上から目線過ぎる勧誘
「ジョージさんはアーサー帝国に仕える気はないかしら?」
修練のダンジョンを出るとオーロラから内密の話があると耳打ちをされる。
取り敢えずグラコート侯爵邸に戻り話を聞く事にした。
そしていきなり言われたのが先程の言葉である。
「えっと、間に合っております」
「あら? 聞くだけ聞いてみる気はない? ジョージさんにとっても奥様にとっても間違いなく良い話だと思うわよ」
修練のダンジョンで俺の魔法を見せてから、妙に馴れ馴れしい……。
昨晩はジョージ侯爵と呼んでいたのに、今はジョージさんだ。ほっとけはジョージと呼び捨てにされそうな勢いだ。
「いやいや、だから間に合っているって。俺の故郷はここ帝都だし、今のところは移住する予定は無いよ」
「アーサー帝国は実力主義なのよ。ジョージさんなら皇帝陛下の右腕になる可能性だってあるわ。こんな田舎で燻ってたら人生の無駄じゃない」
えらい言いようだな……。
「顔も見た事もない君の父親の部下にはなりたいとは思わないよ。それにアーサー帝国は拡大主義なんだろ? 俺は無駄な戦争はしたく無いから」
「顔を見たことが無いなら、見にくれば良いじゃない。それに誰だって無駄な戦争はしたくないでしょ。必要だからするのよ」
「無闇矢鱈に周辺の国に戦争をふっかけているんだろ? そんなの必要無いじゃないか」
俺の言葉に強く反応するオーロラ。
反論する声が少し大きくなった。
「何を言っているのよ。アーサー帝国の支配下になった方がその国の人々の幸せになるわ」
「それは無茶苦茶な考えだよ。アーサー帝国の価値観を無理矢理押し付けているだけじゃないか」
「ジョージさんもアーサー帝国に来てみれば理解できるわよ。私が言っていた事が正しかったって」
これはいくら話し合っても意味が無いな。自分が正しいと双方が思い、俺もオーロラのどちらも譲るつもりがないからだ。
こういう時は話題を変えた方がよいか。
「オーロラ殿下は俺やドラゴンの魔石の調査をしに来たんじゃないの? まさか勧誘されるとは思わなかったよ」
「調査をして、ジョージさんが英雄の名に恥じない実力だった場合はアーサー帝国への仕官を働きかけるように指示されているの。余計なお世話かもしれないけど、自分を売る時は一番高い時に売らないと後悔するわ」
「どういう意味かな?」
「エクス帝国が滅ぼされてから自分を売っても、その時にはジョージさんの価値は暴落しているってことよ」
あっさりと凄い事を言うな。少し面食らったよ。
「残念だけど俺の座右の銘は【反省はするが後悔はしない】なんだよ。だから後悔はしないな」
「まぁ良いわ。気が変わったらいつでもアーサー帝国に来て、私に連絡をして。なるべく高くお父様に売ってあげるから」
いつの間にか俺は完全に売り物になってしまっている。
それにしても凄い自信だよな。オーロラは俺がアーサー帝国に仕官する事が、俺の幸せに繋がると露ほども疑っていない……。
これだけ断定されると、それが正解かもと思わせる力があるわ。
「このペンダントをジョージさんに預けるわ。アーサー帝国を訪れた際は、これを役人に見せて私に会いたいと言えば大丈夫よ。大切な物だから失くさないでね」
「俺がアーサー帝国を訪れないとは思わないのか?」
「それは無いわね。確かに貴方の魔法は凄かったわ。それでもエクス帝国がアーサー帝国軍に勝てる筈がないわ」
「やってみなければわからなくない? 勝負は時の運って言うじゃないか」
「勝負はそうかもしれないけど、残念ながら勝負にすらならないわ。だってお父様が率いるアーサー帝国軍は最強ですもの」
自信があると言うよりまるで確信している口調だ。
「覚えておいて。仕官するなら早ければ早いほど良いわ。決断力が無い人はお父様は嫌いですから」
間に合っていたはずのオーロラの提案だったが、真剣に考えた方が良いのか……。
俺はオーロラからペンダントを受け取った。
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