俺は最低だがスミレは最高だ!!
9月8日〜10日
魔導団修練部の業務は恙無く進んでいった……。
と言いたいところだが、俺が暴走した。
いやこれは漢の浪漫だ!
俺はスミレに隠れてノースコート侯爵家の御用達商会のカスタール商会に会っていた。
カスタール商会は先日、結婚式のドレスを作るためにスミレの身体のサイズを測っている。
俺はスミレのサイズに合ったビキニアーマーを購入したのだった。
それも際どいものばかりを10着ほど。
俺は修練のダンジョンに入るなりスミレにお願いした。
それは必死にお願いした。土下座するくらいの勢いでお願いした。
最初は激しく抵抗していたスミレだが、俺の熱意に負けて俺が用意したビキニアーマーを着てくれた。
ハッキリ言って防御力はゼロである。ただ、男性の眼を楽しませる為の防具である。
俺はビキニアーマーを着たスミレを見た。
恥じらいのためか頬を赤くしているスミレ。
そのため身体の白さが引き立っている。
豊満な胸に引き締まったお腹。
プリッとしたお尻にしなやかに伸びる脚。
揺れる銀髪のポニーテール。
揺れるスミレの胸。
揺れる俺の脳内。
俺はおかしくなりそうだ。
俺は随喜の涙を流した。
俺は遂にやった!
俺は漢としての勝利者だ!
握り込んだ拳から血が出るほどの感動である。
俺はルンルン気分でオーガやドラゴンを倒しまくった。
勢い余ってスミレを押し倒してしまったのはご愛嬌だ。
魔力ソナーでドラゴンの位置を把握しながら修練のダンジョンの地下4階の草原で事を始めてしまう。
任務中と拒否するスミレに興奮してしまった俺。
どこまでも続く草原の開放感も快感を増した。
こりゃ癖になりそうだ。
終わった後はスミレにこっ酷く怒られたけど……。
それでも俺は胸を張って言える!
俺は最低だがスミレは最高だ!!
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
9月11日【白の日】
午前中はスミレのビキニアーマーを堪能してドラゴン討伐。
午後からはサイファ団長への報告会だ。
魔導団団長室に入るとサイファ団長の眼の下のクマが酷くなっている。大丈夫かな?
「今週の報告に参りました」
「あら、もう週末なのね。最近は曜日感覚が無くなっているわ。それで何か問題はあった?」
さすがにスミレにビキニアーマーを着せてドラゴン討伐をしているとは言えない。また勢い余ってスミレを押し倒した話などできるはずも無く……。
「問題無く任務を遂行しております。午前中のドラゴン討伐では平均4体のドラゴンを倒しております。たまに3体の時もありますが」
俺の理性がスミレの魅力に負けると、ドラゴン倒すのが3体になっちゃうんだよね。今後のためにも3体の時もあると言っておかないと。
「あら、そうなの。でも怪我が無いようで良かったわ」
「午後からは騎士団か魔導団の隊員を一人連れて修練のダンジョンに潜っております。順調にレベルアップしております。こちらも問題は生じておりません」
こちらは本当に問題が無い。順調で怖いくらいだ。連れて行く隊員もレベルが上がるし、オーガの魔石で臨時収入になるので喜んでくれる。感謝ばかりされている。
疲れた顔だけじゃなく、疲れた声も出すサイファ団長。
「そう、それなら良かったわ。来週もお願いね」
サイファ団長は大丈夫なんだろうか? 疲れ過ぎだよな。
「サイファ団長は大丈夫ですか? 随分とお疲れの様子ですが」
「エクス城での派閥争いが加熱していて手がつけられないのよ。侵略戦争推進派と反対派のね。ロード王国が貢ぎ物を献上する事になってザラス皇帝陛下はどちらかといえば反対派になっているわ。それに焦った推進派がカイト皇太子を煽っているのよ」
ザラス皇帝陛下が反対派に傾くのも分かる。ロード王国の王家は今回の外交で国内的な求心力が落ちている。そこに物、金、人等の貢ぎ物をエクス帝国に献上するとなると、エクス帝国との国力の差が広がってしまう。時をかければ勝手に自滅するか、エクス帝国に吸収されていくだろう。
分かりきっている事なのに……。今は絶対違う。まだ国力が残っているロード王国に侵略戦争を仕掛けるメリットがないよな。
「どう考えても、今侵略戦争するメリットは無いと思いますけど。年々ロード王国の国力は落ちていきますよ。侵略戦争するにしても今じゃないと思いますけど」
「そうなのよね。皆んなそれは分かっているの。ただ戦功が欲しい貴族もそれなりにいるのよ。あとは武力での強行派ね。まどろっこしい事は止めてロード王国なんか滅ぼしてしまえって。厄介な事にカイト皇太子がそのタイプかも」
カイト皇太子か。大陸制覇って言っていたもんな。壮大な夢といえば良いのか、無謀な挑戦といえば良いのか。
俺とスミレが協力すれば可能性はあるかもね。しないけど。
「あまりカイト皇太子もザラス皇帝陛下と対立すると皇太子の地位が危ないんじゃないですか?」
「他の皇族を見るとね……。カイト皇太子が一番まともなのよ。それよりジョージ君とスミレさんは侵略戦争について、旗色を鮮明にするの?」
えっ!
俺とスミレは完全に侵略戦争反対派じゃん。皆んな知ってるでしょ。
「俺は侵略戦争反対派ですよ。皆んな知ってる事だと思いますけど」
「ジョージ君とスミレさんの行動を見れば分かると思うんだけど、諦めきれない推進派もいるのよね。スミレさんは侵略戦争推進派のノースコート侯爵家の娘だったから。一度エクス城の貴族会議でしっかりと旗色を鮮明にしたほうが良い感じかな」
貴族って面倒くせぇ! でも侵略戦争反対を言ってくるだけなら問題ないか。
「了解致しました。次回の貴族会議に出席して俺とスミレは侵略戦争反対と言ってきます」
「それじゃ週明けの13日に臨時の貴族会議があるから出席にしておくわね」
こうして俺は、いつも欠席している貴族会議に出席する事になった。
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