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カイト皇太子の野望

 俺たちは一度屋敷に帰宅して、旅の埃を落としてから再度エクス城に出向いた。

 俺は魔導団の制服、スミレは赤のイブニングドレスを着ていく。【雪花】を置いていかないといけないスミレは少し不服そうだ。

 スミレさん、パーティに刀は必要ないでしょ。でも俺は一応【黒月】を持っていくけどね。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 エクス城のパーティホールには既に大勢の人がいた。

 陛下は軽いパーティって言ってたけど、そんな事ないや。

 少し眺めていると分かる事がある。

 とても喜んでいる人と、イマイチな人。

 たぶん喜んでいるのが戦争反対派。イマイチな人は侵略戦争推進派なんだろうな。


 恨みを買わないように大人しくしてようか。

 隅っこに移動したところでサイファ魔導団団長に捕まった。


「あら、本日の主役がこんな隅にいてどうするの? 外交団の任務お疲れ様ね」


「ありがとうございます。あまり目立ちたくないから隅っこにいるんです。無駄な恨みは買いたくないですからね」


 サイファ団長が声を(ひそ)める。


「今更だわ。侵略戦争推進派はジョージ君を恨んでいるでしょうね。ジョージ君がロード王国への侵略戦争に前向きなら既に全面戦争でしょうから」


「侵略戦争をしたいなら、それを陛下に上奏して許可をもらえば良いんですよ。それがダメなら諦めて欲しいです。俺には関係の無い話ですから」


 意味ありげな微笑みを浮かべるサイファ団長。


「本人がそのつもりでも周囲はそうは思わないから困るわね。巻き込まれないように注意しておきなさい。明日からはジョージ君とスミレさんは一週間休みね。ちゃんとスミレさんを大事にしてあげてね」


 周囲が騒ぎ出した。

 壇上を見るとザラス陛下とカイト皇太子が登場してきた。ザラス陛下が中央に近づくにつれ、騒めきは静かになっていく。

 静寂が包むパーティホール。

 ザラス陛下が声を上げる。


「この度はエクス帝国の申し入れをロード王国が受け入れる事になった。ロード王国はこれから、物、金、人等の貢ぎ物をエクス帝国に捧げる事になる。これによりエクス帝国は空前絶後の発展を遂げる事になるだろう。この偉大な扉を開いた今回の外交団は歴史に名を残す事になろう。今夜はその偉業を称え、大いに楽しもう。それでは乾杯!」


 グラスの中のシャンパンを飲み干すと、パーティホールは盛大な拍手に包まれた。

 へぇ〜。こんなに凄い偉業だったんだ。それでも侵略戦争で戦功を挙げたい人には恨まれるんだろうな。やはりあまり他の貴族と関わらないほうが良いか。


 スミレが凛として立っていると近づいてくる人が減る。近寄り難い雰囲気があるんだね。どうしても自分の心が薄汚れていると感じちゃうのかな? こりゃ楽だ。


 そんなスミレシールドを簡単に破ってくる人もいる。カイト皇太子だ。


「外交団の任務、ご苦労だったな。大活躍だったみたいじゃないか」


「いえいえ、俺はベルク宰相の指示に忠実に従っていただけです。全てはベルク宰相の手柄ですよ」


「どうだ。俺と一緒にロード王国を攻め滅ぼさないか? ジョージとならば大陸制覇も夢ではない」


「ご冗談を。俺にそんな器はありませんよ。戦後復興なんて出来ませんから」


「政治は俺に任せれば良い。ジョージはただ目の前の敵を倒すだけだ。それに岩属性魔法を使えば、戦後復興に役に立つぞ」


「俺は今の生活に満足しています。無理に血を流す必要は無いと考えております。せっかくのお誘いですが、お断りさせていただきます」


「気が変わったら、いつでも俺に言ってこい。悪い様にはしないからな」


 言いたい事は全て言ったようで、カイト皇太子は背中を向けて離れていった。

 カイト皇太子の野心は大陸統一かぁ。なかなか壮大な野望だな。


 エクス帝国は大陸の中央東寄りに位置している。

 西にはロード王国。

 北と東には小国から中規模の国家が群雄(ぐんゆう)割拠(かっきょ)している。

 そして南には大国のエルバド共和国がある。

 エルバド共和国は他の大陸と交易を行なっており経済、軍事、共に大陸最強と言われている。


 負けるとは思わないが大陸統一となると戦争ばかりの人生になりそうだ。そんなのはゴメンだね。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 俺とスミレはパーティの途中で抜け出して屋敷に帰った。

 もう、俺の妄想が爆発寸前だったからだ。使用人との挨拶もそこそこに湯浴みをする。

 今晩はスミレとの戦いだ。

 めろめろにしてやる。

 俺は期待を胸に寝室に繋がる扉を開けた。

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