ゆっくりと離れていく味方
朝食を食べ終わると俺とスミレはノースコート邸に向かった。
そう言えばご無沙汰していたな。
ノースコート邸の呼び鈴を鳴らすとすぐに執事が客室に案内してくれる。
客室には既に当主であるギラン・ノースコートと跡取りであるドーラン・ノースコートが待っていた。
軽い挨拶を済ませた後に俺は早速本題に入る。
「この度はフレイヤ令嬢の御婚約をされると聞き、まずはお祝いの言葉と思い駆けつけました」
軽く右眉が上がるギラン。
努めて冷静を装っているが驚いたようだ。
「失礼ですがどこでその話を?」
「いやさすがに情報源は申し上げられませんよ。私は味方を裏切れませんので」
本当はどこの情報か俺も知らないからだけどね。
俺の返答に難しい顔をするギラン。
横に座っている跡継ぎのドーランが口を挟む。
「この際、ジョージ伯爵には全てを話すしかないんじゃない? どうせ明日には発表されるんだからさ」
「今更どうにもならんだろ……。それにこの婚姻は我が領地にもメリットがあるからな」
ふーん。ぼんやりと理解してきた。
「どうやらフレイヤ令嬢の婚姻は本当みたいですね。別によろしいんじゃないですか?」
「いや、でも、本当にそう思うのか? コールド・タイルとフレイヤが婚姻すると、どう考えてもグラコート伯爵家と敵対する形になるんだぞ?」
「まぁ私がタイル前公爵と揉めたのは周知の事実です。また現バラス公爵の補佐をしているコールド・バラスとの仲も良くないです。またコールドの出自は侵略戦争推進派のドットバン伯爵家。私は侵略戦争反対派ですからね。そしてダメ押しとして以前フレイヤ令嬢とも揉めてますから、ギラン侯爵がそのように考えるのもわかります」
俺は一旦言葉を切り、隣りに座るスミレを見た。
「でもここノースコート侯爵家は私の愛するスミレの実家です。当然私もノースコート侯爵家に相当な敬意と親愛の情を持っております。直接的に我がグラコート伯爵家に敵対しないのならば、これまでどおり友好的な関係を続けたいのですが」
「すまない……。本当にすまない。しかしそう言っていただけると本当に助かります。どのような状況になろうとも個人的にはジョージ伯爵の味方であろうと努力させてもらう」
きっと脅されたり、宥めすかされたりして大変だったろうな……。
ダンが俺の味方を少しずつ剥がしていくのがタイル前公爵の策略だって言っていたが、それで離れていくなら俺がそれまでの存在って事だよ。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ノースコート侯爵家を辞し、そのまま修練のダンジョンに向かった。
先日、ダンより修練のダンジョンを【王の階梯】と呼ばないように注意された。
エクス帝国皇帝の御膝元で王に至る道と取られる名称で呼ぶのは叛逆の疑いをかけられると言われた。
確かに良く考えればそうだよね。例えそれがエルフ王になる道としても。
修練のダンジョンの外見も相当変わっている。
ロックウォールでぐるりと高い壁で覆った。当然天井もある。そして正面に頑丈な扉を設置し、高価な魔道具を購入して、登録した魔力のものしか扉が開かないようになっていた。
扉の中に入ると魔道具の光が灯る。そして一画にはドラゴンの魔石が山積みになっていた。
さすがに毎日大量のドラゴンの魔石を運び出したら問題になるよな。
ドラゴンの魔石はここに保管しておく予定だ。
ノースコート侯爵家を訪問して少しだけ気持ちが沈んでいた。
俺は両手で頬を強く叩く。
よし! 今日も頑張るか!
俺はスミレと親衛隊の隊員と共に修練のダンジョンに入っていった。
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