渾身の言葉
3月27日【赤の日】
朝からポーラを私室に呼んだ。
何故呼ばれたかわからないポーラは少し緊張している。
「ポーラに頼みたい事があるのだけど」
「なんでも言ってください。私にできる事ならばなんでもさせていただきます」
食い気味に返事をするポーラ。
「ジョージの事なんだけど、ポーラに是非一肌脱いで欲しいのよ」
「ジョージ様の為なら、なんでもさせていただきます! できない事なんてありません!」
一瞬のうちにポーラの目の輝きが変わった。これなら大丈夫だろう。
「ポーラには本当の意味で一肌脱いで欲しいの」
私のお願いを聞いたポーラは顔を赤らめてしまった。
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今日はエルバト共和国外交使節団代表のラバル・スウィットが交渉に来ている。
そろそろ交渉が終わる頃合いかと思っていたらジョージから呼ばれた。
何故かエルバト共和国使節団のミランダ・バースに威圧をかけるように頼まれた。
初対面の相手にあまり気乗りしなかったが、ジョージの横でダンが頷いていたので必要な事なんだと理解した。
全くミランダという女性は何をやらかしたのかしら?
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夕食の後にダンとジョージと話し合う事になった。
ダンからエルバト共和国との契約について説明される。
なるほど、結構エルバト共和国使節団はやらかしてしまっているわ……。
エルバト共和国にはきっちりとグラコート伯爵家を理解してもらう必要があるわね。
それに8月にエルバト共和国に出向くのは楽しみだ。
「素晴らしい提案ですね。今からワクワクします」
私の言葉にダンが申し訳なさそうに口を開く。
「しかしそれまでにドラゴンの魔石を最低4,000個必要になってしまいました。一時の感情でこのようになってしまい申し訳ございませんでした」
「何を言っているの。グラコート伯爵家を侮った相手には目にものを見せるのが我が家の家訓です。誉めこそすれ、叱責などするわけがないです。ダン、本当に素晴らしい提案です。ジョージがダンに約束したように8月に8,000個のドラゴンの魔石を納品しましょう」
「誠にありがとうございます。スミレ様にもご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いいたします。それと先程ジョージ様より相談事がございまして」
ジョージがダンに相談?
「夫婦の夜の営みに口を出すのは無粋ではございますが、当主の場合は家が傾く要因になり得ます。取り返しがつかなくなる前に、しっかりと対策を講じましょう」
ダンはそう言って私に先程のジョージの相談内容を懇切丁寧に説明をしてくれた。
ジョージがポーラを自分の専任侍女にする時に、私が悲しまなくてもポーラで性的処理をしないと誓った!?
あまりの内容に開いた口が塞がらない。
「呆れた……。それじゃジョージは自分に誓った事に囚われているの?」
さすがに自然と溜め息が漏れてしまう。
「そうですね。自粛自戒も過ぎれば自縄自縛になります。そしてジョージ様は我慢を重ねて俺は凄いと自画自賛しています。こうなったのも自業自得ですよ。しかしほっとくと自暴自棄になりそうです」
やっぱりダンは人の機微を理解しているわ。
重苦しくなりそうな内容をわざと軽い雰囲気にして、大した事では無いと無意識にしようと仕向けている。
これはダンが作った流れに乗るのが良いわね。
「ふふふ、それで?」
私がダンの思惑に乗って先を促すと、ダンの弁舌は一層滑らかになった。
「ジョージ様は自分自身に誓った内容で自己暗示にかかっております。そしてそれが自己陶酔を生じさせています。自己満足も甚だしいです。私としてはもっと自己中心になってくれれば楽なのですが」
ダンの言葉遊びに少しイラついた表情を出すジョージ。
ジョージからすればダンに真面目に相談したのに茶化された感じを受けたのだろう。
「ジョージ、ダンはわざとやっているのよ。気楽に考えましょうってことね。真剣を通り越して深刻になっているジョージへの優しさよ」
ジョージは私の言葉をゆっくりと噛み締めている。
ここが間違いなく正念場だ。ジョージの心の奥底に確実に残る言葉をかける。
「ジョージ、もういい加減安心して。私は既に貴方の虜なの。貴方が何をしようと私の心は変わらないわ。生涯愛し続けるから覚悟しておいて」
私の渾身の言葉に別の世界に行ってしまったジョージ。どうやら成功したようだ。
「ジョージは呆けているからほっとくとして、ダンはどうすれば良いとおもっているの?」
「簡単ですよ。元来、男はハンターですから。男性には狩猟脳が存在しています。それを思い出させるだけですね。そうすればスミレ様がジョージ様に言ったように下半身で考えるようになりますよ」
そうなれば良いのだけど、案外ジョージは頑固なのよね……。





