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ジョージは魔法の使い方を間違っていた!? 〜ダンジョン調査から始まる波瀾万丈の人生〜【文庫本発売中】  作者: 葉暮銀
新しい時代

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ベルク宰相との約束

 グラコート侯爵邸に近づいてくる魔力を感じた。

 ベルク宰相だ。あ、元宰相になるのか……。


 なんだろ? 何か相談事かな? 案外、やっぱりアリス陛下に忠誠を誓えって頼まれたりして。


 ベルク宰相の魔力反応が客室に入ったところで俺はダンに呼ばれる

 客室にはとても晴れ晴れとした表情のベルク宰相が来客ソファに座っていた。

 俺を認めるとすぐに立ち上がり真面目な顔で頭を下げる。


「ジョージ・グラコート侯爵様。お約束どおりジョージ様の元に馳せ参じました。微力ではございますがよろしくお願い致します」


 侯爵様!? お約束!?

 なんの話だ?


 俺が呆然としているとベルク宰相の顔が柔和に変わる。


「ジョージ様はお忘れですか? 以前、私がエクス帝国の宰相を辞したら私を雇いたいとおっしゃっていたじゃないですか。昨日、宰相の職を辞めましてね。お約束どおり雇われにきましたよ」


 た、確かにそんな会話をした思い出がある……。でも本気なのか? それにこれは罠ではないのか……。


 俺は困惑してダンに助けを求めた。


「ジョージ様、罠ではないですね。そしてベルク宰相は本気です。あ、今は宰相では無かったですね」


「これはダン・モンゴリ伯爵。この度はおめでとうございます。お祝いの言葉が遅れて申し訳ない。それと本日付けで私はベルク・グリンデル伯爵となりました」


 ベルク宰相の言葉に眉を上げるダン。


「なるほど。グリンデル家の爵位はエバンビーク家が所持していましたね。私に対する対抗心の表れですか?」


「とんでもない、グラコート侯爵家に仕える先輩になるダン・モンゴリ伯爵に対抗心だなんて露ほども考えておりません。完全な邪推です」


「まぁ良いですよ。私はジョージ様よりジョージ様の旧姓を使わせていただいておりますから」


 軽妙なやり取りをするダンとベルク宰相についていけない。

 俺はやっとのことで疑問を挟んだ。


「えっと、どういう意味?」


「グリンデル家は初代グラコート家当主であるグラコート・バルケスの最大の理解者でした。ベルク伯爵はグリンデル家を名乗る事によってグラコート侯爵家の最大の理解者であると内外に示しているんですよ」


 へぇー、それならグリンデル家って100年以上前からある由緒ある家なんだな。


「ダンに対する対抗心って?」


「私に取っては、あからさまに『羨ましいだろ』って言われている感じを受けますね」


「そんな子供みたいな事をベルク宰相はしないでしょ」


「ジョージ様はベルク伯爵の事を理解していませんね。こういう事をして喜ぶ人なんですよ」


「それでベルク宰相を雇って良いの? えっと……」


 ベルク宰相の前で話して良いか分からずに言い淀んでしまう。

 ベルク宰相が俺を見て微笑んでくれた。


「グラコート侯爵家がエクス帝国の皇室と政府とは少し距離を取る予定だから悩まれておりますね。問題ありません。私は完全に皇室と政府とは切れております。反対に今後は敵認定されるでしょうね」


 スラスラと俺の懸念事項を話すベルク宰相。

 確かに俺の懸念に答えてくれたが、新たな懸念が生じているじゃん!


「敵認定って?」


 その懸念に答えてくれたのはダンだった。


「まぁそうでしょうね。アリス陛下の王配となられるバラフィー・エバンビーク殿下の立場になればそうならざる得ないですね」


「どういうこと?」


「ベルク宰相は実家のエバンビーク公爵家当主である兄に宰相を辞めるように命令されたはずです。他の家とのバランスを考えながらと言いながら、結局は権力を自分の息子であるバラフィー殿下に集める為に。その代償としてベルク伯爵はグリンデルの爵位をもらったのでしょう」


 ベルク宰相は無言をもってダンの言葉を肯定していた。


「さてバラフィー殿下としては対抗勢力はアリス陛下の実の兄であるカイト・ハイドース侯爵です。そして中間の位置にいるのがバラス公爵家。バラス公爵がどちらに付くのかが勝負なのですよ」


「あの10歳公爵がそんな重い決断をしないといけないのか……」


 俺の言葉をあっさり否定するダン。


「そんなわけがないですよ。いまだにバラス公爵家はタイル前公爵が実権を握っております。タイル前公爵とベルク伯爵が犬猿の仲である事は帝都の常識です。バラフィー殿下がバラス公爵家を自分の陣営に引き込む為にはベルク伯爵との関係が完全に切れているとタイル前公爵にアピールしないといけません」


 タイル前公爵のヌメっとした顔を思い出してしまった……。


「そればかりかベルク伯爵を敵にしてしまえばタイル前公爵の覚えも良くなるでしょうね。いつの時代も敵の敵は味方ですから」


「そりゃひどくない? バラフィー殿下に取ってはベルク宰相は叔父だよね? それに長い間エクス帝国に尽くしてきたベルク宰相を敵認定するなんて!」


「まぁ権力闘争はそんなもんですよ。権力を握る為には親でも子供でも殺します。叔父なんて意味を為しません。ましてや過去の実績など歯牙にもかけませんね」


 聞いているだけでムカムカするな……。

 あれ? でもなんでベルク宰相はこんな状況に陥っているんだ? 政治的なバランスに優れていたよな。

 もしかして……。


 俺の思考を先読みしたのか、ダンが説明をしてくれる。


「そのとおりです。ベルク伯爵が今の状況になっているのはひとえにジョージ様の為に動いた結果です。今年になってからはアリス陛下が望んだジョージ様との婚姻をアリス陛下に諦めさせました。またバラス公爵家とグラコート伯爵家が揉めた時にはグラコート伯爵家に有利な裁定をしました。そしてアリス陛下への忠誠についても無理強いをしませんでした。その結果が今ですね。でもベルク伯爵が自分の判断で選択した事ですからジョージ様が心を痛める必要はありませんよ」


「ありませんよ、じゃないよ! 大ありでしょ!」


 感情的になって、ダンが悪いわけじゃないのに、ダンを叱ったようになってしまった。


「ですから罠ではないと最初に言いましたよ。私は昨年までベルク伯爵の下で働いていましたから。ベルク伯爵はザラス前皇帝陛下が崩御なさってからバランスは取っていますがジョージ様第一で動いております。そして今年に入ってからもジョージ様の幸せを第一に考えて決断をしてましたね。それが既にエクス帝国皇室に対する不忠ですけど、ジョージ様に対する心は疑いようがありません」


 ダンの言葉を受けて、俺はベルク宰相を見た。やるせない気持ちが湧いてくる。


「えっと……、そうなんですか?」


「ジョージ様が裏で私の事をお父さんと呼んでいた事は知っていましたよ。それがとても嬉しくてね。前にも言いましたけど、不敬ながらジョージ様が自分の子供のように感じられています。まぁ見ていて危なっかしくて可愛いのです。またとてもそれが楽しくてしょうがないですね」


 死んだ実の父から感じた事のない深い愛情を感じる。これが本当の父親だったら俺は幸せな子供時代を過ごせたのだろうか?


「いや、そんな……」


「第二の人生をジョージ様の近くで過ごしたいのです。ジョージ様は既に英雄として輝かしい偉業を為されております。そしてこれからもより一層の偉業を為される方です。是非私もその英雄譚の登場人物に入れて欲しいですね」


 願ったり叶ったりだけど、ダンはやり難くないのか?

 先日、俺がアリス陛下への忠誠を断った決断を俺やグラコート侯爵家に取っては重い決断では無いと言いながら、ダンに取っては微妙な決断だったと言っていた。

 それがベルク宰相が俺の傘下に入るって事だったのか……。


「これからジョージ様には数々の難題が降りかかってくると思われます。ダン伯爵がジョージ様を支えればジョージ様を良い方向に導いてくれるでしょう。私は若いジョージ様とダンの邪魔はするつもりはありません。それでも2人のお手伝いはいくらでもしますが」


 ニッコリと笑うベルク宰相。


「先日、マリウスからグラコート侯爵家の家宰ができる人を紹介して欲しいと言われましてね。心当たりがあるから任せておけって言ったんですよ。どうです? 私が家宰では不服でしょうか?」

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