盛大なお披露目会
結婚式の儀式は終了した。
後はお披露目会だ。
お披露目会に出席する参加者が先に神殿に隣接されたホールに入っていく。その光景を見ながら俺はスミレに声をかけた。
「本当にありがとう。感謝の言葉しか頭に浮かばないや。本当にありがとう」
「何を言ってるのジョージ。私もあなたに感謝しているわ。ジョージとなら私は幸せになれると確信しているんですもの。そろそろ行きましょうか?」
「そうだな。皆が待っているもんな」
スミレは俺の腕を取る。俺とスミレは腕を組んでホールに向けて歩きだした。
ホールに入ると歓声が上がった。
新郎、新婦の席が真正面に見える。
凄い、皆が笑顔でお祝いをしてくれている。
こんな花道を俺が歩けるなんて……。
人生はわからないもんだな。
新郎と新婦の席に座ると乾杯の流れになる。
なんとザラス皇帝陛下が乾杯の音頭を取るようだ。
「今日はこのエクス帝国において喜ばしい日である! この結婚により、ドラゴン討伐者である英雄のジョージ・グラコートが帝都に完全に居を構える事になった。これは帝国民全員の安全性が高まる事につながる。今後、エクス帝国の発展とグラコート伯爵家の発展が同じ道である事を願って乾杯!」
俺ってそんなに凄い人間になってしまったのか?
それでも参加者は大歓声だ。
早速、ザラス皇帝陛下とカイト皇太子とベルク宰相が俺の席に近づいてきた。
「おめでとう! ジョージ、スミレ。これからもエクス帝国のために精進してくれ。今日は仕事が溜まっているから、これで失礼するぞ。2人の末長い幸せを願っている」
ザラス皇帝陛下はさらりとお祝いの言葉をかけてカイト皇太子とベルク宰相を引き連れてホールを出て行った。
ありがたい言葉だったなぁ。
お偉方がいなくなったため、参加者は緊張が解けたようだ。昼間っから始まる乱痴気騒ぎ。狂騒が広がっていく。
俺は初夜のためにお酒は控えめにしている。
俺と懇意になりたい貴族がたくさん挨拶にやってくる。
覚えられないや。
貴族の挨拶が一段落着いたところで騎士団と魔導団の人が顔を出すようになる。
その時に明後日から一緒に行く騎士団のライバーさんと魔導団のカタスさんと軽く顔合わせができた。やはり二人共性格が良さそうな人だった。
もうそろそろ終わりかなっと思った時にショートカットの髪型の女性が近づいてくる。
「ジョージさん、ご結婚おめでとうございます」
あ、この子、前に服を選んでくれたリンさんだ。魔導団第一隊所属だったよな。
リンさんは急に俺に耳打ちをしてきた。
「ジョージさんは伯爵ですから第二夫人も持てますよね。私なんかどうですか?」
俺はその言葉に驚いているとリンさんはウインクをして去っていった。
スミレは他の騎士団の人と会話をしていて気が付いていない。俺のせいでは無いが、何故かスミレに悪い事をしている気分になってしまった。たぶん、またリンさんに揶揄われたんだな。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
夕方になりお披露目会は終了した。
スミレと二人で屋敷に向かう。
先に屋敷に戻っていた使用人達は俺とスミレを出迎えてくれた。
「おかえりなさいませ! 旦那様! ようこそ! 奥様のスミレ様!」
あれ? 旦那様なんて初めて言われたぞ。
不思議に思っていると執事長のマリウスが一歩前に出て説明してくれた。
「今まではジョージ様の呼び方が我々で統一されておりませんでした。これからは旦那様で統一させていただきます。またスミレ様は奥様で統一させていただきたいと思います」
おぉ! なんかグラコート伯爵家の当主って感じだな。
「軽い夕食の準備がしてあります。その後湯浴みをしてください。寝室は用意できております」
ゴクリと息を飲んでしまった。
寝室の用意って言われると意識しちゃうな。
隣りでスミレが少し固まっていた。スミレも俺と同じで意識したようだな。
俺がリードしないと……。でも経験無いしな。
夕食の味は緊張で全く味がしなかった。ごめんねバキ。
寝室は俺の部屋からとスミレの部屋から入れるようになっている。
湯浴みをして俺の部屋から入れる寝室のドアを開ける。
まだスミレは来ていない。
ベッドに腰掛けて水差しから水を注ぐ。一気に水を飲み干した。
期待と不安が入り混じった感情。
魔力ソナーが乱れている。魔力制御が上手くいってないんだな。
そして遂にその時が来た。
スミレの部屋から続く寝室の扉がゆっくりと開いていく。
それはきっと大人になるための扉なんだろう。
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