記念日
4月1日【青の日】
朝の4時50分に起床した。いつもはまだ眠いが今日は既に頭が冴えている。
カーテンを開けると澄み渡る青空が広がっていた。
寝ていたスミレがベッドから抜け出して道場に行く用意を始める。
「スミレ、今日は何の日か知っている?」
「ザラス前皇帝の喪が明けてアリス皇女の戴冠式がある日ね」
「そんな事はわかっているよ」
「あとはジョージが侯爵を陞爵されて、ダンが伯爵になる日ね」
「それもあるけど……」
少し拗ねる俺。
そんな俺を見て微笑むスミレ。
「そして一番大事なのは一年前の今日、貴方と初めて話した思い出の日かな。一年前も今日のような快晴だったわね」
「わかっていて焦らしたでしょ? 性格が悪くなったんじゃない?」
「あら私が性格が悪くなったのならジョージの影響しか考えられないわ。こんな私は嫌い?」
「いや素敵だよ」
俺はスミレの腰に腕を回して抱きしめた。
スミレは俺の首に腕を回す。
「これからも私を貴方色に染め上げてね」
熱烈な口付けが俺の返事だった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「そうじゃない! 太刀筋がブレている! 太刀の重さを十二分に利用するんだ!」
今朝の茜師匠は気合いが違う。本気で俺に龍闘流剣術の全てを叩き込もうとしている。
こちらが引くほどの完全に付きっきりでの熱い指導。
「あの……。他の人の指導はよろしいのでしょうか?」
「全く問題ない! 既に鍛錬方法は教えてある。自己研鑽で大丈夫だ。たまに確認して修正するだけだ」
「それなら俺もそれでお願いします」
「何を言うか! ジョージ様には一時も早く強くなってもらわないと困る! そこにいるスミレ様を裸に剥きたくないのか! ジョージ様の情熱はそんなものか!」
なに! 舐めるな!
あの寒風吹き付ける裏庭で裸で正座した屈辱(?)は忘れられない記憶だ。思い返すだけでゾクゾクしてしまう。
その経験をスミレにも味わってもらわないと男が廃るわ!
「舐めるなよ、茜師匠。俺のこの熱意はエクス帝国一だよ。天井知らず、青天井だ! 必ずこの剣でスミレを裸に剥いてやる」
「それでこそ、私が使える主だ! 思う存分にスミレ様を剥いてやろうぞ!」
俺と茜師匠の会話を聞いていたスミレが少し呆れ顔をしていた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
今日はエクス城に馬車で向かう。格が落ちるから徒歩はダメなんだよね。
スミレとシーファとポーラの4人で馬車に乗り込んだ。
ポーラは専任侍女として対外的な初御披露目になる。まぁシーファもそうだけどね。
ポーラもシーファも今日はしっかりとドレスアップしている。専任侍女の大事な仕事である当主の装身具になる為だ。
それにしてもポーラが日に日に綺麗になっている……。いや若くなっていないか?
確かにポーラは童顔で39歳には見えず、20歳後半に感じられていた。
しかしそれはあくまで全体的に見てその年齢に見えるってだけだ。細部を見るとどうしても本当の若さには負ける。
だけど今のポーラにはその細部の老いが感じられない……。どういうことだ?
でも女性に外見年齢については聞けないよ。
俺の視線に気が付いたのかニコリと笑うポーラ。
まぁ悪く無い事だからほっとくか。気にしたら負けの部類だよな。
馬車から外を見ると明るい未来を想像させる青空が広がっていた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
エクス城は賑わっていた。
長いザラス前皇帝の喪が明けて、アリス皇女殿下の戴冠式があるおめでたい日だから賑わうのも当たり前か。
指定の場所で馬車を降り、戴冠式会場に向かう。
俺たちの姿を見て騒つくが広がっていく。
いつもより騒つき凄いのは間違いなく俺が引き連れているポーラとシーファの影響だろう。
俺達は周囲を全く気にせず歩みを進めた。
戴冠式会場で受付を済ませる。ここでポーラとシーファとは一時お別れだ。
ポーラは慣れない環境に緊張した顔をしている。反対にシーファは何処吹く風だ。
「戴冠式が終わって陞爵が終わればすぐに帰宅するからよろしくな。それまでは専任侍女の控室で待っても良いし、エクス城の中を見ることもできるから。それとシーファはポーラを守ってあげてよ。でも喧嘩はなるべく控えてね」
「了解しました。ジョージ様の指示通りなるべく喧嘩は控えます」
あ、間違ったか!?
「いや極力にしようか?」
「任せてください。極力ですね」
本当に大丈夫かなぁ……。
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