歴史上最高で最強の魔術師は危険人物?
コールド・バラスの発言に表情を全く変えず返答するベルク宰相。
「なるほど、バラス公爵家はジョージ伯爵の皇位簒奪を疑っておるという事ですな。それで?」
「それでとはなんですか! 宰相として危惧していないのですか!」
「ですから聞いておるのです。危惧したとしてどうするのですか?」
「ジョージ伯爵のような簒奪者予備軍を伝統あるエクス帝国の侯爵位は相応しくないといっておるのです!」
ベルク宰相とコールド・バラスの声のみが謁見室に響き渡っていく。
おぉ! 他人の揉め事はなんかワクワクしてしまうのは俺の悪い癖だ。直す気は更々無いけどね。
ベルク宰相が呆れたように首を横に振る。
「お話になりませんな。寝言は寝てから語りなさい。それでは異議は他にありませんか?」
「待て! 強引に進めようとするのは許さん! バラス公爵家の異議を無視するのか!」
「コールド・バラス。貴方の言葉は本当にバラス公爵家から許可を得た発言ですか? 悪いですけど私にはそう思えません」
「どういう意味だ?」
「貴方がやっている事は誰も得をしないのですよ。そればかりか皆の気分を害しています。退出するか口を閉じるかしてください」
「わけがわからない話で煙に巻くのはやめてくれ! 帝都のモヤシ貴族には通じるかもしれんが、常在戦場の西の貴族出身の私には無意味だ!」
感情的になるコールドと冷静な語り口のベルク宰相。対照的な口論だな。
「なるほど、田舎貴族出身の山猿にはもっと直接的に言わないと言葉が通じないという事ですか」
「ふざけるな! これ以上グラコート伯爵家を庇うのならば、疑問の余地などもうない! エバンビーク公爵家がグラコート伯爵家を利用してエクス帝国皇室の簒奪を目論んでいるのではないか!」
「ふむ、この山猿と同じような勘違いをしている方もおられるかもしれませんので、せっかくですから我がエクス帝国皇室と政府の考えを説明させていただきます」
そう言って参列している貴族に向けてベルク宰相が話し始めた。
「まずは事実確認です。ここにおられるジョージ・グラコート伯爵は類い稀なる才能を持った魔術師です。過去の文献を紐解いてみても、このような才を持つ魔術師はいません。それどころか、歴史上の高名な魔術師でさえジョージ伯爵の足元にも及ばないでしょう。ジョージ伯爵は歴史上最高で最強の魔導師である事にもはや疑う余地がありません」
歴史上最高で最強の魔術師……。
か、カッコ良い……。
「そしてその圧倒的な戦闘力は軽くこのエクス大陸を統べる事も可能でしょう。たった一人の戦闘力でもそうなのです。その為、エルフの軍人がその傘下に入ったとしても誤差の範囲でしかありません」
コールド・バラスが鼻で笑う。
「宰相は数の暴力という言葉を知らないのか? 所詮、一人では大多数には敵うまい」
「そのような常識が通じると本気でお思いですか? 既にジョージ伯爵はその領域ではありません。一般論が通じないのですよ。それほどまでの英傑なのです」
「それならばそんな危険人物は排除すれば良いだろう。貴公はエクス帝国皇帝の権威を蔑ろにしている」
危険人物って……。まるで性犯罪者扱いか。
「そのような考えを持つのも理解はできます。しかしあくまでも理解です。排除しようと成功すると思っているのですか? 悪いですが、ジョージ伯爵を暗殺するのはほぼ不可能です。既に政府のある組織がジョージ伯爵の暗殺計画を立てようと試みましたが、成功の見込みが全くなく匙を投げました。成功する可能性は限りなくゼロに近い。そして失敗した場合、エクス帝国は滅びます」
あ、ある組織って何!?
エクス帝国政府は本気で俺を暗殺しようとしてたのか?
俺の動揺を気にしないで論戦を続けるベルク宰相。
「ジョージ伯爵の暗殺ができない。それならば国外追放ですか? この大陸を統べる戦闘力を持ったジョージ伯爵を? 下手な恨みを買ったらどうなります? これまた簡単にエクス帝国は滅びます」
「そのような弱腰がエクス帝国皇室の権威を蔑ろにしていると言っているんだ!」
コールドは相変わらず芝居がかっているよな……。
「ですから、私は先程貴方に問うたのです。それで?と」
皆の理解を確認するようにベルク宰相が少し間を取った。
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