空気の壁
「本当に不思議なダンジョンですね。こんな低層でオーガが出現するなんて……。事前に聞いていましたが信じられませんでした」
現在、俺はオーロラを修練のダンジョンに連れて来ていた。
俺の調査の為、俺の魔法技術をこの目で見たいと言われたからだ。
「確かによく考えれば不思議かもね。慣れてしまったからそうは思わなくなってたよ」
「ふふふ、慣れって怖いですよね。私も父の強さに慣れてしまって他の人を見ても驚かなくなってしまっています」
「へぇ、そうなんだ。オーロラ殿下の父親はイース皇帝陛下だよね。そんなに強いの?」
「言葉で言っても嘘くさくなるくらい強いですね。戦場が恋人と言って憚らない人ですから」
アーサー帝国の皇帝陛下は相当好戦的な性格なんだな……。
「アーサー帝国は実力主義の国なんです。それも戦闘力の実力主義です。剣か魔法で優れていないと出世はできません。そのような帝国を治めているといえば理解しやすいですかね?」
実力主義ねぇ。それにしては皇女であるオーロラがアーサー帝国陸軍第四隊の隊長なんだよな。
それなりに血筋で出世ができるんだろう。
「あ、今失礼な事を考えていましたね。これでも魔法についてはアーサー帝国で私の右に出る者はいません。あくまでも実力でアーサー帝国陸軍第四隊の隊長に任命されていますよ」
顔に出ていたか、これは反省だな。
確かにオーロラの魔力の質は良さそうだ。
「これは失礼しました。それにしても昨晩の食事の時と随分口調が変わってますね」
「あぁ、あれは皇女の仮面です。この喋り方が素ですね。どうせすぐにボロが出るからやめました」
お茶目に舌を出したオーロラが可愛く感じた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
地下4階に降り立ったオーロラは顔を青くして震え出した。
「どうしました? オーロラ姫。それでは行きますよ」
「本気ですか!? いや正気ですか?」
「あ、凄いですね。ドラゴンの威圧を感じますか。それは魔力ソナーではないですね。まだそんなに近くにいませんから」
「帰りましょう。これは人間が相手して良い存在じゃありません」
「それじゃ俺の魔法を見せられませんよ。それで良いのですか?」
「命あっての物種です。優先順位を間違っては死に直結しますから」
せっかくここまで来たのにな……。
それでも無理矢理引っ張っていくのも外交問題になったら面倒だ。
ドラゴンの距離は1.5kmくらいか。1kmくらいで最近狩っていたけどいけるかな?
ドラゴンは結構回避が上手いからなぁ。
よしいっちょやってみるか。
エルフの里の前線砦で披露したアイシクルアローを思い出せ!
そうだ! 意識するのはスピードと正確性。それを究極までに特化させる!
【静謐なる氷、悠久の身を矢にして貫けアイシクルアロー!】
バーーーン!!!!
周囲に轟く爆音に、魔法を発動した俺は後ろに飛び退き周囲を警戒する。
俺が放った氷の矢は一直線にドラゴンに当たったようだが、氷の矢が通った道筋を中心に何かしらの衝撃が生じたようで草がゆれていた。
魔力ソナーに怪しい魔力反応を感じなかったため俺は警戒を解いた。
これは失敗なのか?
「く、空気の壁を破ったの!?」
オーロラが地面にへたり込んでいた。
空気の壁? なんじゃらほい?
「今の爆音について何か知ってるの?」
「ムチよ! ムチと一緒よ!」
むちむちと一緒? 確かに君の太ももはむちむちしているけど?
「ムチを知らないの?」
「あぁ、ムチね。あのちょっと特殊な趣味をお持ちの紳士淑女の必須道具だよね?」
「あんな遊びのムチじゃないわよ! 猛獣使いが使う本格的なものよ! ムチの先端って目で追えないほど凄い速さになるの。達人がムチを使用すると何も無いところでパンパンパンって音が鳴るのよ。空気の壁を破ると音が鳴るわ」
「ふーん。そうなんだ。俺は魔法が暴発したのかと思って驚いたよ。でもこんなに爆音がなるなら今後は封印するわ」
「空気の壁を破るアイシクルアローって……」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「それじゃ準備はいいか? 顔が強張っているけど大丈夫?」
「顔くらい強張るわよ! 破壊の権化のモンスターハウスに入るなんて自殺行為よ! 本当に大丈夫なんでしょうね」
何で俺が怒られる? 理不尽過ぎる。オーロラの希望で寄り道をしているのに……。
「俺が大丈夫って保証してオーロラ殿下が怪我をしてしまったら外交問題になるからね。俺の威力の高い魔法を見たいと希望したのはオーロラ殿下だ。自己責任でお願いします」
「ちょっと待ってよ、そんな事を今言われても……」
こりゃ待ってたら埒があかないな。
「まぁ良いよ。お持て成しだからな。部屋の奥に行かなければ大丈夫だ。俺が保証してやるよ」
俺はオーガのモンスターハウスの扉を力いっぱい開いた。
「あ、何して、」、【疾走する颯、無慈悲に斬り裂く刃となれ、ストームブレード!】
俺はオーロラを無視して魔法を詠唱した。
モンスターハウスの中で無数の風の刃が荒れ狂う。
数秒後には大量の肉片が床に散乱していた。
唖然としているオーロラに俺は声をかける。
「大丈夫だったろ? じゃ帰るか」
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