グラコート侯爵家の戦術
ダンを私室に呼ぼうと思っていたが、既にこの区域は俺以外男子禁制だ。
俺からダンの執務室に行くか。
執務室いたダンは既に仕事をしていた。
「ダン・モンゴリ伯爵、話があるんだけど」
「やめてくださいよ。伯爵なんて柄じゃないですから。それよりベルク宰相の件ですよね」
「ダン伯爵の儀式が終わってからと話そうと思ってね。それにしても吃驚したわ」
「そうですか? 私としては当然の帰結でしたが」
「当然なの? ベルク宰相が辞めるとアリス陛下が困らない?」
「困るでしょうが、それ以外の選択肢は無いですね。ベルク宰相としては最後まで頑張ったと思いますよ。今年に入ってジョージ様とアリス陛下を何とか婚姻させようとしたりしましたからね」
「あぁ、あったね。結構あからさまだったかなぁ」
「ジョージ様がアリス陛下の王配になられるのがベルク宰相にとって一石三鳥だったんです。ジョージ様を取り込めますし、派閥の力関係にも良かった。それにアリス陛下も喜ぶでしょう」
そんな事を言われても……。
「ジョージ様は全く悪く無いですよ。さすがにアリス陛下と婚姻されればジョージ様の正妻はアリス陛下になります。スミレ様は側室に格下げになりますからね」
それはさすがに許容できないよな。
「それを理解していたベルク宰相はジョージ様とスミレ様の事を考え、最後には諦めたのです。でも宰相としてはこれはエクス帝国皇室に対する不忠になると思われます」
「不忠って……」
「そうなるとジョージ様以外のアリス陛下のお相手はあと2人。バラス公爵家のコールド・バラスとエバンビーク公爵家のバラフィー・エバンビーク。アリス陛下の幸せとエクス帝国皇室の事を考えればバラフィー以外の選択肢がありません。しかし王配と宰相をエバンビーク公爵家が担うとなると派閥のバランスが悪過ぎます。バラス公爵家を筆頭に相当な反発が予想できます」
「まぁそうなるか……」
「それでもベルク宰相は最後まで粘っております。それがジョージ様の忠誠をアリス陛下に捧げてもらう事です。そうすれば何とか反発を抑えられる」
「今回、忠誠を保留したのってそんなに重い決断だったの!?」
「ジョージ様やグラコート侯爵家に取っては重い決断では無いですね。私に取っては微妙な決断でしたけど。まぁそれは置いといて今後は静観を決め込むのがグラコート侯爵家が取る戦術です。勝手に自滅するでしょうから、こちらは離れて高みの見物ですよ」
「なんか良くわからないけど距離を取るのが良いんだね」
「権力争いの渦中に入るだけの無駄ですよ。ほっとくのが吉です。あ、それと新しくこの屋敷で働く人員を増やします。ジョージ郷は専任侍女に任せるから良いとして、その他の場所は掃除をするだけでも大変ですから。メイドや執事、バキの補佐をさせる料理人など使用人が増える予定ですのでよろしくお願いします」
ジョージ郷って既に当たり前に受け入れられているのか……。
「まぁ、前の邸宅と比べられないほど広いからしょうがないよね。任せるよ」
「それと家宰のマリウスとメイド長のナタリーが退職を希望しております。家宰の後任が見つかり次第、この希望を認める予定です。そしてメイド長にはサラになってもらいます」
「やっぱりそうなるのか……」
「息子のザインの件がありますからね。ジョージ様が気にしなくてもマリウスとナタリーは気にしています。罪悪感を抱えたまま働くのは辛いですから」
「わかったよ……。悲しいけど認めるよ。退職金はしっかりとお願いね」
「当然です。マリウスとナタリーの今までの仕事に恥じない金額をお渡しします」
「でもマリウスの後任は直ぐに見つかる? これだけの規模の屋敷と多大な収入があるグラコート侯爵家だよ? 生半可な人物には務まらないよね」
「あぁ、それなら問題はありません。たぶん明日にはこの屋敷に来ますよ。明日の午前中はジョージ様は修練のダンジョンに行かずにこの屋敷で待機しておいてください」
「よくわからないけど了解した。あとエヴィーの様子はどんな感じ? 先程俺を出迎えてくれたんだけど、直ぐにいなくなってね」
魔力反応を確認したところエヴィーは自分の部屋にいた。
「どうしてもスミレ様が怖いようで避けております。せっかくのジョージ郷にもあまり顔を出さないかもしれません。しかし毎日、しっかりと勉強はしております。最近は一般常識と一般教養で教える事がなくなりましたので、帝国図書館で本を読み漁っていますね。歴史や政策、軍事に文学と本の分野は全く問いません。そして今はサラから借りた恋愛小説にハマっております」
女性は本当に恋愛小説が好きだよなぁ……。
続きを読みたい方、面白かった方は下の星評価とブックマークをお願いいたします。星をいただけると励みになります。





