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ザラス皇帝の勅命

 10時頃に貴族が集められたホールに軽食が用意された。

 スミレと話し合って余裕ができた。おかげで軽食の味を楽しむ事ができる。

 さすが皇室の料理人だな。バキに勝るとも劣らない。


 11時頃にベルク宰相がホールに現れた。

 憔悴した顔をしている。

 どうやらこの事件の陣頭指揮を取っていたようだ。

 ベルク宰相はホールの壇上に上がり、声を大きくする魔道具を手にした。


「諸君。既に聞いた事だと思うが、改めて説明させていただく。昨夜、ザラス皇帝陛下が心臓をナイフで刺されて殺された。実行犯と思われるラナス男爵家の三女のキャリンはエクス城から200m離れた路地裏で死体で発見された。現在、キャリンの背後を調べている最中だ。調査の責任者はサイファ魔導団団長が行っている。皆んなも何か知っている事があったなら騎士団か魔導団の第二隊に知らせてほしい。このような時だからこそエクス帝国内で結束しないといけない。それを良く理解してほしい。特にジョージ・グラコート伯爵は軽はずみな行動を取らないように」


 あら、バレてらぁ〜。さすがベルク宰相。


「今日はザラス皇帝陛下の勅命の内容を発表する。これは何かがあった時に既に手を打っておいたものだ。既に効力が発揮されている勅命だ。これを発表する機会が訪れた事は悲しい事だが……」


 珍しくベルク宰相が感情を表している。

 とても辛く、悲しみの感情。

 ザラス皇帝陛下への想いは俺には計り知れないものがあるのだろう。


「それでは発表する! 帝都の東で新たに見つかったダンジョンである修練のダンジョンは、ジョージ・グラコート伯爵に与えるものとする。これはジョージ・グラコート伯爵が平民となっても、所有権を保持するものとする。このジョージ・グラコート伯爵の所有権をエクス帝国は未来永劫守る事に尽力する。以上だ」


 修練のダンジョンを俺にくれるの!?

 なんで?


「なんだ? あまり喜ばないな?」


 ベルク宰相が俺に話しかける。

 喜ぶところなのか?

 個人所有のダンジョンなんて聞いた事ないから、どうなるのか分からん!

 憔悴した顔であるベルク宰相がニコリと笑う。


「修練のダンジョンはジョージ伯爵なら簡単にドラゴンの魔石を得られるだろう。君から見たら金のなる木じゃないか? 簡単に他の土地に移住する気が無くなるじゃないか」


 確かにドラゴン並みの魔石は他のダンジョンだと、今の最高記録より先に進まないと得られないよな。

 それにそこから運ぶのすら大変だ。確かに地下4階で出るドラゴンの魔石は金の成る木だよ。


「それにジョージ伯爵に修練のダンジョンを与えれば、君の意にそぐわない人のレベルを上げる事はしないだろ。人は過剰な戦力を持つと使いたくなるんだよ。ジョージさんなら歯止めになってくれるだろ?」


 なるほど。

 俺に修練のダンジョンを与える事で、俺を帝都に定住させる事ができ、帝都の安全度は格段に上がる。

 そして過ぎたる戦力をエクス帝国が持たないように調節するって事か。

 わざわざ俺が平民になってもと、断りを入れているのは、俺が伯爵を返上して、魔導団を辞める事まで考慮しているよ。


 頭良いなぁ。

 誰が考えたんだろ。

 それもザラス皇帝陛下が崩御される前から効力を発揮していたようだ。

 先の先まで読んで手を打っているよ。

 たぶんベルク宰相なんだろうな。


「ザラス皇帝陛下の葬儀は9月30日に執り行う。これよりエクス帝国は喪に服す。期間は来年の3月末日までとする。その後、新皇帝陛下の即位式を行う予定だ。新皇帝陛下が即位されるまでの執務は非才ながら私ベルクが執り行う」


 そこで1人の貴族が声を上げる。


「皇帝陛下の崩御後の執務は皇太子であるべきでは無いのですか?」


「通常ならばその通りだ。ただし今回の場合は違う。現在、カイト皇太子はザラス皇帝陛下の殺害の容疑がかかっている。身の潔白が明かされるまでは謹慎となる。また、この謹慎はゾロン騎士団団長とタイル・バラス公爵、ギラン・ノースコート侯爵が対象となっている」


 どよめくホール。

 ホールが静まってからベルク宰相が説明を続ける。


「あくまでも容疑だ。最近の侵略戦争推進派と反対派の(いさか)いは皆も知っているだろう。ザラス皇帝陛下はロード王国への侵略戦争に反対だったからな。ザラス皇帝陛下が殺害されれば疑われて当たり前だ。やましい事がなければ、すぐに謹慎は解かれるだろう。この処置は私とサイファ魔導団団長が提案したものだ。謹慎する者に了解は得ている」


 ベルク宰相はホールを見渡し、他に意見が無いか確認する。

 特に声は上がらなかった。

 ベルク宰相は本当に疲れ切った顔をしている。最後に力を振り絞って声を出す。


「5日後の9月19日に臨時貴族会を招集する。その時に続報を知らせる。今日は以上だ。あと、ジョージ・グラコート伯爵には少し話があるから私に付いてきてくれ。奥方も一緒で構わない」

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― 新着の感想 ―
[気になる点] ジョージが皇帝本人に忠誠を誓っているのは周知の事実だったから、黒幕は他国だろうなあ…… このあと最初にジョージに接触してくる国が怪しいかな
[一言] やっぱ皇帝は有能やったんやなぁ この手を打たれたら最高戦力が帝都から居なくなる可能性を大幅に減らせるわ・・・
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