第三話 「俺の部屋」
さて、勢いのある文章を目指し三話目となりました。
未完の英雄とのギャップの差が、我ながら凄まじいな。と思いつつも。
向こうもこっちも、作品に注ぐ愛情に差は全くありません!
アッチは、シリアス(若干ギャグ入ってますが)
コッチは、ギャグ・・・いや、
一応、副題として、前回の終わりで気付かれた方もいると思いますが。
恋愛は成就するよりも、成就してからこそが本番であり、
続ける事の難しさを書く。
という事がありまして、はい。ああいう終わり方をしました。
知り合いの方々から、成就早過ぎるわ!等とツッコミ諸々きましたが、
型に収まらず、破綻しない程度にぶち壊す展開を頑張って作りたいと思います。
でわ、第三話 「俺の部屋」 宜しくお願いします。
せまっ苦しいワンルーム。数千円で買った安い小型のテレビ、千円でかったちゃぶ台。
数百円で買った組み立て式の棚その他諸々。
・・・しまったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!
俺は部屋でポテポテと歩く、まだ名前も付けてないパグを膝の上に抱きつつ絶叫する。
そうだよ!振り出し若干前進気味の今の状態だと、
雀ちゃんがこのブサ犬を可愛がりに遊びにくるフラグが残っていた!!
俺は周りを見直す。 だめだ、色気も何も無い見事に殺風景な部屋。
そしてとどめのこのブサ犬と、未だ顔の腫れが治まらぬパグみたいな顔!!!
どう考えても女の子を呼んで良い環境じゃないよね!?
ステレオの一つも無いこの部屋!!
え?女の子着てたって? ああ、天野かアレは・・どうでもいい!
どうでもいいことは、どうでもいい。それが俺のポリシーだ。
俺はサイフの中を覗いて見た、ひーふーみー。
やべぇ、諭吉っつぁんどころか、あのキモ顔のオバハンすら数人だぞ。
洒落たお店に連れて行く事すら困難な現状。皆さんどうお過ごしでしょうか?
なんてボケてる暇は無い!!!どうする俺!どうしよう俺!!
そして駄目押しの如く、何か生暖かいモノが俺の下半身に染み渡る。
ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ。
漏らしやがった! このブサ犬漏らしやがった!!!!
これでは俺が漏らしたみてぇじゃないかっ!!!
そこへ呼び鈴が鳴る。やばいっきたのかっ!?
こんな超絶エクストリームなタイミングできたのかっ!!?
そしてそんな慌てる俺を他所に、勝手にドアが開く。
いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!
鍵閉め忘れてる俺! バカバカバカバカもうっ!
そこへドカドカと入って来たのは、雀ちゃんでは無く、天野。
なんだお前か。と、股間にブサ犬の小便べっとりも気にせずウザそうに言う。
それを見た天野は、顔を引きつらせてこう言った!
「その年であんた・・・。」
片目を細め、汚物でも見るように顔をそらしやがった!
いや違う。違うぞ!これはブサ犬の小便であって断じて俺のでは無い!
「はぁ、ほら見なかった事にしてあげるから、さっさと着替えなさいよ。」
腰にタオルを巻き、いそいそと着替える俺を見ていう天野。
「あら、可愛らしい仔犬ね。」
どう見てもブサイク! どう見ても可愛いなんて言葉が一つも出てこない!
天野!お前美的感覚ズレ過ぎてないか!?
そんな俺を他所に胸元に抱き寄せ可愛がる。
ブサ犬!貴様なんてうら・・・やましくないぞ!断じて!決して!!うん。
そんな妙な葛藤をする俺に、ブサ犬から視線を移して言う天野。
「それで、彼女とはうまくいった?」
またそれか!お前はなんだ?母親か!? 本当にどうでもいいだろ他人事!!
心の中でそう叫びつつ、こう答えた。
「あ~。まぁ、振り出しに戻るからサイコロ1の目ってとこか?」
何で答えるかね俺。逆らうととんでもない事になるという野生の直感か!?
「そう。良かったわね。」
本当に嬉しそうに笑顔で答える天野。なんだ、ほんとに判らんぞコイツ。
つかなんで俺と雀ちゃんをくっつけたがる? わからん。
「で・・・・。」
お?なんだなんだ。悩む俺にまだ何か言う事があるのか。まぁ、言葉の続きを待った。
「見事に女の子を呼ぶ部屋じゃないわね。おまけに臭いし。」
ずっぎゃーん!天野はストレートに遠慮の欠片もなく言い放った!
俺に999ポイントのダメージ。効果は絶大だ!!
床にへたり込む俺に、何か香水?のようなものを渡してくる天野。
「せめてこれで、臭いだけでもなんとかなさいな。耐えられないわ。」
耐えられないなら出て行け!今すぐさぁ出て行け!と言えるはずも無く、
すごすごと渡されたモノを部屋に振りまく。すこ~しほのかに甘ったるい様な。
あんまり好ましくない匂いが部屋に漂う。
「うわっくせぇっ!!!」
俺の嗅覚と相性が悪かったのか、鼻を押さえ大げさに悶える俺。
それを見て天野が怒る。
「ちょっと高い香水なのに臭いって。・・・怒るわよ。」
その言葉に一瞬で立ち直って反射的に謝罪する俺がいた。
何故かこいつには逆らうな。そう喧嘩の場数を踏んだ者の勘というものが働いたのだろう。
「まぁいいわ。で、予算は大丈夫なの? 静原雀とデートするかも知れないでしょう?」
何この千里眼。千里どころか俺のサイフの中を見透かしやがりました。
然し、俺も男。ここは見栄を張るのはとうぜ・・・。
「見栄を張って自滅したいの?」
こいつ・・第三の目でも持ってやがるのか、読心術でも使っているのか!!!!!?
ことごとく俺のスマートでデリケートなハートを読んできやがる。
ダメだ、コイツに隠し事は通用しないと悟った俺は、素直にこういった。
「ニーキュッパです。」
2980円!文句あるか固羅!!
「ほんと、どうしようもないマダオね。」
まるで だめな おとこ 略してマダオ! いやちょっと待て!マダオは止めてお願い!!!
そういうと、天野はサイフを取り出して、二枚の諭吉っつぁんを差し出してきた。
流石にコレは受け取れん!男としての意地と面子がある!と必死で断る俺に、天野はこういった。
「あげるワケじゃないわ。今度ちょっとウチの家で人手が欲しくてね。
邸内の部屋の引越しをするのに、無駄に元気なあんたにバイトを頼みたいのよ。
これはその前払いね。働きに応じてもう少し色はつけるわ。」
成る程!バイトか、ならば全然問題ナッシン大感謝!!とばかりに、二枚の諭吉っつぁんを貰った俺。
しかも、働き次第で更に上乗せだという。何でもやりまっせ!お嬢様!!
何と現金な俺だろうか、金次第ではどうでも良い奴すらどうでも良くなくなる。まぁそれは良い。
何か茶でも出そうかと、台所にいく俺を天野は呼び止めこういった。
「いいわ。もう帰るから。余り長居して静原雀と鉢合わせしたら、誤解されるでしょう?」
それもそうだ。良し帰れさっさと帰れ今帰れ。とばかりに玄関まで見送る俺。
そして、そんな俺を見て一言。
「頑張りなさいね。」
そりゃ当然!とばかりに答える俺は、天野を見送る。
よ~し!軍資金が思わぬ所から落ちてきた!と喜ぶ俺。然しこの後、
天野邸で、地獄を見る事なぞ知る由も無かった。
それから部屋の、カーペットに染み付いたブサ犬の出汁をふき取り、さっきの臭い香水を振りまいた。
・・・・・やはり臭い。耐え兼ねない。 線香でも焚いてやろうか。などと脳裏を過ぎらせる俺。
程なくして、呼び鈴が鳴る。今度は間違い無く、雀ちゃんだろう。
俺は慌てて、彼女のいる玄関へ飛び込みドアを開ける。
そこに立っていたのは、ちょっと照れくさそうに下を向いている雀ちゃん。手には何か買い物袋。
まさか・・・料理? 天野の事もあるので、俺はかなり警戒した・・が。
何か一際違和感を伴わせる物体が雀ちゃんの後ろに居る事に気付いた。
ボブ貴様・・・。
久しく忘れていた殺意。怒気。それをらを必死で抑えて、嫌々ながらも二人を招き入れる。
「お邪魔するね。」
可愛らしく少しお辞儀して、散らばってる靴と、脱いだ靴を丁寧に整えて入ってくる雀ちゃん。
良く出来た子だ。親の躾が素晴らしいんだろう!うん。
「お邪魔しまース」
帰れ! 邪魔だ消えうせろ空気読んで帰れ貴様。
というか雀ちゃんが整えた靴を蹴散らしてはいってくるな!!
「土足で入ってくるな貴様!靴を脱げ!靴を!!!!」
余りの事に脳内の叫びと言葉がリンクした。
そういやこいつ外人だった。靴を脱いで上がるなんて習慣、
確か日本だけだったか?まぁそんな事はどうでもいい。
さても、どうしてくれようか、この異常事態。
普通、くるか?どんなフラグだったんだよ!どうなんだよこれから!!
そんな俺の激しい心配を他所に、ドカドカとリビングに向かい、座り込むボブ。
「oh。ちいさいですネ。」
やかましい!
「これがちゃぶテーブルですカ。」
ちゃぶテーブル? ちゃぶ台だ! どんな覚え方したらそうなる!
そして、部屋の隅でボブに怯えているのか、威嚇するブサ犬。
そして、そのブサ犬に逢いたかったんだろう。すぐさま抱き抱える雀ちゃん。
俺も抱き抱えて!一時でいいから、そのブサ犬になりたいと激しく思った。
そんな二人を台所から見つつ、茶と茶菓子を持ってきて、テーブルに置く。
「ohせんべいネ。ニッポンのクッキー大好きでス。」
遠慮の欠片もなく、豪快に手にとり食いまくるボブ。
ブサ犬と戯れる方が楽しくてたまらないのか、こっちに気付かない雀ちゃん。
・・・どうするよ。 こんな展開誰が予想していた?
あの天野ですら予想していなかっただろう。
然し、なんとか話を作ろうと頑張った俺!
「そういえば、雀ちゃんとボブ、何で二人一緒にきたんだ?」
その言葉に、ボブが先に答えた。
「hahaha! さきほど近くで偶然静原サンとあいましタ。」
成る程、うん。それはまぁ普通にありえる話ではある。
そして続いて雀ちゃんがブサ犬を抱えながら言う。
「ちょっと、心配だったから、ついてきて貰った。」
心配『だった』!?つまり何か、俺が雀ちゃんを襲うとでも!?・・・あれ、何か涙が。
心の中で涙をナイアガラの滝の如く流す俺。
そんな俺を気にもせず、雀ちゃんはこういう。
「そういえば、この子。名前はつけたの?イッタ。」
その言葉にハッとした俺。
それに困る俺を見て、ボブがこういった!いやボケた!
「わがはーいは犬である ネームはまだないネ。」
誰がうまい事言えと! しかも猫だ! それは猫だ!謝れ!作者に謝って帰れ貴様!
その言葉に、激しくツッコミを入れようとした瞬間、さきに雀ちゃんが、ツッコミを入れた。
「ボブ~、それ猫だよ。キャット。」
ちょっと、控えめで小さく可愛らしいツッコミ。
こんなツッコミ食らってみたいなぁ。とボケを試行錯誤する俺を他所に雀ちゃんは、ブサ犬を抱え挙げる。
「よ~し、キミの名前は。」
お?お? つけてくれるのか助かった! そんな俺。 そしてボブは雀ちゃんの方を見る。
「ゴンザレスだ!」
待てぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!!!
そんな可愛いお口から、そんなダイナミックな名前が!というかどんな感性!?
いやまぁ、ブサ犬にあんまりカッコイイ名前つけられるのもアレだが、
それに匹敵する呼びたくない名前がつけられてしまった。
どうする俺。どう答えれば良い。ねぇ。と、そんな俺を押しのけるかの様にボブが言う。
「oh!グレイトなネームですネ。エクセレント!」
いや、お前もお前だ!なんで素晴らしいんだ! おかしいぞお前等!!!
「でしょ~?ぴったりだと思うんだ。」
確かにピッタリだと思うが、ヘタに痛い名前つけられるより、可哀想だと思いました!
「そういえバ・・・。」
名前をつけてじゃれ合う雀ちゃんと、何か言い出しそうなボブ。
なんだよ、と尋ねる俺。
「お腹すきましたネ!」
いやまて貴様、ちゃぶ台にあった煎餅皆殺しにしといて、腹へっただと!?
どこまでふてぶてしい奴。しかし、そんな言葉に雀ちゃんがこういう。
「あ、アタシ材料もってきたから、料理つくるよ。
くる途中の良心市で結構一杯うってたから。」
良心市、あの100円均一の無人野菜売り場みたいなやつだな。
いっちゃ悪いが、流石貧乏。そう言う事には詳しそうだ。
これは、料理は期待して良いよな!良いよな!
そうだよな!? 両方共女の子が殺人料理なんて主人公耐え切れんよ!泣いちゃうよ!?
そんなこんな、日本語を判っているのかいないのか、テレビ見て笑うボブ。
台所で、テンポの良い音を立てて、野菜を刻む雀ちゃん。
何だろう。天野の斬馬刀でも振り下ろすかの様な、斬撃ともいうべき音と、
この心落ち着く音の違い。まぁ、当然だろう。家庭での場数が違うんだろうと一人納得した。
そして、数十分だろうか、俺はブサ犬、いやゴンザレスをからかいつつ、テレビをボブと一緒に見ていた。
そして、重そうにお鍋をよろよろと持ってくる雀ちゃん。
ボブが居なかったら、
お鍋ごとこけそうになって俺が雀ちゃんをキャッチ!そしてあわよくばそのまま!
なんて展開も期待できただろうが、こんなカオスフィールドにそんな展開は先ずないだろう。
ちゃぶ台の上に、鍋を置く雀ちゃん。出てきたのは、
薄いというか透明ちょい濁り気味のスープ。それに野菜と、何か白いモノが浮いている。なんだこれは。
少し考えた。どっかで見覚えがあるような。はて。ああ!水団だ。
流石貧乏。作る物もひん・・・いや、これは流石に失礼だやめておこう。
しかし、普通に水団はうまい。作る人間によるが。
もしこれが天野だったら、水団の材料に、白玉を入れかねない。へたをすれば、小豆色している可能性もある。
良し!見た目はクリアだ!さぁ。問題の味は。
お鍋を中心に、並ぶ小皿。ご飯は、時間的に無い様だが、お鍋のボリューム的に問題無し!
さっそく小皿に移そうとした俺。その小皿を先に取り、よそってくれる雀ちゃん。
ちょっと嬉しい、いや凄く嬉しい。これならば味がどれだけ酷かろうと、腹が破れるまで食える自信がある。
ていや、ボブのまでよそわなくていいよ。俺のだけでいいから俺のだけで。
さて、肝心のお味見を。
・・・ん? 味が薄い?・・・んん????
そんな感想を俺よりもボブが先にいった。
「静原サン。味がしませーん。」
その通り、薄いというか味がしない気がしなくも無い。
その言葉に、ちょっと怒ったように答える雀ちゃん。
「ボブ~、味がしないんじゃなくて、
君が普段ジャンクフードばかり食べてるから、味覚がブレイクしているの!」
判りやすく、可愛い舌を出して、それに指を指しジェスチャー交じりで言う雀ちゃん。
確かに、濃い味付けのもの。つまり香辛料とかが味と舌が認識してしまいがちではある。
つまり、素材の味をちゃんと考えて作っている。と言う事になる。
こいつは驚いた。単純に旨い。ではなく、おふくろの味ときましたよ。
得も知れぬ感動と、俺も俺で、味がさっぱり判らないが、旨い!と叫びつつ、全て平らげた。
ボブはだめだったようである。
「おそまつさま。」
そんな旨いといった俺に、笑顔でそういうと、鍋やらを片付けて台所で洗い物をする雀ちゃん。
いや~、これから暫くジャンクフードとかは控えておこうかな~うん。あ。
無理だ、ドラゴンどころか、神々の魂までも打ち砕きそうな料理を作る奴がいた。
観念するしかないか。などと思いつつ、またブサ犬ゴンザレスをいじり倒す俺。
そして、片付けが終わり、またこのブサ犬とじゃれ合う雀ちゃん。
どうしよう。ボブが邪魔で、デートに誘えないぞ? どうする。どうしたらいい!?
そんな悩む俺と空気をボブが更に完膚なきまでに打ち砕く!
「そろそろワタシかえりますネー。」
おう帰れ!良し帰れ。
「じゃ、アタシも帰るね。ちゃんとゴンザレスのお世話しててね~。」
え? ちょっとまって帰らないで待ってお願いかむばーっく!雀ちゃんかむばーっく!!
これが漫画なら背景は西部であろう。間違いない。ってそんな事はどうでもいい!
どうするかえっちゃうよ!いや!今回はボブが邪魔だ。次の機会に賭けよう!
無理矢理納得して、二人を玄関で見送る俺。
はぁ。良し!もう諦めて不貞寝する! 俺的あとがきも無し!もうどうでもいいから!ほんと!
第三話 終了です。 前回の残り物的な話となりました。
でわ、最後まで読んで戴いて有難う御座いました。