報われない恋心
グラコート侯爵邸に戻り遅めの朝食を食べていると、フルチン男が俺に話しかけてきた。
「ジョージ殿、ちょっと聞きたい事があるのだがよろしいか?」
「食事をしながらで良いならどうぞ。それより顔の腫れがひどいな。誰にやられた?」
「……。それはもう良い。反省している。それにレオ爺がジョージ殿の実力の底が見えないと先程興奮して言っていた。あんなレオ爺は久しく見てない。それならジョージ殿が本物の英雄って事なんだろう」
「随分と殊勝な事で。それで聞きたい事って何?」
「先程、学生の制服を着て出掛けて行ったエルフについて教えて欲しい」
「あぁ、エヴィーの事かな?」
「エヴィーという名なのか?」
顔を赤く染めるフルチン男改めヤクス。
「えっと、エンヴァラって名前だ。親しく無い者が愛称であるエヴィーと呼ぶと殺されるから気を付けてね」
「ハハハ、ジョージ殿がエンヴァラ殿を愛称で呼ばせたく無いからといっても冗談がすぎますね」
「いや冗談だったら俺も嬉しいけど、冗談じゃないから。本当に殺されるからね。一応、エヴィーには人間を傷つけないように厳命はしているけど絶対じゃないからさ」
笑っていたヤクスが怪訝な顔に変わる。腫れている顔でわかりにくいけど。
「それは本当なのですか?」
「本当の本当だよ。エヴィーは人間を虫ケラだと思っているからね。俺も初めてエヴィーと会った時に、助けてくれたお礼に下僕にしてやるって攻撃されたよ。間違いなくエヴィーは生態系の頂点に位置する存在だ」
「ただのエルフだろ? 確かにエルフは人間より魔法に優れているが、それ程人間と変わらないだろう?」
「エヴィーはエルフの事を劣等種族って言ってたぞ。エヴィーはハイエルフだからな」
ヤクスは眼を丸くした。腫れていても驚く顔をわかるな。
「は、ハイエルフ!? そんなの御伽話だろ。いるわけが無いじゃないか」
「信じるか信じないかは勝手にしてくれ。俺も本当がどうかは知らん。エヴィーがそう言っているだけだからな。それと古代のエルフ王だったみたいだよ」
「古代のエルフ王……」
報われない恋心は早めに潰した方が傷は浅いよな。
「ヤクス。残念な事だが眺めるだけで満足しておけ。懸想してはいけない存在がエヴィーなんだよ。それじゃな」
俺は食事を終え私室に戻った。項垂れるヤクスをそっとする為に。
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