最強の看板を下ろす時
今晩も当たり前のように専任侍女に全身を洗われる。
気持ちの準備ができていたため昨日のような下半身の状態にはならなかったが……。
しかし今回は専任侍女になったオリビアも俺の身体を洗った。
二人かがりでそれはもう懇切丁寧に洗っていただけたよ……。
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「明日、実家に顔を出してこようかしら?」
「そうだね。一応、お祝いごとだもんね。良かったら俺も一緒に行くよ。まだ夜も遅く無いし、先ぶれを出しておこうか」
「そうね、親衛隊の誰かに任せておくわ」
俺はスミレに褒めてもらおうと思ったが今晩は控えた。そして少しだけ暗い顔のスミレを抱きしめた。
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3月30日【無の日】
今日から起床は5時にした。
新邸宅の庭の奥には道場を作ってある。
その道場にて茜師匠から1時間龍闘流剣術を学ぶ。そして6時から大浴場の隣りの大部屋で瞑想を1時間おこなう。
そのまま朝風呂の流れ。
どうせお風呂に入るには裸にならなければならないので効率を考えた結果だ。
「ジョージ様は本当に凄いな……。本当に魔術師なのか?」
俺は先日教えてもらった龍闘流剣術の足捌きを完全に再現している。そして規格外の身体能力向上を掛け合わせてアレンジという名の魔改造を実施していた。
「見事だよ……。龍闘流剣術の足捌きは水の流れと例えられるが、これは稲妻だよ……。龍闘流剣術の足捌きを基本に抑えながらも、それを完全に凌駕している別物だ……」
おぉ! 稲妻なんてカッコいいじゃん! 俺ってやっぱりやればできる子だったんだ!
俺が頭の中で歓喜を上げていると、茜師匠が真顔になっている。
「ジョージ様、少し話があるんだが良いか?」
「どうしました? 別に良いですけど」
「以前、ジョージ様の子種を欲しいと言ったがそれを撤回させてくれ」
うん? もしかして俺は嫌われたの?
「いや別に良いですけど、どうかしましたか? 何か俺、失礼な事をしましたかね?」
「そうじゃないんだ。元々この提案は龍闘流剣術を未来永劫残す為の手段なんだ。その為、優秀な子種が必要だった」
過去形やね?
「龍闘流剣術は歴代最強の剣術と自負していた。それは未来永劫不変と思っていた。しかしジョージ様を見て理解した。龍闘流剣術は歴代最強の剣術だった。しかし今後はジョージ様がそれを変えていくと」
「買い被り過ぎじゃない? 俺は今後も龍闘流剣術は最強であると思うよ。そうじゃなきゃ茜師匠に師事しないさ」
「そう言ってくれると嬉しいが、現実は違う。ジョージ様は間違い無く歴代最強の剣術士になれるし、なるだろう。そしてジョージ様が作り上げた剣術が今後の歴代最強の剣術になる」
「それと俺の子種がいらない事の話が繋がらないんだけど」
「龍闘流剣術はジョージ様に剣術を教えた時点でその役目を終えるんだよ。龍闘流剣術は次代の最強剣術を作りあげる為に存在したんだな」
「そこまで期待されると嬉しいですけど、俺の剣術の目標はスミレとの模擬戦に勝つ事だけですよ。一応、魔術師が本職ですから」
「それで良いんだ。龍闘流剣術は最強の看板を下ろすだけだよ。これからも龍闘流剣術は細々と紡いではいく。ただ最強を目指さないだけさ。だから別に無理して優秀な子種を求める事を止めるんだ」
子種が欲しいと言われた時は驚愕して困惑したが、今度はお前の子種をいらないと言われて少し悲しみを感じてしまう。
ある意味茜師匠は俺の感情を振り回し捲る性悪な女性だな。
「ジョージ様には本当に感謝しているんだ。やっと最強の看板を下ろす事ができる。ずっと龍闘流剣術に縛られて生きてきたからな。そしてこれからはできれば一人の女性として幸せを掴みたいんだ」
顔を赤くする茜師匠。
「それでジョージ様にお願いがあるんだが……」
茜師匠の視線の先は稽古を続けるダンがいた。
それは完全に恋する乙女の視線だった。
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