ダンの気持ち
さすがに今朝は鍛錬中止だよ。
俺はダンの執務室に場所を移してダンから話を聞く。
「ちょっとあっさりし過ぎてない? まさか茜師匠を遊んで捨てるつもりじゃないよね?」
「なかなか酷い私への評価ですね。ジョージ様にこれだけ尽くしているのに残念です」
「こと女性の扱い方については全ての男性を疑ってかかる事にしているんだよね。下半身には別の脳が存在するからさ。それはダンも例外じゃないよ」
「なかなか自分の実感のこもった含蓄ですね」
「それでダンは茜師匠の事は本当に好きなの? まずはそれを聞かせてくれ」
「先程、茜さんに言った言葉に嘘はありませんよ。好ましく思っております」
「いつから?」
「そうですね。好ましく感じたのは茜さんがジョージ様に連れられて修練のダンジョンから帰ってきた時です。ジョージ様への認識を改め、素直に私に謝罪をしたじゃないですか。私みたいな職業は形ばかりの謝罪を数多く見てきているんです。あんな心からの謝罪ができる人は見かけなくなるんですよ。そしてそのあとの握手で見せてくれた笑顔が素敵でした」
あぁ、それは覚えているわ。確かに茜師匠の笑顔は良かったよな。
「それなら俺に言ってくれたら良いのに。水臭いじゃん」
「その時は好ましいとは感じましたが、それだけでしたよ。茜さんはジョージ様の子種を欲しがっていましたから。さすがの私も自分以外の子種を欲しがる女性は御免被ります」
「そっか、そうだよね。ダンはいつから茜師匠の気持ちに気付いていたの? ダンの事だからは気が付かないわけがないよね?」
「茜さんが来てから毎朝龍闘流剣術を教えていただいておりました。ジョージ様は良くサボってましたから2人で鍛錬する事が多かったですね。時間がある時には2人で白亜のダンジョンにも行ってましたよ。その頃から茜さんの私への好意は感じておりました」
サボるつもりは無いのだが、朝はスミレの瞑想の鑑賞に忙しいもんな。
「でも今年の一月頃は恋愛関係になるとは私も茜さんも思っていなかったですね。状況が変わったのはジョージ様がエルフの里から帰還してからです」
それにしても人の恋の話はワクワクするよな……。
「ジョージ様の身体能力向上の魔法の精密さを見てから茜さんは変わりました。龍闘流剣術が最強の看板を降ろすことを無意識に思ったんでしょうね。それから明らかに私を見る視線に熱を帯びていましたから。そして茜さんがジョージ様の縛鎖荊を受けない選択をした事により今日のような日を迎えると私は確信しました。ただあのような形の告白とは思いも依りませんでしたけど。少し焦っていたのかもしれません」
「焦り? なんで?」
「最近、私はエヴィーとずっと一緒にいますから。エヴィーに私が取られると考えたのでしょう」
ダンもエヴィーと愛称で呼ぶようになったか。それは良い事だな。
「なるほどねぇ。それにしてもエヴィーは最近怖いくらい大人しいね……。嵐の前触れじゃないよね?」
「今のところは問題ありません。ただエヴィーは自分が認めた者じゃないと聞く耳を持ちませんね。現在、エヴィーの為に付けた家庭教師で残っているのはルード・サラバン前伯爵とその奥方だけです。ルード様はマナー全般が担当です。その為、私がほとんど教えております」
「おぉ! ルードさんが来てくれていたんだ。忙しくてなかなか会えないと思うからダンからよろしく言っておいて」
「かしこまりました。あとエヴィーについてはまだスミレ様が怖いみたいで近寄ろうとしないですね。ジョージ様には会いたいようですが、ほとんどの時間でジョージ様の近くにはスミレ様がおられますから」
「まぁ気が向いたら俺がエヴィーの顔を見に行くよ」
「……。それは巷で言う【行けたら行く】って事と受け取ってよろしいでしょうか?」
「そこまで無い事じゃないよ。もう少し可能性がある感じかな。それより茜師匠を泣かせるような事はできるだけ控えてもらうと嬉しいかな。できればで良いけど」
「まぁお互い大人ですから、その辺はわきまえております。まずはお互いを理解する事から始めますよ」
「お互いを理解?」
「そうですね。私の考え方、生き方を知っていただかないといけません。私も同じく茜さんの考え方、生き方を理解する努力をします。あとはそうですね。結婚するなら身体の相性は大切ですから。私のそちら方面の趣味趣向をしっかりと茜さんに理解してもらおうかと」
ニヤリと笑うダンからは男の性を色濃く感じた。
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