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エクス帝国帰還路

9月27日〜29日

 馬車は一路東に進んでいく。

 日に日にマールとパトリシアは仲良くなっていく。

 マールに良い影響を与えてくれると嬉しいな。

 アイヴィーは俺にご機嫌を取るようになった。

 お調子者で面白い奴だが、アイヴィーの命は風前の灯。そこに無情を感じてしまうな。

 スミレとバルバン伯爵の馬車は相変わらず無言のようだ。

 スミレって鋼の精神力があるよね。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


9月30日【無の日】

 もうすぐ国境だ。

 今日は出発前にザラス皇帝陛下に黙祷を捧げた。

 お葬式にはやっぱり間に合わなかったな。それほどザラス陛下と関わっていないけど、豪快で優しい人だったな。


 国境に入ったところで、エクス帝国第二騎士団の護送車が待っていた。

 ライバーの先触れのおかげだろう。

 バルバン伯爵とアイヴィーを第二騎士団に引き渡す。

 これで馬車を広く使える。


 それなのに何故!?

 俺はスミレとマールとパトリシアと馬車に乗っていた。先頭のロード王国の馬車にはブラサムのみ。最後尾の馬車にはダンのみが乗っている。

 バランスが悪いじゃん。

 座右の銘【人生気にしたら負けだ】を発動!

 まぁ良いか。スミレと一緒だからな。


 マールが俺の顔を見て口を開いた。


「来る時にあなたが言っていた事を少しだけ理解できたわ。確かに戦争は破壊行為で、そこに住んでいる人の生活を無茶苦茶にしてしまう可能性が高いわ。ただ戦争はなくならない。そして戦争で戦功を挙げる事も否定はしないわ。でも戦争を望む事は止める事にする。戦争は無くならないけど無理矢理戦争するのは間違っているかもしれない。まだしっかり自分の中で考えがまとまっていないけど、この事に気が付いただけでも良かったわ。ジョージ、ありがとうね」


 おぉ! マールの考えが変わってきている。

 サイファ団長、やりましたよ!

 それより没落した実家をどうするかだよね。


「マールは没落した実家のボアラム家を立て直したいんだろ? それはどうするの?」


「一応、私がエクス帝国魔導団に入団できた事で、それなりには持ち直しているのよね。もっともっとって、欲が大きくなってるのかな。今回、改めていろいろ考えて冷静になれたわ。家に縛られるのも窮屈になってきちゃった。ジョージを見ていると、とても自由なんですもの。私が馬鹿みたい」


 俺が自由? そんな気持ちはなかったけどな。そうでもないか。

 うるさい親や親戚はいないし、嫌な上司もいない。素敵な奥さんがいて、仕事は揺れる胸を見るばかり。

 もしかして俺っていつの間にか勝ち組なのか!?

 勝ち組ジョージが爆誕していたのか!?


「なんか変な事考えているでしょ! それがあなたの悪いところだわ」


 マールの指摘に少し焦ったが、こういう時こそマナー講義が役に立つ。

 俺は柔和に微笑み、口を開く。


「マールの肩の力が抜けたようで良かったよ。サイファ団長も喜ぶと思うよ。これなら修練のダンジョンに入る許可が降りるかもね」


「え! それは嬉しいわ。戦争を望まなくてもレベルは上げておきたいから。何があるかわからないもんね」


 横で話を聞いていたパトリシアが口を挟む。


「修練のダンジョンって、私でも入る事ができますか?」


「今はエクス帝国の騎士団と魔導団の人だけだね。それも許可制だから厳しいかな」


「それは残念です。ジョージさんの勇姿が見られると思ったのに……」


 スミレの眉がピクっと動いた。

 でも無言だ。


 その後、パトリシアは俺にばかり話を振ってきた。

 俺はルードさん直伝のマナー講義で習った柔和な笑顔で対応していく。

 でも、これって疲れるね。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


10月1日【青の日】

 今日はドットバン伯爵が治める国境の街で宿泊だ。

 明日はハイドン!ハイドン!ハイドンドン!!

 スミレが妖艶になる街!それがハイドン!

 明日の夜の期待で興奮して、なかなか寝付けなかった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


10月2日【緑の日】

 午後の3時過ぎにハイドンに着いた。

 ハイドンを治めているスミレの父親のギラン・ノースコートは謹慎が解けて帝都で行われたザラス皇帝陛下の葬式に出席しに行って不在だった。


 宿泊施設はいつものところを使った。

 いつもは同じ部屋にならない俺とスミレが同室になる事にパトリシアはビックリしたようだ。マールから理由を聞いてパトリシアは顔を真っ赤になっていた。

 そんな些細なことは関係ない。

 夕食をさっさと食べて、湯浴みをして俺とスミレは部屋に篭った。


 パトリシアが俺にモーションをかけて来ているのはスミレでも分かるだろう。さすがの俺でも気が付くくらいだからな。

 スミレが持つパトリシアへの反発が、俺たちの夫婦の営みにスパイスになる。

 より情熱的なスミレ。

 煽情的で蠱惑的。

 まさに小悪魔スミレの爆誕だ!!

 そして俺はまた骨抜きにされた……。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


10月3日【赤の日】

 朝から馬車の中で爆睡予定。枕はスミレの膝である。何となくスミレが勝ち誇っている感じがある。

 パトリシアは特に表情を変えていなかった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


10月4日【黒の日】

 あと少しで帝都に着くな。任務は成功で終わりそうだ。帰ったら魔導団を辞める手続きをしないと。あと騎士団と魔導団と契約を結ぶのか。カイト皇太子はどうなったのかな。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


10月5日【白の日】

 今日の昼の3時にはエクス城に到着できるだろう。そのまま謁見室に入れるように今日は礼服にて移動だ。


 田園風景が少しずつ街の様相に変わっていく。

 やっぱり帰ってくるとホッとするなぁ。俺の故郷は帝都だね。


 3時前にエクス城に到着した。

 馬車から降りて服装の乱れを直す。

 俺を先頭に謁見の間に進む。

 準備が整うまで前室で待たされた。


 どうやら用意が終わったようだ。

 謁見室の前に立っている兵士が謁見の間の扉を開いた。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] ハイドンの由来について >明日はハイドン!ハイドン!ハイドンドン!! がやりたかっただけではないかと思っております
[一言] 容疑者の伯爵は王太子との密約でも当てにしてるのかな。第二王女は美人局なのは分かりきってるけど、今後どういった行動にでるのか……楽しみです。
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