俺のハーレムの道は工事中
午後の馬車の中は俺とダンとアイヴィーになった。
暇だから尋問でもするか。
「おい! 色男! お前はなんでこんな事をしたんだ」
「お前みたいな格好良い男に色男とか言われたくないな。馬鹿にされている感じがする」
格好良い男? 誰それ?
キョトンとしていると横のダンが口を開く。
「ジョージさんの事ですよ。自分の外見が格好良いって自覚がないんですか?」
えぇ!! 俺って格好良いの! マジで!!
そんな事思った事がなかったよ……。
これはハーレム道を進むべきなのか! それが世の中の女性の幸せに繋がるのではないだろうか。
酒池肉林の生活かぁ……。
アリだな!
「ジョージさん。アホ面になっていますよ。スミレさんに殺されちゃいますから変なことは考えないほうがよろしいかと」
そ、そうだよな。俺は既婚者だった。
スミレを幸せにするために生きるって決めたんだった。危うくアイヴィーの魔の手に堕ちるところだったな。
やはり危険な男だ。気を取り直して尋問再開だ。
「アイヴィー。お前はザラス皇帝陛下の暗殺容疑で連行されているんだぞ。このままなら間違いなく死刑だな」
キョトンとした顔をするアイヴィー。その後、顔が青くなり、赤くなって怒鳴った。
「何で俺が死刑になるんだよ! 暗殺なんて知らないぞ! 俺はただ親父に言われたとおりに女性を誑かしただけだ! なんでそれが暗殺になるんだよ!」
うん? コイツ良く分かってないのか? 大丈夫か?
「お前が誑かしたのはキャリン・ラナス。ザラス皇帝陛下のお手付きの侍女だ。そのキャリンがお前らに言われてザラス皇帝陛下を殺したんだ。お前は理解していないのか?」
「俺は知らねぇ! そんな大それた事なんて考えた事もねぇよ! 全部親父がやった事だろ!」
ふ〜ん。キャリンに暗殺指令を出したのはバルバン伯爵だったのかな? それにしてもコイツの認識は甘い。
「お前がどこまで暗殺に関わっているのかはエクス帝国でじっくり調べられる事だろう。ただな、お前はバルバン伯爵の息子だろう。たぶん連座制で一族郎党皆んな死刑になると思うぞ」
アイヴィーの整った顔が、また青くなった。そのまま白く変わった。
面白いなコイツ。
「なぁ! 俺を見逃してくれよ! 逃してくれ! 暗殺なんて知らないし、これからは平民として静かに暮らすからさ……」
最後は細い声になっていた。
残念ながらそれはできない話だな。一国の皇帝が殺されたんだ。間接的に関与しているアイヴィーに逃げ道は無いな。
コイツを尋問しても無意味だな。
もう飽きた。寝るとするか。
俺とダンは馬車に揺られながら目を瞑る。
馬車内はアイヴィーの啜り泣く声が響いていた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
宿泊施設では、俺とスミレが交代でバルバン伯爵とアイヴィーの見張りをした。
アイヴィーはずっとブツブツ言っている。
ヤバい兆候だな。自殺されないように注意しないと。
すこしでも夢を見せておくか。
「アイヴィー。エクス帝国の取り調べで自分の知ってる事を洗いざらい喋るんだな。俺からも情状酌量を頼んでやるからな」
目を見開くアイヴィー。
「本当か、本当なのか!」
「俺は嘘は嫌いだ」
嫌いなだけでつくけどね。
「分かった。お前の言う通りに洗いざらい喋るよ」
よし、これで少しはアイヴィーに希望が出ただろ。自殺の可能性が格段に下がったな。
それに引き換えバルバン伯爵は随分と余裕のある顔をしている。何か勝算でもあるのかな? まぁ俺には関係ないか。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
部屋割りは
①俺とスミレとバルバン伯爵とアイヴィー
②ダンとエクス帝国の馭者二人
③マールとパトリシア
④ブラサムとロード王国の馭者
マールとパトリシアが意気投合していた。もはや親友並みの距離感だ。
パトリシアはマールにロード王国についていろいろと説明したようだ。マールはパトリシアに俺の話をした様子。
まぁ良く分からんが仲が良い事は善き哉。
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