既得権益化する上級貴族の爵位
ベルク宰相が宰相で無くなる!?
頭の中が整理が付かなかった。
そして気がつくと俺は侯爵になっていた。
ベルク宰相と話したかったが、ベルク宰相はこの後のアリス皇帝陛下の戴冠の祝宴の準備ですぐに謁見の間からいなくなってしまった。
事前に俺はダンと話し合った結果、この祝宴には出席しない事にしていた。
エクス帝国皇室とエクス帝国政府から距離を少し取るようにしたからだ。
俺は控え室にいたスミレと合流し、専任侍女の控え室に向かった。
どれ、喧嘩はしてないだろうなぁ
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
専任侍女の控え室に向かうと、既にポーラとシーファが扉の前で待機していた。
控え室の中で寛ぎながら待っていても良いのにな。
ポーラとシーファは俺に気が付くと満面の笑みを浮かべ、ゆっくりと優雅に近寄ってくる。
「おめでとうございます、ジョージ様。お疲れになっておりませんか?」
おめでとう?
あ、侯爵になったからか。普通はおめでたいんだよな。
「ありがとう、ポーラ。全く疲れていないかな。それより特に問題無かったかな? 他の貴族の専任侍女に虐められなかった?」
「はい! ずっとシルファさんが横に連れ添ってくれて守っていただけました」
「それは良かった。シーファ、ありがとうね」
「大した事はしておりません。新参者の我らに他の専任侍女連中はどう扱って良いかわからなかったようで。ずっと遠巻きにしてこちらの様子を窺っておりました」
成る程、そんなもんなのかな? 【心からの笑顔】のせいで、専任侍女の控え室はもっとドロドロしていると思ったんだけど杞憂だったのか。
まぁ女性だけが作る交流の輪は男性の俺には窺い知れない領域だよな。
「シーファがいるからポーラも安心できたんだよ。これからもお願いね」
俺の言葉に満更でも無い顔をしたシーファだった。
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グラコート邸に帰宅すると正装したダンが玄関ホールで出迎えてくれた。
いつもは長めの金髪を無造作に後ろに縛っているダンだが、今日は綺麗に後ろに撫で付けている。
そして礼服をこれでもかとスマートに着こなしている。これは男の俺でも見惚れてしまう。
全くこの男は俺に劣等感を決して忘れさせない存在だよ……。
「それじゃ、ダン行こうか」
「はい」
短い返事を返すダン。もしかして緊張している? そんなわけないか、ダンはそんなタマじゃないよな。
俺とダンは馬車に乗り神殿に向かう。俺とスミレが結婚式を挙げた神殿だ。
馬車の窓から外を見ながら爵位について考えていた。
最初、爵位は皇帝陛下より授かる。俺はエクス帝国魔導団に入団した際に魔導爵、昨年は伯爵位、そして先程侯爵位を授かった。
今後は侯爵位の爵位を俺は使用していく。使用しなくなった爵位は俺の判断で他の人に譲り渡す事ができる。
今回、使用しなくなる伯爵の爵位を俺からダンに譲り渡す。既に一度皇帝陛下から俺に授けた爵位の為、この場合は俺がダンに授ける形になる。
魔導爵のような平民に毛が生えた爵位は別にして、伯爵位以上の上級貴族の爵位を直接皇帝陛下から授かった人物は稀である。
伯爵位以上の爵位を授かる為にはエクス帝国に多大な貢献が必須だからだ。
現在、エクス帝国の上級貴族で直接皇帝陛下から爵位を授かっているのは俺だけだった。
一度授かった爵位は相当な問題が無い限り取り上げられる事はない。皇帝陛下といえど既得権益と化した爵位を取り上げるのは貴族の反発があり難しい。
そして上級貴族が増え過ぎると権威が弱くなるため、どうしても上級貴族の陞爵は抑制的にならざる得ない。
授けられた上級貴族の爵位は通常は親から子へと譲り渡されていく。
今回のように血縁関係の無いダンに上級貴族の爵位である伯爵位を譲り渡すのは普通に考えれば有り得ない事だ。
「ジョージ様は私と初めて会った時を覚えていますか?」
ダンの唐突な質問だった。
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