戴冠式
戴冠式が始まるまで参列者は控え室で待機する。俺はスミレを伴い、軽食を摘み出す。
「これはこれはジョージ伯爵。ご無沙汰しております」
気さくに俺に話しかけてきたのはロード王国のナルド国王だった。
「いや、こちらこそ……」
あまりにもびっくりしてルードさん直伝の貴族の仮面を被れなかった。
「おぉ! 英雄でおられるジョージ伯爵でもびっくりなされるのですな。これは良い土産話ができました」
「それよりどうしてこの控え室に? ナルド国王なら国賓ですから特別な控え室が用意されていると思いますが」
「ジョージ伯爵には直接お礼を言いたくて無理を言ってここに来させていただきました。我がロード王国軍を鍛えてくださり感謝の念を抱いております。これからもロード王国の守護者として末永くお付き合い願いたい」
「あぁ、そんなに感謝しなくても大丈夫ですよ。しっかりと報酬もいただいておりますし。それよりなかなかロード王国に行けなくてすいません」
「いやいや英雄は忙しくて当たり前です。気にしないでください。それに既にジョージ伯爵がロード王国の守護者になると西の辺境の地にまで情報が行き届いております。結構な人数が我がロード王国に投降しているのですよ。噂だけで反逆者に投降させるなんて英雄の名は凄いですなぁ」
どんな噂が流れているんだろう……。尾鰭だけじゃなく、羽根が生えてそうだよ。
「それは良かったです。ロード王国の西の辺境の地の反乱については心配していたんです」
「投降する者もいましたし、ジョージ伯爵に鍛え上げられたロード王国軍でしっかりと対処ができるようになりました。久しぶりにロード王国に平和が訪れております」
平和かぁ……。
やっぱり平和は良いよな。
「それではこの辺で失礼致します。ジョージ伯爵がロード王国に来られる時は国賓対応致しますから是非おいでください」
そう言ってナルド国王は控え室を後にした。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
時間になり戴冠式の会場に入る。
壇上にはエウル教の教皇が見える。
俺は指定された参列者の列に並んで静かに頭を垂れる。
厳かなオルガンの音が響く。
扉が開き、アリス皇女が入場してきた。
カツカツとアリス皇女の歩く音が聞こえる。
そしてその音は壇上の教皇の前で止まった。
「アリス・エクスよ。汝は皇帝となり何を為す。慈愛の神エウル神に宣言せよ」
滔々とした教皇の声が響く。
「天上におられる慈愛の神エウル神様。我はエクス帝国皇帝となり、民の安寧の生活を守ります。またエクス帝国皇室としてエウル神様への揺るぎない信仰の力を守っていきます」
アリス皇女は静かだが力強い声を発していた。
「よろしい。その宣言が違えた場合はエウル神が汝を滅するであろう」
頭を上げられないから何をしているかわからないが、儀式が続いているのだろう。
何かシャンシャン音がする。その後は水をピチャピチャする音だ。
「エウル神に成り代わり、このダウルがアリス皇女がエクス帝国皇帝に即位する事を承認する! これより戴冠の儀を執り行う」
ここでやっと頭を上げられる。
教皇がマントをアリス皇女に渡す。颯爽とそのマントを付けるアリス皇女。
次に教皇は王笏をアリス皇女に渡す。
そしてアリス皇女は教皇の前に跪く。
教皇はゆっくりとアリス皇女の頭に王冠を乗せた。
その瞬間、会場の参列者が声を上げる。
「アリス皇帝陛下万歳! エクス帝国万歳!」
俺も一緒に声を上げる。まぁ儀式だからね。
その声の中、アリス皇帝陛下が立ち上がり、参列者を見下ろす。
新しい時代の幕開けだ。
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