信書を読むナルド国王
9月17日【白の日】
そう今日は白の日だ。
いつもは休みの前の日で喜ぶ俺がいた。最近は曜日感覚が無くなってきているなぁ。いろいろあったからか。
でも明日はハイドンでスミレとムフフ……。
これでテンションが上がらないはずが無い。
ニヤニヤが止まらない俺に、無言のマール。そしてスミレは一心不乱に魔力ソナーを使っている。
傍から見たら怪し過ぎる馬車の中だった。
今日も泊まるところは前と一緒である。
伯爵家が治めている街で、街道沿いであるため結構栄えている。
今日泊まる伯爵の屋敷に着いた。
街を見てポツリとマールが口を開く。
「皆んな一生懸命に生きているんだね。こんな事にも気が付かなかった……」
おぉ!
マールらしくない言葉だ。
少しは視野が広がったのか?
「でも、でも……」
俺はマールの言葉をただ聞いていた。
焦らす必要はないだろう。
自分で答えは探すべきだ。
「ゆっくり考えなよ。答えはすぐに見つける必要はない。どうせエクス帝国は喪に服す事になるから侵略戦争は来年の4月までは無いからさ」
俺はマールの肩をポンと叩いて馬車を降りた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
9月18日【無の日】
ハイドンでは領主のギラン・ノースコートが屋敷で謹慎中だ。
ザラス皇帝への暗殺の関与が晴れるまで大人しくしているそうだ。
俺達はハイドンの街の宿泊施設に泊まった。
俺は今日という日を忘れない。
そう俺はスミレと同室なのだ。
その夜のスミレの積極性に俺は度肝を抜かれた。
俺の頭には【昼は淑女、夜は娼婦】の言葉が浮かんだ。
俺は完全に骨抜きにされた。
もう別腹なんて必要ない!
やっぱりスミレは最高だーー!!
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
9月19日【青の日】
ロード王国の国境から一番近い街に着いた。
そうドットバン伯爵が治める街だ。今回はドットバン伯爵はこの街に来ていない。ドットバン伯爵も大人しくしているのかな?
今日はエクス城で臨時貴族会が行われているはずだ。
何か進展はあったかな?
俺達は明日国境を越える。
やはり緊張感が高まるな。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
9月20日【緑の日】
前に来た時と違ってロード王国側の検問をすんなり通れた。検問の兵士は俺の顔を覚えていたようだ。
ロード王国の検問所からは王都に向かって早馬が走り出した。
こちらも急がないとな。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
9月21日〜24日
結構な強行軍でロード王国内を進む。
宿泊施設では貴族がやってきて、俺たちが来た目的を探ろうとしてくる。しかし全てベルク宰相の信書を届けるためだと言って誤魔化してきた。
そして24日の夕方に俺達エクス帝国捜査団はロード王国の王都に到着した。すぐに日が落ちたため、宿泊施設に入る。
明朝に王城に行く旨を宿泊施設の従業員に伝達に行くように頼んで俺達は休んだ。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
9月25日【青の日】
正装に着替えてロード王国の王城に向かう。馬車がロード王国の王城に入っていく。
相変わらず立派なお城だな。
前回と同じように馬車を止めるスペースに馬車を止め、そこから歩きだす。
石畳の通路が洒落てるね。
今回は兵士を伏せていないみたいだ。魔力ソナーに反応は無い。
少しだけ緊張がほぐれた。
ロード王国の案内人の後に続いて歩く。謁見の間はまだ工事中らしい。今回も以前案内された大きな会議室に通された。
会議室に入るとナルド国王の他に10名程の貴族が既に待っていた。
ナルド王が立ち上がり、俺たちに挨拶をする。
「遠路はるばるここロード王国へようこそ。以前会っているな。ドラゴン討伐者。改めて私はロード王国のナルド王だ。この度はどの様な用件で来られた?」
この捜査団の団長は俺か。取り敢えず挨拶だな。
「エクス帝国のジョージ・グラコートです。本日はベルク宰相からナルド国王に信書を渡すように預かってきております。ご確認の程、よろしくお願いします」
そう言って隣りのダンに信書を渡すように促す。ダンは優雅な立ち振る舞いで信書をナルド国王に渡す。
封を切り信書を読んでいくナルド国王。
読み進めるうちにドンドン顔が青褪めていく。読み終えたナルド国王が震える唇を開いた。
「こ、これは本当の事か? 本当なのか?」
俺はダンに目線を送る。
心得たとばかりに返答するダン。
「私はベルク宰相の部下のエクス城で文官をしているダンと申します。私から説明させていただきます。この情報は全て、エクス帝国に軟禁されているエル・サライドールからもたらされています。本当かどうかはわかりません。その為、我々はロード王国まで調べにきました。ロード王国の王家に取っても、慎重に動かないと取り返しのつかない事になりそうです」
確かにロード王国は王家打倒の話だからな。クーデターの話だもんな。
ダンが話を続ける。
「信頼できる人だけで情報を共有するべきだと思います。そしてまずはパウエル・サライドールを王城まで呼び寄せるべきでしょう。問題の会合がサライドール家で行われたのですから、本人から聞くべきと思います」
苦い顔のナルド国王。何か不都合でもあるのかな?
そのナルド国王の顔を見ても、気にせずダンは話を続ける。
「パウエル・サライドールはロード王国の将軍でしたね。ロード王国の軍を統括しているわけですか。今の求心力が落ちている王家にパウエル・サライドールを詰問するのもキツいようですね」
苦々しく口を開くナルド国王。
「悔しいが、全くもってその通りだ。ここでパウエル将軍に反旗を翻されれば、ロード王国は終わりになるかもしれない。内戦に突入するだろう……」
ダンがニヤリとする。
「ナルド国王。確かにパウエル将軍が反旗を翻せば内戦に突入するでしょう。ただし、今は違います。というより今しかないんです」
ダンはそう言って俺とスミレを見た。
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