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パトリシア王女の提案

 パトリシアはベルク宰相を真っ直ぐ見据える。

 綺麗な金髪が軽く靡く。そして可憐な唇からハッキリとした声を出す。


「ロード王国のパトリシア・ロードです。この度はザラス皇帝陛下の崩御、誠にお悔やみ申し上げます。またその崩御にロード王国の貴族が関与している可能性が高い事に我が王であるナルドが心を痛めております。後日、落ち着いてから改めてナルドより謝罪の使者を寄越すと思いますが、まずは私がナルドに代わり謝罪させていただきます。エクス帝国民の皆様、誠に申し訳ございませんでした」


 なんだろう。パトリシアは謝罪をしているのに惨めじゃない。立派に感じてしまう。

 人徳のせいなのか? 俺にはできない芸当だな。


 パトリシアの謝罪を受けてベルク宰相が応える。


「本来ならば、次期皇帝になるものが謝罪を受けるものだが、まだ我が国が落ち着いていない。一時、私が謝罪を受け取らせていただく。それよりパトリシア王女、本題は謝罪ではないのだろう?」


「ご明察の通り、謝罪以外に私には用件がございます。先日、我がナルド国王からそちらのジョージ・グラコート伯爵にロード王国の公爵位への打診がございました。しかしジョージ伯爵の父親は死去されております。また母親はロード王国のサライドール子爵家の一員ですが、ジョージ伯爵より、縁を切られております。正式に公爵位を打診するためには父親代わりの方にもお願いするのが筋と思います。ロード王国ではベルク宰相がジョージ伯爵の後見人と推察しております。どうぞジョージ伯爵をロード王国の公爵位の陞爵を受ける事を許して欲しいと願います」


「なるほど。それでジョージ伯爵と結婚する事になる貴女がエクス帝国まで来たという事ですな」


 な、なんだ!? どうしてそうなる? なんでパトリシアと俺が結婚するの? 俺にはスミレがいるから間に合ってます!

 理解をしていない俺にベルク宰相が優しく説明してくれる。


「ジョージ伯爵。もともと公爵家というのは王家を代替する家なんだよ。王家が断絶した時などに代わりに王になれる家なんだ。簡単に言えば王家の血が必要になってくるんだな。ロード王国の公爵家になるのならば、ロード王国の王家の血を入れないといけない。その為にパトリシアと結婚する事になるんだ」


 なんてわかりやすい説明だ。

 でも公爵になるために結婚するって順番が逆で、何か不純だな。抵抗があるわ。


 俺を見てニコリと笑うパトリシア。


「たぶんジョージ伯爵は私との結婚に反対するでしょう。奥方であるスミレ・ノースコート侯爵令嬢との純愛はロード王国でも有名ですから。ジョージ伯爵は、このような政略結婚に反発してもおかしくないと思っております。ですので私はエクス帝国に長期滞在するつもりです。もっと私を知ってから結婚するかどうか判断してほしいのです。滞在する屋敷は既に押さえております。ジョージ伯爵、どうかよろしくお願いします」


 こ、これは押しかけ女房(仮)みたいなもんではないか!

 俺は恐々(こわごわ)スミレの顔を見る。

 スミレは無表情だ。

 これは貴族の顔のスミレだ。

 そのスミレの顔を見て俺は気が付いた。


 あ、そうか。このままじゃダメなんだ。

 成長しないと……。

 俺は変わらないといけない。いつまでも今までのままでいちゃいけない。

 自分の立場をじっくり考えていかないといけない。


「ベルク宰相。これは私の気持ちだけで考えてはいけない事と推察いたします。後ほど、どのような行動が、どのような事態になるのかご教授ください」


 ベルク宰相は目を細めて優しく俺を見てくれた。


「そうだな。これはエクス帝国とロード王国の未来に関わってくる事柄になる。しっかりと吟味しよう。取り敢えずはパトリシア王女のエクス帝国の滞在は認める事にする。パトリシア王女はどうぞゆっくりとエクス帝国を楽しんでください」


 このベルク宰相の言葉で解散となった。

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