。まぁ、見てて言わなかった俺も俺だけど。
さて、どうしたものか・・・。今この現状で動くのは得策では無い。
然し、これだけの豪華なもてなしや、バイトの恩もある。
これを打破してやらないと、俺のプライドが許さないな。
どうするか俺は思考を張り巡らせた。この事を直接イッタに言うか?
いや、そんな事をしても、ぎこちなさが残る。何か策を。元の鞘に納める策を・・・。
・・・よし。今は天野さんは触れない方がいいな。彼女自身の本心は自分で気づくべきだ。
となると、イッタと静原さんだな。
俺は、周りに気づかれない様に静かに、レストランを後にした。
「いやはや、青春ですなぁ。エドワードさん。」
「左様で御座いますな、シェフ。最早私達の様な老いぼれには、縁の無い事。勿論、口を出すべきでもない事。」
だーっもう!雀ちゃん足速っ! どこだよ!帰り道は判ってるから追いついてもいい筈なのに・・・クソ!
なんだこの胸糞悪さ。天野の事もそうだが。何か良く判らん別の胸糞悪さ。形容し難い胸糞悪さ!!
見慣れたどうでもいい街中。勢い良く走り去る街のネオン。行き来する車、通り過ぎる人。
何人かぶつかって吹っ飛ばした気がするがどうでもいい!!!
早く雀ちゃん見つけるんだ! 然し見つけてどう言うんだ!?何言うんだ!?
判らん!がとにかく走れ俺!!
「はぁ・・・。どうしよ。ついカッとなって出ていっちゃったけど。
明日から顔あわせにくいなぁ。・・・。」
帰り道の、日も落ちた暗い小さな公園でアタシは、ブランコを少し揺らしつつ俯いていた。
本当。どうしよう。いや、それよりも何でアタシあの時あんな事言ったんだろう。
天野さんとイッタがお似合いだと思ったから? ううん。何かもっとこう・・・なんだろ。
「あ~・・・もうわけわかんない。」
アタシは、そう呟くと、星空を眺めた。
高い、当然だけど手を伸ばしても届かない星がまばらに光っている夜空。
「はぁ・・・なんだろ。もう。」
妙に行き場の無い怒りがこみ上げてくる。そこへ聞きなれた声が聞こえてきた。
「雀ちゃん!」
この声、イッタ?追いかけてきたんだ。アタシを心配して。そうだよね。アタシの事好きとかいってるし。
でも、アタシはイッタの事をどう思ってるの? 好きなの?嫌いなの? ・・・どっちなの?
「雀ちゃん、大丈夫か?」
判らない、大丈夫なような、そうでないような。判らない。
「雀ちゃん?」
・・・。
「お~い?」
・・・・・・・・・。
「雀ちゃ~ん?」
「煩い馬鹿!」
判らない。そんな行き場の無い思考が怒りになって、気が付いたらイッタを殴っていた。
「うるさいな!どっかいってよ馬鹿!!」
あれ、何いってるんだろう。アタシ。なんでイッタ殴ってるの?心配してくれてるのに。
「ひどっ!心配してるのにひどっ!」
その通り、酷いアタシ・・・でもなんこう・・・何。ムカツク!!!!
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
暗い公園に、響き渡るイッタの絶叫。行き場の無いワケのわからない想い。
それが全てイッタに叩き込まれた。
「馬鹿!!」
そう言い捨てると、アタシは、倒れ込むイッタを無視して自分の家へと全速力で帰った。
「痛ぇ。お、俺の息子今回何回・・・もういや。」
うつ伏せで倒れてる俺の上から、公園の街頭の明かりが落ちてくる。
今の俺の心情を表すかの様な、不幸・どん底といった表現に使われるスポットライトの様に。
俺の半径数十センチぐらいが明るく、それ以外は真っ暗だ。
もう、本当にどうでも良い。天野も天野だが、雀ちゃんも雀ちゃんだ。何で俺を殴るかな。
普通心配して追っかけてきたらこう・・・泣きついてこない!?泣きつくまでは行かないにしても頼ってこない!?
流石野生の猛禽類。野生的行動に出てしまったのだろうか。もう・・・どうでもいい。
あ~・・・体に力が入らない。寝るか?このままここで、風邪引いてもどうでもいい。
そんな虚無感に沈みつつある俺に、聞きなれた声。カズタか。お前は気楽でいいな。
「大丈夫かよイッタ。」
大丈夫に見えるか? 劇場でよくあるこの絶望的演技を、意味無く公園でやってると思うか?
「こいつは、思ったより重傷だな。静原さんの行動も予想はしていたが。
実際見ると、酷いな。」
だろう。何かもう、喋るのも嫌だわ、誰かナレーションかわってくれね?
「ま、取り合えずほれ。」
ん?何か頬に熱いものが、ああ、コーヒー缶か。だが飲みたくも見たくも無い。それ以前に体が動かん。
「・・・そこまで酷いか。まぁ、判らないワケでもないが。」
そういうと、カズタは、うつ伏せに這い蹲る俺の隣に座った。・・・帰れ。どうでもいいから帰れ。
「で、これからお前はどうするんだ?イッタ。」
どうするってお前。どうしようもネェだろ。明日学校で雀ちゃんやら、天野もそうだ。
会いたくネェよもう。学校もどうでもいい。いきたくもネェよ。
「はぁ。少しは喋れ。」
「あ。」
喋ったぞ。
「お前な。まぁ、いいか。じゃあ聞け。お前は静原さんの事はまだ好きなのか?」
さぁ。もうどうでも良い。何もかもがどうでも良い。
俺の世界は壊れたんだよ終末の獣リヴァイアサンに呑まれたんだよ。タイダルウェイブでな。
「はぁ・・・。戦争を失った執事さんみたいだな今のお前。」
ああ、確かにそうだ。生き甲斐を失った執事さんと同じだな。
「だが、執事さんは望んでも戻ってこないモノだろう。戦争なんて個人でそう簡単におこせるもんじゃない。」
まぁ、そりゃそうだ。当然だ。
「お前は静原さんを失ったのか?嫌われたと思ってるのか?」
わかんねぇよ。どうでもいいからもう。
「これは俺の推測でしかないが。」
なんだよ。まぁ、お前の推理力とかそういったモノは半端ネェ事は知ってる。多分当たりなんだろうな。
「静原さんは、お前を嫌って叩きのめしたんじゃ無いと、俺は推理する。
では何故か。」
・・・なんだよ。
「答えは簡単だ。自分で自分が判らなくなった。その反動で思わずイッタを殴った。
そんな所だろうな。」
あ~・・・いわれてみれば、確かに雀ちゃん鈍いしな。それにちょっと暴力的。そこが可愛いんだが。
「このままお前は、静原さんを苦しませたままで諦めるのか?どうでもいいと。
臭い事いうのは趣味じゃないが。お前の静原さんを想う気持ちはその程度なのか?イッタ。」
・・・。
「まぁ、今日はもう遅い。ここでぶっ倒れたまま体ごと、そのどうでもいい頭冷やして考えろ。俺は帰るぞ。」
・・・ああ。
そういうと、本当に帰りやがった。
ああ。まぁその通りだろう。お前が言う事は大概当る。いや外れた試しが無い。
そのお陰で高校入学出来たぐらいだしな。入試の予想ピンポイントで当てやがった、すげぇよ。
だとしたら雀ちゃんも苦しんでるのか。・・・彼女の、いやなんていうんだ。まぁ、アレだ。
良く判らんが、うん。ああそうだ。今まで通りだ。アリサさんのいった普通に接する。
今まで通り、明日から普段通りしていれば、戻れるのか?そうなのかカズタ。
・・・いないのに聞いてどうする俺。はぁ。
暫く、何も考えずにうつ伏せになる俺。誰か答えくれる人でも待ってるのか。
来るわけも無いだろう。・・・しかし、ガキの頃からの付き合いのアイツの言う事だ信じないワケにゃいかない。
踏ん張ってみるか。道化になってもいいのでやってみるか。やらないで終わるよりゃ・・・いくらかスッキリするだろ。
そんな俺は、力なく、立ち上がり、フラフラと自分の家へ向かった。
鍵を開けようとポケットに手をつっ・・・はいらねぇ。猫型ロボットの手が邪魔して入らない。
まぁいい。今日はドアの前でぶったおれとくか。もう立つ余力すらネェよ。静かに目を閉じた。
・・・。
「清水一多。大丈夫?」
あ?この呼び方と声は天野か? どんな顔してきやがった。まだ何かいい足りないのか?お嬢様よ。
俺はもう開けたくない目を開けた。目に入ったのは、唇をかみ締めている天野。
なんだ。何かいつもと違うぞ。つか泣き顔?それに近いというか目が兎みたいに赤い。泣いた後か?
・・・あんまり女の泣き顔は見たくない。たとえそれがあの天野であってもだ。
「鍵はどこ? その手じゃ開けられなかったんでしょう?」
ああ、その通りだ。この四次元ポケットしか受け付けない手が邪魔して入れない。
「・・・ズボンのポケットの中。」
何故か、あれだけムカついた天野。だがその泣きっ面を見て、余り突き放す事が出来ない。そんな俺。
俺のポケットの中に手を突っ込んで、鍵を取り、ドアをあけた天野。
「ほら、立ちなさい。そんな所で寝ると風邪ひくわよ。」
ああ、もうどうでもいいから寝させてく・・・ぐっふ!?
こいつ、俺の両脇掴んで中に引きずりこんでやがる。 俺は激しく玄関の右か左の敷居で頭部を強打した。
「いてぇ!!」
目が覚めた。一発で目が覚めた。
「お前もうちょっと優しく扱え! つか辺り見て動かせ!」
「無茶言わないで、貴方重いし、入り口狭いし。」
あ~、お前の家はデカいよ。ぶつけるなんて考えられないよな。
と、嫌だが無理矢理俺は自分の体を起こし、固焼き煎餅な布団に倒れこんだ。
「あ~・・・落ち着く。」
硬い安物の布団が、雲の様にフワッと柔らかく感じる。相当疲れてるんだな俺。
「じゃ・・・あ、わ・・・た、しは帰るわね。ゆっ・・・くり休みなさい・・・よ。」
大きなお世話だ。と、ふと言葉がおかしい天野の顔を見る。・・・泣いてやがる。
まぁ、見なかった事にしておこう。見たら怒るだろう。この場合。
何もいわず目だけで、天野が帰るのを見送った。
・・・、反省したのか?でなきゃ泣かんわな。 まぁ俺も怒る気は失せた。
が、問題は雀ちゃんと天野だな。 明日から顔合わせ難いだろう。俺もだが。
だが、俺がこのままだと、マジでカズタの言う通りになるんだろう。
どうする。どうする。カズタならどうこの状況を打破するんだ。考えろ。
だめだ。俺にはそんな頭は無い。
はぁ・・・、袋小路だ。どうしようもないぞ。
どうする・・・どうす・・・あ。
俺は、なんとなく、目に入ったカレンダーに一つ忘れている事を思い出した。
次のの日曜、雀ちゃんと天野もつれて遊園地だ。 これだ。
もうこれしかないだろう。 だが、何も無く呼んでも無意味だろう。
とりあえず日曜まで、考える必要も無い、普段通りの俺を演じてればいいだろう。
その間、カズタがなんか手を出してくるだろうしな。よし、もう・・・寝る。
「oh!ごちそうさまでス!」
ワタシはとてもおいしいディナーたくさんたべましたネ!
「いやいや、凄まじい食欲だったね君。胃は大丈夫かい?」
「hahaha!まだまだいけますヨ!」
「ははは、本当に見ていて気分が良いよ。それとだね、折り入ってお願いがあるんだが、いいかねボブ君だったかな。」
「ホワイ?なんですかー?」
何かベリーとっても困った顔してるシェフ。 ワタシどんとこーいで聞いたネ。
「うん。その食べた分といってはなんだが、明日からいつも以上に鈴女ちゃん。
いや天野君達にその元気をわけてあげて欲しいんだ。」
「oh!ワタシの元気プレゼントすればいいんですネ! おやすいごよう?でース!」
「ああ、ありがとう。さ、君も帰りたまえ。余り学生が夜遅くまで出歩いていたらダメだよ。」
「イエス!じゃあワタシもかえりますネー!ごちそうさまでしタ!!」
「ああ、おそまつさま。」
そう礼をしたワタシは元気いっぱいお腹ちょっといっぱいかえりましたネ!
「シェフ。冷蔵庫の食材ほとんどなくなってますよ。」
「・・・明日は休業だな。これは。」
ふたりな。第四話 「古傷」 終わり。
さて、ようやくキャラクター間の繋がりがこじれて参りました。
一多が一方的に、雀に求愛して、天野が一多の幸せを一方的に押し付けていく。
そして鈍い雀。 その関係が壊れ、上手く修復するのか。
イッタとカズタとボブが月曜日からどう動くのか。
雀と天野はどういう行動にでるのか。
全ての結果はどうやら、次の日曜日に出る様ですが。さて、どうなりましょうかね。
でわ、どうもありがとう御座いました。