浮かび上がる真実
ここエクス大陸の隣りには、世界最大のバルボー大陸がある。
そしてそのバルボー大陸のほとんどを手中に収めているのがアーサー帝国だ。
帝国は拡大志向が強いが、ある程度のところでその拡大は止まる。エクス帝国も既に拡大志向はあまり強くはない。
しかしアーサー帝国はバルボー大陸をほぼ統一しているが、拡大志向が留まっていない。
このエクス大陸にも触手を伸ばすかと思われたが、海を超えてまで征服する旨みがないようだ。
現在、アーサー帝国はバルバト共和国とは貿易を行なっている。契約はアーサー帝国にとって相当有利な条件のようだが。
「そんな事が可能なんですか? それにそんな事が起きればエクス帝国にも動揺が走りますよ」
「可能か不可能かでいえば可能でしょうね。特にタイル前公爵には」
またタイル・バラスかぁ……。
「タイル前公爵の妹はアーサー帝国の侯爵家に嫁いでおります。その伝手を使い、ドラゴンの魔石をアーサー帝国に持ち込めばアーサー帝国の野心はエクス大陸に向くでしょうね」
人類の歴史はエネルギーや食料の奪い合いってダンが言ってたもんな……。
「タイル前公爵は今年の1月の末に領地に向かって帝都を発っています。真っ直ぐエルバト共和国を経由してアーサー帝国に向かったとして2ヶ月強かかります。たぶん今頃アーサー帝国にいるんじゃないですかね?」
「ドラゴンの魔石を見て、アーサー帝国が軍事行動を起こすとしたら早くて10月半ばです。秋の刈り入れが終わってからでしょうね。農民からの徴兵も楽にできますし、食料も豊富になりますから」
だから8月に取り引きを終えるつもりなんだ……。
「アーサー帝国がエクス大陸に軍事行動を起こした場合、南のエルバト共和国側から攻めてくるでしょう。エクス大陸には大きな港がありませんし、アーサー帝国からも1番近いですからね」
「えっとどうしたら良いですか?」
「別にジョージ様がいますからグラコート侯爵家は何もしなくて大丈夫ですよ。強いていえば家臣団の戦力を上げておくくらいですね。そしてそれは既に実施してます」
確かに親衛隊のメンバーのレベル制限を解除している。
ダンが少し怖くなってきた……。
「ダンに全て任せておけば問題ありません。彼はそれだけの逸材です。私でも足元に及びませんから」
「過ぎたる謙遜は嫌味って言いますよ」
「謙遜なら嬉しいのですが、厳然たる事実ですからね」
ベルク宰相がここまで言うのなら本当なんだろうな……。
あ、そういえばベルク宰相に確認しないといけないことがあったよ。
「一つ確認したいのですが、先日の陞爵の儀の中で、ベルク宰相が既に政府のある組織が俺の暗殺計画を立てようと試みましたと言っていたのですが、本当でしょうか?」
「本当ですよ。後でその暗殺計画を立てようと試みたリーダーに確認すれば良いと思います。今は貴方の部下なのですから」
「ダンがリーダー!?」
「そうですよ。知りませんでした? 結局、成功率が恐ろしく低いとなりましたから、その暗殺計画は実施されませんでしたけど」
あっさりと俺の暗殺計画があった事を喋るなぁ。
さすがにあまり良い気分ではないよ……。
あ、ついでに悩み事を聞いてもらおうかな。
どうせならベルク宰相に甘えるだけ甘えちゃえ。
「話は変わるのですが、相談に乗って欲しい事があるんです」
「なんでしょうか? 私の経験で助言できる事はいくらでもしますよ」
優しいベルク宰相の顔を見て、俺は最近の悩みを打ち明けた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「なるほど、上級貴族の専任侍女の話でしたか。それにしてもジョージ郷とは凄い区画を作りましたな。裸のエルフが闊歩するなんて、男の夢そのものじゃないですか」
まぁ確かにそうだよな。俺も慣れてきたけど、冷静に考えると楽園だわ。
「スミレとダンから専任侍女で性的な処理をするように言ってくるんです。でもなんか気持ちが付いていかないんですよ。どう思います?」
「スミレ様は本当にジョージ様を愛されている。それが痛いほどわかります。そしてダンもジョージ様の生命の危険性を排除しようとしてますね」
「スミレに愛されている? なんかそこがわからなくて……。他の女性を抱けなんて言われて、本当に愛されているのかわからなくなっています。上級貴族の常識と言われても……」
「確かに上級貴族の常識ではありますが、そうじゃありません。スミレ様は確実にダンから先程のジョージ様の暗殺計画の内容を教えられていますね」
「暗殺計画?」
「その暗殺計画で一番確率が高い方法は【魅惑の蜜】を使った計画でした。アルコールなどで思考を低下させるのもジョージ様の魔力ソナーに隙ができるのでは無いかと考察がありました。私見ですが、もっと隙ができる状態がジョージ様にはありそうです。エルフの里から帰還したジョージ様は関所破りをしましたよね。性獣化した状態です」
性獣化って……。
悔しいが否定ができない。
「性獣化した状態で裸の女性が目の前に現れたら間違いなくジョージ様はゴブリンのように一心不乱に腰を振るでしょう。暗殺するならばこの時をおいて他にないでしょうね」
一心不乱に腰を振るって……。
しかしこれも否定ができない。
「また魔力ソナーは感情の昂ぶりなどで相当精度が悪くなります。ジョージ様を暗殺する上で一番の問題がジョージ様が魔力ソナーを常時展開している事です。ジョージ様の魔力ソナーを無力化、もしくは機能を著しく低下させるのが最大の山なんです。しかしこれを乗り越えればそれ程暗殺も難しくなくなります」
俺の知らないところで俺の暗殺計画が吟味されている……。
やはりあまり気持ちの良いものではない。
それにしてもベルク宰相の言葉が本当なら一つの真実が見えてくる。
「それじゃ、スミレが俺の性欲管理をしないといけないといろんな理屈を言っていたのはグラコート侯爵家の醜聞になるからじゃなくて……」
「ジョージ様、貴方を失わないためですよ」
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