魔導団退団保留
10月7日【青の日】
メイドのサラが言っていた「ケンカは夫婦仲のスパイス」とは良くいったものだ。
俺とスミレは昨晩、情熱が迸るような交り方をしてしまった。
仲違いの後は愛を確かめ合うんだね。
スパイスって凄い!
午前中にサイファ魔導団団長と会う事にする。
サイファ団長はエクス城近くの騎士団第二隊の詰所で陣頭指揮をしているとの事。
大変だなぁ。
騎士団第二隊の詰所の受付でサイファ団長への面会を頼んだ。
初めは受付の人に胡散臭い顔をされたが名前を言ったら、すぐに対応してくれた。
一番奥の部屋に通される。
扉が開くとサイファ団長が書類仕事をしていた。
俺とスミレが部屋に入るとサイファ団長は疲れた顔ながら笑顔で出迎えてくれる。
「おはよう、ジョージ君とスミレさん。わざわざ来てもらって悪いわね。落ち着くまで、まだまだかかりそうよ。それでどうする? 魔導団を辞めるのを保留しておくほうが良いかもね」
確かに魔導団を辞める決意をしたのは、次期皇帝陛下にカイト皇太子がなると思っていたからだ。カイト皇太子だと侵略戦争に駆り出されたり、修練のダンジョンに横槍を入れてくる可能性があったからだ。
軍人だと断りにくいから魔導団を辞めるって話だったもんな。今は誰が次期皇帝陛下か分からないから、一時保留にしとくか。軍人である魔導団にいたほうが良い事もあるだろ。
「そうですね。次期皇帝陛下が決まるまで、魔導団を辞める事は保留にしておきます。辞める事はいつでもできますもんね。そういえばザラス皇帝陛下の暗殺の捜査は進んでいるんですか?」
「それがね、カイト殿下とロード王国のバルバン伯爵が罪を擦り付けあっているのよ。カイト殿下とバルバン伯爵はあの日、早い時間からお酒を飲んでいたみたい。カイト殿下は、お酒の席の話を本気にする方がおかしいって。俺は何も悪くないって言ってるわ」
酒が入っていたか……。でもそれだけで免罪符にはならないよな。
「バルバン伯爵は、次期皇帝陛下のカイト殿下の指示に従っただけだって。カイト殿下が皇帝陛下になれば褒美をもらって当然だと言っているの」
カイト皇太子が最高権力者の皇帝陛下になれば、それくらいの横車は押せるか。それでも秘密裏ならまだしも、これだけ公けになったら無理な話だ。
「カイト殿下がジョージに会わせろってうるさいのよ。ジョージは他の皇子、皇女と面会するんでしょ。カイト殿下は最後で良いわ。少し詰所で頭を冷やしておくのが良いと思うから」
面倒だけど他の皇子や皇女に会うか。誰から会うかな。
【迷った時は人に聞け!】俺の座右の銘だ。
「サイファ団長は誰から面会したら良いと思います? カイト殿下しか面識がないため、どうにも分からなくて」
「私も帝室については詳しくないわ。そうね。侯爵家に降嫁して継承権のないパラマ皇女に会うのはどう? 帝室内の話を聞けるかもしれないわ。パラマ皇女には悪い噂を聞かないし」
そうだな。事前に情報を仕入れておく事が大切か早速、パラマ皇女に会う約束を取り付けよう。
修練部の話もしておかないとな。
「少し落ち着くまで、修練部の活動は休止します。よろしいでしょうか?」
「ドラゴンの魔石が入らないから、冒険者ギルドがあまり良い顔はしなそうね。でも今は緊急事態だからしょうがないわ。分かったわ。落ち着いてから活動再開してもらうわ。でもその時はあなた達が魔導団を退団しているかもね。あ、それと以前話していたエルフの里の研究者のライドだけど、すぐに来たいって言ってるわ。いつ来てもおかしくないわね」
そういえばそんな事を頼んでいたな。すっかり忘れていたよ。
今後どうなるか全く分からなくなっている。
予定が立てようがないや。まずは一つずつ片付けていくしかないよな。
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