レオとの会話で思い知る
6月7日【青の日】
「ジョージ殿は朝から剣術の鍛錬とは素晴らしい! 剣術は全てを解決しますからな!」
あれ? この人って脳筋? こんな性格で隠密部隊なの?
「剣は本職では無いんですけどね。剣術で倒したい女性がいるから鍛錬しているんですよ」
そう言って素振りをしているスミレに目を移す。
「あれはジョージ殿の奥方のスミレ殿でしたな。流麗で美しい剣術だ。間違いなく強者の剣だな。あれほどの剣術はアーサー帝国でもそうそうお目にかかれん。ジョージ殿は高い目標をお持ちなんだな」
レオの言葉に口を挟む茜師匠。
「悪いがジョージ様は剣術にて最強の看板を掲げることができる存在だ。スミレ様の剣術が素晴らしいのは認めるがジョージ様にとっては決して高い目標ではない」
「これは失礼した。貴女は?」
「龍闘茜だ。ジョージ様の剣術の師をさせていただいておる。またグラコート侯爵家の家臣団の一員だ」
「ジョージ殿の師匠でしたか。スミレ殿はエクス帝国騎士団の出身であるから剣術が専門であろう。あの素振りを見れば一目瞭然だ。それに引き換えジョージ殿は魔術団出身の魔術師だろう。さすがに本職には敵うまい」
「ハハハハハハ。どうやらアーサー帝国の方は冗談がお好きなようだ」
茜師匠の言葉に眉を上げるレオ。
「英雄と称されるジョージ殿を我々に大きく見せたいようだが、それはさすがに滑稽ですな。魔術師は体外魔法に優れ、騎士は体内魔法に優れている。魔術師が騎士に剣術で勝てる道理がない」
茜師匠が笑顔になる。
「せっかくアーサー帝国から遠いこのエクス帝国まで来たんだ。私の尊敬し愛する方の言葉を貴方に教えてあげよう。『私の主であるジョージ様を馬鹿にするのは許さない。貴様如きがジョージ様の何がわかるというのか。今後一切貴様如きの矮小な常識でジョージ様を語るな』だ。後ほどジョージ様に修練のダンジョンに連れて行ってもらえ。そうしないと私のように真の意味で理解できないだろうからな」
二人がやり合っているのを他所に俺は1人で龍闘流剣術の基本の型をやり出した。
重心の位置を確認しながらゆっくりと身体を動かしていく。
「なるほど、面白い動きだな。確かにこれなら体内魔法の身体能力向上が劣っていても、そこそこやれるかもしれんな」
あぁ、面倒だな。
「悪いけど俺の剣術は本職じゃないから馬鹿にするのは良いけど、師匠の剣術を馬鹿にするのは許せないね。模擬戦をしても良いけど、客人に怪我をさせるわけにはいかないからね。朝食前だけど、修練のダンジョンに行きましょう」
レオは願ってもないと言って喜んで用意を始めた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
修練のダンジョンに向かう道中、移住をしてきたエンヴァティアのエルフ達からひっきりなしに挨拶される。
レオが眼を丸くしていた。
元々エルフが街に住んでいるのが珍しいからしょうがないか。
「ジョージ殿はエルフの方なのか?」
「いや違いますよ」
「いやグラコート邸にはエルフが大勢いたのでな。それにここにもエルフが大勢住んでいる……」
「あぁ、この人達は最近森から移住してきたんですよ。ちょっとした知り合いです。それにちょっと用事があって、今はグラコート邸に住んでいるエルフは少なくなっていますよ」
「失礼ですが、何人のエルフがグラコート侯爵家に属しているのですか?」
窺うように聞いてくるレオ。まぁ調べればわかるから話しても良いか。
「えっと……、40人ですか」
「あの魔法に優れている種族であるエルフが40人ですか……。まさか全て軍人ではありませんよね?」
「いや、1人を除いて軍人でしたよ。まぁ1番強いのがその除いた1人なんですけどね」
「どういう事ですか?」
訝しむレオ。
「ハイエルフなんですよ。エンシェントエルフとも呼ぶみたいですね。今は学生をしてます」
「ハイエルフ!? なんで学生なんてやっているんです」
「遠い昔のエルフ王で、今の常識を全く知りませんでね。人間社会で過ごす為の情操教育の一環です」
「ジョージ殿から常識なんて言葉が出るのですな。先程から言っている事が非常識ばかりだ……」
やっぱり俺の常識、社会の非常識になってるのかな?
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