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ロード王国の返答

8月18日【無の日】

 妹のエルの相手は騎士団のライバーと魔導団のカタスに任せる事にした。

 無言を続けるエルに付き合うのに辟易(へきえき)していた。手錠をされている18歳の女性を男性二人に任せるのは倫理的にどうかと考えたがしょうがない。


 せっかくの休みの無の日なのに、ロード王国の返事を待つために待機だもんな。さすがに王都は出歩けないだろうし。


 暇だからスミレとイチャイチャしたいのに、スミレは仕事中と言って相手をしてくれない。

 しょうがないので【魔法体系概論】、【魔法史】、【呪文解析概論】の教科書を読む。

 もう結構、何回も読んだな。そろそろもう少し上のレベルの本でも理解できそうだ。


 妹のエルはライバーとカタスには心を開いたようで会話をしているようだ。

 ()せぬ……。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


8月19日【青の日】

 今日はロード王国がベルク宰相の要求について返答する期日だ。

 ロード王国の王城に置いてきた文官から事前情報が流れてきた。議論は紛糾しているようだ。


 しかしどうやら毎年エクス帝国に貢ぎ物を献上してエクス帝国のご機嫌を取る事にしたみたい。何を、どのくらい、どのようにして献上すれば良いのかを文官に確認を取っていたとの事。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 午後の2時になったのでロード王国の王城に馬車で向かう。

 妹のエルは手錠をされながら連れて行く。

 俺の魔力ソナーに200名規模の統率された軍団が引っかかった。馭者に馬車を止めてもらってベルク宰相の指示を仰ぐ。


「なるほど。たぶんロード王国の決定に納得のいかない奴等だろう。問題ない。全員蹴散らしてしまえ」


 なかなか非情な命令を簡単に出してくれる宰相だ。

 ここでも俺の処世術が働く。


「了解致しました」


 すぐに呪文の詠唱を始めた。


静謐(せいひつ)なる氷、悠久(ゆうきゅう)の身を矢にして貫け、アイシクルアロー!】


 魔力ソナーと連動させて200本規模のアイシクルアローをコントロールする。

 四方に飛んでいく氷の矢。

 数秒後には俺の魔力ソナーから200名規模の集団の反応が無くなった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 ロード王国の王城に着いた。

 今回案内されたのは大きな会議室だ。

 謁見の間は現在、工事中で使えないそうだ(おれが床に穴を開けたからね)。


 会議室にはロード王国の上層部が集まっていた。

 数人が驚きと苦虫を噛み潰したような顔をしている。

 間髪入れずベルク宰相が発言する。


「先程、200名規模の集団に襲われそうになったが、それがロード王国の返答と思って良いのかな?」


 ガタっと椅子を倒して立ち上がるナルド国王。


「それは違う。ロード王国はエクス帝国に毎年貢ぎ物を送る事に決定した。襲撃犯はその決定に納得がいかなかった連中が勝手にやった事に違いない」


「それならばしっかりと犯人を特定して処罰をしておくように。処罰後は詳細をエクス帝国の私の元まで報告お願いします。あとはこの娘の処遇についてだ」


 そう言って手錠をされたままのエルを前に出す。


「このエル・サライドールは国境地帯でドットバン伯爵の領軍を(あや)めています。また先日、サライドール子爵家の屋敷にて我等に害を為そうとしました。そこにおられるパウエル・サライドール将軍より好きに処罰して良いとの言葉を頂いております。ロード王国としても、それで問題はないか確認したい」


「特に問題はない。好きにしてくれ」


 ナルド国王は既にエル・サライドールについては興味が無いようだ。


 ベルク宰相が俺の目を見る。

 エルとは血が繋がっているが、ただそれだけだ。俺は妹には思い入れが無いんだ。一緒に住んでいた時から会話はほとんど無かった。エルはずっと母親と一緒にいて、俺を避けている感じがしていた。今は何か嫌われているし……。


「ベルク宰相に一任いたします」


 ベルク宰相は一つ頷いて口を開いた。


「エル・サライドールはエクス帝国に連行して、エクス帝国の法に則って処罰します。貢ぎ物の詳細については後日エクス帝国から担当者を送ります。その者と話し合ってください。我々は明日から帰還する予定です。今日のような襲撃が起きないように、今日中に速馬にて各街に通達しておくようにお願いします」


 これで外交団の仕事は終了だ。

 あとは無事に帰るだけだね。会議室には納得のいっていない顔の貴族がそれなりにいたけどね。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


8月20日【緑の日】

 宿泊施設で朝食を食べてから出発した。

 馬車は4人乗りのためエル・サライドールはベルク宰相の馬車か、俺たちの馬車に乗るしかない。人数的には俺の馬車なんだろうが、喋らない相手と長い間いるのは胃が痛くなる。そこでベルク宰相が俺たちの馬車に同乗する事になった。


先頭の馬車・・・俺、スミレ、ベルク宰相

2番目の馬車・・文官4名

3番目の馬車・・ライバー、カタス、エル


 元々ライバーとカタスはベルク宰相の護衛だが、ベルク宰相は俺とスミレが一緒だから問題無い。

 俺はベルク宰相と雑談を楽しみながらロード王国の王都を(あと)にした。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


8月21日〜8月24日

 ロード王国内では俺たちの馬車は遠巻きにして避けられていた。通達がしっかりと行き渡っているのだろう。

 でも腫れ物扱いだよね。


 行きと違って帰りは威嚇という名の破壊行為を行わないため順調な旅程になった。

 少し遠まわりになったが漁港がある街に寄って魚料理を食べたり、温泉がある街に行き、ゆっくりさせてもらう。

 また、サイファ団長と屋敷の皆にお土産を買う事ができた。

 ベルク宰相が気を遣ってくれているんだよな。本当に良くできた人だよ。


 それにしてもエルは少し可哀想だな。ずっと魔導団特製手錠をしたままだ。これじゃゆっくり楽しめないよな。


 でもエルの処罰はどうなるんだろう? エルはドットバン伯爵の領軍を70名殺害している。エクス帝国側から見たら大量殺人者だ。やっぱり処刑とかになるのかな?


 まぁ、なるようになるか。ベルク宰相に任せちゃえ。

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